Part 2 わたしの目標
「朝礼を始めます。本日からこのメンバーでプロジェクトを進めます。沙耶は、このプロジェクトに参加するのは初めてなので、楠野さんとペアで進めてください」
私の仕事は、開発された機械を、商品として発売するために、試作として組立をし、検証を行っていくというもの。
いわゆる、エンジニアと呼ばれる職種。
工業系の高校を卒業し、その流れで、この会社に内定を貰ったが、入社して半年の私は、まだまだ覚えることが多く、必死にしがみつく毎日。
工業系の高校を出ている、と言っても、もともと工業に興味があった訳では無い。
電車通学への憧れと、制服が可愛い、という理由だけで入った高校だった。
もちろん、『工業数理』だとか、『生産システム』だとか、専門科目のテストは、いつも赤点ギリギリだった。
何事にも一生懸命なのが、私の取り柄で、仕事を覚えることが私の楽しみだった。
でも、この職場に夢や希望を抱いているわけではない私は、結婚するまでは続けようかな、くらいにしか思っていなかった。
「楠野さん、よろしくお願いします。」
朝礼が終わると、業務メモ用ノートを片手に楠野さんの元へ向かった。
楠野琉也さんは、10歳年上の29歳。
私と同じく、高校を卒業してから、ずっとこの仕事をしている。
楠野さんの頭には小さな角が生えている。
そう、鬼人なのだ。
といっても、別に珍しくはない。
人間と鬼人の比率は、ほとんど同じくらい。ちょっとだけ人間の方が多いかな、っていう程度。
「よろしく。とりあえず、この部分の組み立てから始めるか!」
ーー
「沙耶ちゃんの字って丸いよな。女の子みたい。」
「女の子です!」
楠野さんと一緒に仕事をするのが初めてだった私は、少し緊張していた。
楠野さんの顔、少し強面だし。
でも、楠野さんの話しやすい人柄もあり、直ぐに打ち解けることが出来た。
「ここ分からないので、教えてもらってもいいですか?」
「あー、それはね……」
楠野さんは、理屈や考え方も合わせて、丁寧に教えてくれた。
楠野さんは、何を聞いても迷うことなく答えてくれる。
しかも分かりやすい。
普段、必死に仕事をしているって感じはないし、むしろマイペースに仕事をしているように見えるのだけれど、誰よりも仕事が早いのが、凄くかっこよく見えた。
プロジェクトはどんどん進んでいき、楠野さんに教えてもらったことはノートを1冊使い切るくらいになった。
この人みたいなエンジニアにになりたい......。
今まで、仕事に対して夢や希望もなく、いつか辞めるものだと思っていた私が、いつの間にか、そんな風に思っていた。
私に『目標』と呼べる存在が、できたのだ。
しかも、嬉しいことに楠野さんは、私の勉強熱心で前向きなところを気に入ってくれたらしく、私のことを『弟子』だと言ってくれた。
ーー
プロジェクトは終盤に差し掛かっていたある日。
今日は定時で退社することが出来た。
「楠野さんから? なんだろう……」
帰宅して携帯を開くと、楠野さんからメッセージが来ていることを知らせてくれていた。