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第83話 エステル、不思議な夢を見る。

「居場所見つかったって!?」


セドリックに詰め寄ると、迷惑そうにまた頬をつねられた。


「見つかったけど、いるかわかんないよ?今騎士団向かわせたけど……」


「交わる痕跡が3ヶ所あって、その3つにそれぞれ送ったけど、いればいいなぁぐらいだね。」


「……期待はできないってことか……」


「そんな簡単に見つかるところなんていないと思っている。」


私は肩を落としながら『まぁそうだよね』と呟いた。

途端に眠気が襲う。


フラフラな人に向かって寝落ちするなんて。

散々アキラを自分勝手だと言っといての、これですよ。

どっちがだよ!ってね。


どうやらグウグウ寝てしまったようだ。

セドリックの肩を借りて。


起きた時に肩を揉めと、お前のせいで肩凝りが酷くなったんだぞとか、苦情はたくさんもらいました。

……苦情はそこの箱にでも入れておけと言ったら、ほっぺをギュッとつねられた。


セドリックの肩枕は居心地良かったのか、その時ボンヤリと夢を見たようだ。


小さな頃に、木から落ちる夢。

あの時何をして落ちたんだっけ?

猫だ、猫が降りれずにいたから。


『危ない』


声が聞こえる方へ振り向くと、青く綺麗な目が、私を見つめていたことに気がついた。

一瞬だったけど。



『ねぇ、どうして泣いているの?』


『泣いてないよ』


『じゃあ、これはなぁに?』


頬に伝う、涙。

でもこれは私のじゃない。


『誰』が『誰』に言っているのかと、目を凝らす。


目の前の猫が言った。


『泣いてるのは、誰?』


さっきまで伝っていた涙はなく、自分の頬は乾いている。

後ろからシクシクとすすり泣く声が聞こえ、振り向くと。


『泣いているのは……』


黒髪の魔物だった。

傷だらけで、片方の羽も折れ曲り、ボロボロの体で誰かを抱き寄せていた。


「レンスリー……ごめん、助けられなかった……」


「……エーコ、泣かないで。君のせいじゃない……」


「ワタシの所為で、あなたが……」


「君のせいじゃない……僕は『人間の争い』に巻き込まれて殺されるだけ。エーコは関係ない……」


「……傷が塞がらない……やっと会えたのに……!」


「エーコ、僕を、君と同じ、魔物にして……?」


「ダメよ、こんな醜い姿にさせられない……」


「どうして?……とても深い静かな夜みたいな色で、綺麗なのに……」


「もう喋ってはダメ。待ってね、必ず傷を……」


「もう、ダメだと思う……。体の感覚がおかしいんだ。生きてるうちに、君に伝えなきゃいけないことが……」


「喋らないで……お願い……生きてて欲しいの、お願い。」


「愛してるよ、だから、僕を……連れて行って……」


『これは私の記憶じゃない』


私は頭を抱える。


『そう、これは残像。』


猫がゆっくりと私に近づきながら、ボンヤリとした姿で言った。


『残像?』


『そう、遠い昔にここの場所で起きた出来事の残像。』


『どうして私に見せるの?』


『見せたんじゃないよ。君が勝手にリンクしたのさ。まるでラジオの周波数を偶然合わせたかのようにね』


『ラジオ……』


『君が昔いた世界のモノ』


『なんでラジオを知ってるの?』


『君の記憶から流れてきたよ。誰かの記憶から共通の言葉を選んで使っているだけだから、どんなものかは君の記憶でしか知らない。』


『あなたは誰?』


『残像を見てしまったお詫びに、僕のお願いを聞いてくれる?』


『お詫び?』


『勝手に見たお詫び』


『私にできることならば……』


『簡単ではないけど、君にしかできない事。』


『私にしかできない事……』


『エーコを止めて。エーコは僕を蘇らせようとしている。』


『転生させるという事?』


『転生じゃない方法。』


『具体的に言ってくれないと、まったくわからないよ』


『エーコは僕との思い出の場所にいる。』


『それは何処?』


『約束だよ?必ず、止めて。そして伝えて欲しい』


『何をいうの?』


『必ず会えるから、信じて待ってて、と。』


そこで目が覚めた。


『信じて。』

その言葉を自分の言われた言葉と重なる。

そして胸がとても温かくなった。


「セドリック、レンスリー王子と会った気がするんだけど。」


「うん?

……エステルは知らないかもしれないけど、死んだ人には会えないんだよ。

しかも100年も前に死んでるからね?

あ、もしかしてお墓でも開けちゃった?

王族の墓を荒らすのは極刑だけど、自白ととっていいかな?」


「……バカはお前だ。今の今までお前の横で爆睡したんだから、夢で会ったんだろうが!」


セドリックはバカを見る顔で私を見る。

すごく不憫そうな表情もおまけで。


「あ、そう。いいよ信じなくても。リオンに言ってくるから!リオンなら聞いてくれるかもしれないし!

少なくとも極刑はされなさそうだし!」


赤い顔で興奮気味にプリプリ怒りながらドスドスとリオンに向かって歩き始める私を見て、我慢しきれず笑い転げた。

……こ、こ……こいつは!!


怒りで我を忘れ、そこらへんに転がっていた棒を振り上げようとした所で、ダイアンさんに宥められ、取り押さえられる。


「あー、無駄な体力を使っちゃったじゃん。それで?夢の内容は?」


「もう言わないから!!絶対にだ!」


「悪かったって。許してくれるでしょ?……さぁ、時間ないから早く!」


頬杖をつき、ニッコリと白い方で微笑み、手のひらを上にした状態で『おいでおいで』とする。

それは私に対しての挑戦と取ってもいいか。

手招きの仕方もムカつくんだが!


ダイアンさんに宥めすかされ、再びセドリックの横に座らされて。


『ハイどうぞ。』と、私からセドリックへ、手をスライドさせる。


納得できない私の顔を、セドリックが『仕方ないなぁ』と言わんばかりに突然引き寄せる。

頬に唇が触れ、軽く唇が離れる音がする。


「……マっ!!またか、おい!このパターン!」


頬に手を当てて慌ててセドリックから離れる。


「ハイこれでお詫び終了!さぁ早く言えって。」


ニコニコとさっきと同じ顔を崩さないセドリックに、少しだけ。


リオンにチューされた方と一緒だったので、私の頬で間接キスしたんだなあと思うと、ザマみろと思ってしまい、怒りもシュッと解けた。


「レンスリーとエーコの思い出の場所って何処だと思う?」


私の問いに無言でアキラとサマンサ先生を呼びにいかせる。


「あと一つ思い出したんだけど、簡易魔法陣って一回使うと24時間使えないんだよね?ていう事はそこに24時間はとどまるって事だから、場所さえ分かれば……きっとまだそこにいると思う。

……ねぇ、あの木から落ちた猫って今は何処にいるんだろう?まだ生きているのかな?」


「なんで猫?猫ってなんの事?」


「ほら、初めてのお茶会で、私が木に登って助けた猫……覚えてない?」


私が身振り手振りで説明する中、セドリックは腕組みをして『うーん』と考えた。


「あー?知らないな。あれは猫だったっけ?アライグマじゃなかった?」


「流石に記憶が混濁しすぎだ!」


思わず吹き出して笑ってしまった。

私が笑ったのを安心したように鼻から息を浅く吐き、急いできた先生とアキラに何かを言っていた。


私に語りかけていたのは、見覚えある猫だった。

木の上で一度だけであった、あの猫。


私の始めのキッカケの。


「たくさんあってわからないってさ。……エステル、ノートって今ある?」


「ノートは私以外のみんながバラバラに持ってる。そして今は絶対持ち合わせていない……」


「なら、誰かヒロインとエリオットの思い出の場所ってわかる?」


「えー……イベントのどれだろう……全部は覚えてないけど……ってアキラさん全部わかるんじゃない?」


セドリックと私は同時にアキラさんを見つめた。


「エーコとレンスリー王子の思い出の場所と、1のヒロインとエリオットの思い出の場所ってもしかして何か被ってる場所ありますか?」


全くの思いつきだったけど。

思い出の場所を絞ることと、2人を連れて何かを急いでいた。

だとしたら、彼女もまた何かイベントを起こそうとしているのだとしたら。

レンスリー王子が言ってた思い出の場所とイベントの場所が被るところがあってもおかしくない。


「あ、そう言えば。

……エーコが仲よかった頃、お城の地下にある隠し部屋の話をしてた時期があって……。

地下の隠し部屋は、エリオット王子が1人になりたいときにそこに隠れていたというイベントがありますね…。

偶然迷子になったヒロインが、そこに迷い込んで王子を発見するんですけど、そのイベントは結構終盤で、好感度がハート4.5じゃないと起きなくて!

疲れて傷ついて眠っている王子にキスをして起こすんです……。」


……ツッコんでいいのでしょうか?

城で迷子になって地下に行くという……警備何やってんだ!

しかも隠し部屋。

王族しか知り得ない場所を簡単に見つけちゃうとかありえなさすぎる。

そして寝込みを襲う。

逆に突然キスされて目覚める恐怖ったらない。

どれだけ可愛くても、だ。

自分的にはただの痴女にしか思えないだろう。


そんな脳内ツッコミをよそに、セドリックもだいぶ青ざめ、引いていた。

自分がそんなことされたら、好きな女でも牢に入れかねなさそうな顔である。


それを余所にウットリと思い出し妄想に励むアキラさん。

……何も言うまい。

ゴクリと言いたいことを飲み込んだ。


「……ダイアン、全員引き戻せ!地下だ!」


セドリックが叫んだ。


その声にリオンやビクター、コーディやマギーもこっちを見て走り寄ってきた。


「セドリック、僕たちもできることない?」


リオンがセドリックを見つめた。

セドリックは嬉しそうにニヤリと笑い、リオンの背中を叩いた。


「助けに行こう、みんなで。最後までみんなで、な。」


リオンもビクターも、セドリックと同じようにニヤリと笑い、3人で手を取り合った。


「宰相に地図を持って来させろ。」


バタバタとみんなの動きが変わっていく。

リオンのお父さんが地図を何枚もテーブルに広げ、みんなで印をつけたり、指をさしたり。

凄い勢いでたくさんの騎士が入れ替わり、城の中を走り回る。


私はコーディとマギーに支えられ、椅子から立ち上がった。

アキラも先生も、事の成り行きを見守る様に。


ただずっとセドリックの動きを見つめていた。

毎回誤字報告を見て思うのですが、寝ぼけすぎてんじゃないかと思うぐらいの誤字で思わず笑ってしまいました!(情けなくて逆に笑うという…。

いつもありがとうございますm(_ _)m

笑って許していただけてたら嬉しいのですが(;;

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