猿と小川と街と
頑張ります。
「なにゆえ⁇」
んんー?あまりのことにあたまがしょーとしているぞー。
明らかに先ほどまで居た夜の神社と異なる木漏れ日眩しい森の中という現実に暑さとは関係のない冷や汗が溢れ出る。
あれ?おかしいぞ?僕ちんこんなこと頼んでないよ神様?
などと実に焦りに焦って思考がまとまらない、しかしながら現実にあるのはカサカサと風に揺れる葉音と時折聞こえる何ともつかない鳴き声のみ…
「クールだ、クールになるんだ!まずは状況確認が大事だ、スマホで位置情報を調べよう」
そう自分に言い聞かせるよう言葉を発しゆっくりと深呼吸をしてポケットからスマホを取り出し開く…
そして流れるようにその場に崩れ落ちた。
「け、圏外っスか、しかも明らかに昼間なのに時間は22時13分何ですが…」
おかしくなーい?誘拐っていってもここまで手がこむことをやられるほど金持ちでもないし、夢にしてはリアルすぎるんですが。
そのまま10分程項垂れつつグルグルと思考をまとめていたが取り敢えず日差しが厳しく暑いので木陰に移動することにした。
「んー先ずは状況把握から始めるか、とりあえず時間共に場所は不明。つーか地元でこんな場所は知らんし車等の生活音もないな、持ち物は所持金3230円にタオル、教科書、筆記用具、コンタクトケース、メガネケースってところか」
そうして持ち物なんかを確認した後、ふむ、とこれからを考え始める。
とりあえずは現在地を知るのが一番か?大きめの木を探して登り周りを確認しよう、方向も決めずにでたらめに歩いても水分も食料も無い現状ではあまり遠くまで動けないしな。
子供の頃ボーイスカウトをしていたのでパニックにならず先生に教わったことをやっていこうと頬をバチッバチッと叩き目に見える中で一番大きな木を目指した。
5分程歩いて登りやすく程よい大きさの木の下に辿り着き学生鞄を置いてズルズルと木を登り始める。
「よいっしょっと、木登りなんて小学生以来だな、あまり高く登らなくても周りが見えるといいんだけどなぁ」
はぁ、はぁと少し息を切らしつつ3分の2程登ったところでちょうどよい枝に座りはを退けて景色を眺める。
そうしてやっと見えたのは右手約5km程に流れる小川と斜め左約15〜20km程に見える壁に囲まれた街であった。
「おお〜、お?おお?なんか日本ぽくなくね?」
川や街を目に見える範囲で見つけられたのは幸いだが少なくとも鈴太は壁に囲まれた街など日本、いや世界の街でも見たことがない。勉強不足かもしれないが…
「認めたくない!認めたくないが・・・・もしかして、異世界?なのか?」
精神衛生上よろしくないなぁと思わず空を仰ぐと、
「うーん、明らかにプテラノドンの小さい版っぽいのが飛んでますねぇ、はっはっは〜」
笑いつつも若干涙が出てきて溢れないよう下を向く。
おいっ…⁉︎
何か見た事ねぇ猿どもが僕の学生鞄で遊んでるぅー‼︎
えっ!ヤベェじゃん。大したものが入ってないとはいえ持ってかれるのはダメだ。かといって3匹くらいとはいえ野生の猿に勝てる気しないんですけど!
などとパニックになりつつそろりそろりとゆっくり木を降り始める。
そうして半分は過ぎたところで猿どもが何とメガネケースを取り出しやがった!
ちょっ!メガネはやばいっスよ!自分コンタクト外したら真面目にボヤッとしか見えないんですって!などと慌てた瞬間。
ズルッ!
「えっ?」
身体が重力により地面に吸い込まれ浮遊感に包まれる。
「…!………‼︎」
声にならない悲鳴を上げつつお尻から地面へダイブしてゆく僕。
ベキッ!グシャ!ドシン!と音を立てて落下し激痛によりしりを押さえて転げ回る。
「おおっ!おお、おおおぉぉぉぉ〜」
ゴロゴロと悶えた後顔を上げると3匹いた猿のうち2匹は倒れ伏し残る1匹凄まじくギャーギャーと威嚇している。
その様子にヤバいと思いつつ、冷めた部分で何か僕森に来てからヤバイってめっちゃ使ってない?知能指数下がってない⁇ていうかこの状況どうすんの?
などと考えていると…
バキバキバキッ!
と木をへし折りながら黒い3メートルくらいの巨人が現れた‼︎
「おおう・・・」
その姿を捉えた瞬間僕は陸上部もかくやというスタートダッシュを決め先ほど見た小川方向へ走った。
鞄?命より大事なものは入っていない!
猿?どうぞ生贄になって下さい!
僕は走った、何振り構わず、汗水流して。
本能が告げている、このまま止まれば死ぬと…
どのくらいたったであろう、はぁはぁと荒い息を吐き体が求める酸素を取り込む、もうかなりの距離を走ったはずだ。
ようやく立ち止まり後ろを振り返るも何かが追いかけてきていることもなさそうだ、息を整えつつまた位置を把握するための木を見つけ用としたところで…
バキバキバキッ!
と少し後方で音が鳴り響く。
雷に撃たれたように身体が飛び跳ねまた走り始める。
僕は死にたくない!まだやりたい事が沢山ある、僕はまだ・・・・・
「死んでたまるかってんだよー‼︎」
そうして大きく踏み出したはずの足が宙を蹴り本日二度目の浮遊感に包まれ…
なるべく早く投稿します