表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
未来を夢みて 〜あなたと結婚したいのです〜  作者: 結城ことみ
Episode 1
2/3

Part 2 わたしの目標

朝礼(ちょうれい)を始めます。本日からこのメンバーでプロジェクトを進めます。沙耶(さや)は、このプロジェクトに参加するのは初めてなので、楠野(くすの)さんとペアで進めてください」




 私の仕事は、開発された機械(きかい)を、商品として発売するために、試作(しさく)として組立をし、検証(けんしょう)を行っていくというもの。


 いわゆる、エンジニアと呼ばれる職種(しょくしゅ)




 工業系の高校を卒業し、その流れで、この会社に内定を貰ったが、入社して半年の私は、まだまだ覚えることが多く、必死にしがみつく毎日。




 工業系の高校を出ている、と言っても、もともと工業に興味(きょうみ)があった訳では無い。


 電車通学への(あこが)れと、制服が可愛(かわい)い、という理由だけで入った高校だった。




 もちろん、『工業(こうぎょう)数理(すうり)』だとか、『生産(せいさん)システム』だとか、専門(せんもん)科目(かもく)のテストは、いつも赤点ギリギリだった。




 何事(なにごと)にも一生懸命なのが、私の取り()で、仕事を覚えることが私の楽しみだった。


 でも、この職場に夢や希望を抱いているわけではない私は、結婚するまでは続けようかな、くらいにしか思っていなかった。




「楠野さん、よろしくお願いします。」




 朝礼が終わると、業務メモ用ノートを片手に楠野さんの元へ向かった。




 楠野(くすの)琉也(りゅうや)さんは、10歳年上の29歳。


 私と同じく、高校を卒業してから、ずっとこの仕事をしている。

 

 楠野さんの頭には小さな角が生えている。




 そう、鬼人(きじん)なのだ。




 といっても、別に珍しくはない。


 人間と鬼人の比率は、ほとんど同じくらい。ちょっとだけ人間の方が多いかな、っていう程度(ていど)




「よろしく。とりあえず、この部分の組み立てから始めるか!」



ーー



「沙耶ちゃんの字って丸いよな。女の子みたい。」



「女の子です!」




 楠野さんと一緒に仕事をするのが初めてだった私は、少し緊張(きんちょう)していた。


 楠野さんの顔、少し強面(こわもて)だし。


 でも、楠野さんの話しやすい人柄もあり、()ぐに打ち()けることが出来(でき)た。




「ここ分からないので、教えてもらってもいいですか?」



「あー、それはね……」




 楠野さんは、理屈(りくつ)や考え方も合わせて、丁寧(ていねい)に教えてくれた。




 楠野さんは、何を聞いても(まよ)うことなく答えてくれる。


 しかも分かりやすい。




 普段(ふだん)、必死に仕事をしているって感じはないし、むしろマイペースに仕事をしているように見えるのだけれど、誰よりも仕事が早いのが、凄くかっこよく見えた。




 プロジェクトはどんどん進んでいき、楠野さんに教えてもらったことはノートを1冊使い切るくらいになった。




 この人みたいなエンジニアにになりたい......。




 今まで、仕事に対して夢や希望もなく、いつか辞めるものだと思っていた私が、いつの間にか、そんな(ふう)に思っていた。




 私に『目標』と呼べる存在が、できたのだ。




 しかも、嬉しいことに楠野さんは、私の勉強熱心で前向きなところを気に入ってくれたらしく、私のことを『弟子(でし)』だと言ってくれた。



ーー



 プロジェクトは終盤(しゅうばん)に差し掛かっていたある日。




 今日は定時(ていじ)退社(たいしゃ)することが出来た。




「楠野さんから? なんだろう……」




 帰宅して携帯を開くと、楠野さんからメッセージが来ていることを知らせてくれていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ