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第90話 ひとりぼっちの日々。

クラウドが私の側からいなくなって数日が経った。


私はいつもと変わらず毎日学校へ行き、1人で過ごし、放課後無駄に調べ物をしに図書館へ行き、夜は剣の素振りをする日々を過ごしていた。


クラウドがいなくても変わらず。


それでも時々ポーチを握り、クラウドがいるか確かめる癖はいつまで経っても治らなかった。


そのうち涙も枯れて、感情がない人形のように過ごした。


何もないから。

空っぽだから、これでいいのかも。


そう思うことがなぜか嬉しく思う。

ひとりぼっちも慣れたから。


クリスマスのシーズンに、みんなが寮から自宅へ帰宅する中、私は家に帰ることもせず寮に残る届けを出した。

長い休みに帰らないのは初めての事で、自分でもなぜ帰らないのかと聞かれたら、よく分からなかったんだけど。

ただ1人で過ごしたかった。


今後も1人で生きていくならば、孤独に慣れなきゃとそんな理由だった気がする。


誰もいなくなった寮は、シーンとしていた。

時折寒さに屋根が軋む音が響くぐらいに、静かだった。


私は殆どを部屋で本を読んで過ごしたが、剣の素振りだけはずっと続けた。

寮に誰もいなくなったので、素振りは朝早くから外でする様に心掛けた。

1日一回朝日を浴びないと健康的な体は作れないと、図書館の隅っこにあった乾布摩擦健康法に書いてあったのだ。

乾布摩擦は流石にしない。

だってメッチャ寒いから。

誰もいないとはいえ、食堂や掃除の方はいるわけで。

流石に人目のつくところで、裸でタオル擦ってたら、気が触れたとでも思われそうだから。


エルが私に家族からの手紙を毎日届けてくれたが、1通も開かなかった。

代わりにエルが私の様子を毎日手紙に書いてくれていたらしいが。


手にできたマメも3ターン目に入った。

だいぶ手のひらは固くなってきて、自分ではサマになってきたと思う、この素振り。

誰にも披露することはないので、本当にサマになっているか知らないけど。


今日は起きてすぐ、雪がかなり積もっていた。

だが天気はとても良かった。

いい素振り日和だ。


エルに今日は外で素振りは危険なので軒下に行くなと注意された事を、私はうっかりぼーっとして聞き逃していた。

もうだいぶ誰とも話をしていないので、耳も遠くなっていたのかもしれない。

私はそれを、後に後悔することになる。


今日も元気に素振りを始める。


雪が積もってたので、自分が立つあたりを先に雪かきをして。

途中ちょっと雪だるまを作ったりとか遊んでしまったので、素振りを始める前からかなり疲労していた。


毎日少しづつ回数を増やしていき、今じゃ1日500回も素振りを出来ている。

自分でもちょっとこれは自慢できるのではないかと思っている。


そんな事を考えながら意気揚々と疲労感満載でヘロヘロしながら。

私は素振りを続けた。


350回を過ぎたあたりで、体が少しふらついてしまった様で。

軒下に木剣がぶっ刺さってしまった。


振っても取れなかったので、思いっきり『えいっ』と引っ張ると。


太陽の熱で溶け、屋根に昨日積もった分の雪が、私に大量に落ちてきたのだ。


あっという間だった。


あっという間に私は冷たい雪の中に埋め込まれた状態になった。


幸い口元に小石分の隙間が所々あったので、顔を上下左右に動かせるだけ動かすと、呼吸のスペースは確保できた。


だけど。


雪は重く体の自由を奪い、そしてどんどんと体を冷やしていく。

しかも今まで運動をしていたのだ。

汗を大量にかいていたため、体の温度を下げるのは一瞬だった。


『寒い…』


流石にこんな雪の塊があれば、誰かがすぐに見つけてくれるだろうと思ってた。

だが。


寮にはほとんどの人がいなかったのだ。

しかもこんな寮の裏庭なんて。

お掃除の人も来ない場所だった。


エルが朝言ってた事をふと思い出す。


『この事だったか……』


今頃気づいても遅いのだが、とても情けなくなる。


勝手に意固地になって、友達と釣り合わないからと遠ざけて。

私は何をやっているのだろう。


私はこのまま誰にも発見されず、死んでいくのだと。

そう思った。


体は寒さに震えていたが、今度は皮膚がジンジンと痺れてきた。

髪の毛さえも冷たく、自分の皮膚を攻撃するのだ。


ああ、結局。

私の命はここで終わるんだ。

一体私は何をしたんだろう?

私は何を残せただろう?


結局もらった加護もやっぱり無駄になったなぁと。


私は少し、笑った。


『楽しかったなぁ。』


今まで結構楽しかった。

コーディとの運命的な出会いも、エリナとの破天荒な場面も、マギーとの温かな友情も。

私には宝物の様な日々だった。


もうありがとうって言いたくてもいえなくなったけど。


リオンはいつも手を伸ばせば届く存在だった。

いつも私を叱ってくれて、正してくれた。


抱きかかえられた時、匂いかいじゃってごめんね。

すっごいいい匂いだった。


ビクターにも助けられた。

別の視点の意見をくれて、お陰で迷わず進むことが出来た。

やっとマギーを幸せにしてやってほしい。


セドリックはー……。

ないわ、うん。

あいつは無いわ。


恨みしか出てこない。

でも。


ありがとうとは、言っておこう。

色々ありがとう。


エリナ。

最後に一回は会いたかったなぁ。

いっぱい文句があるんだ。

いっぱい言いたかった。

それで。


エリナに謝らなきゃ。


エリオットを好きになってごめんって。

絶対ないって言ったのに、嘘ついてごめん。


それから、エリオット。

ずっと思い出さない様にしてたけど。


最後に。


『信じるって言ったのに、ごめん……』


私は急激に来る眠気に飲み込まれそうになる。

既に目が開いてるのか閉じてるのかもわからなくなった。



『みんな……』


大きく息を吐く。


次の息を吸えたかはもう、わからない。





最近何処で切っていいかわからない自分の小説。


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