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第77話 あなたを、信じる。

エリオットが呟いた言葉に、黒い渦の塊は一瞬で晴れた。


「……いいえ、ワタシは精霊王よ。」


私は思わず耳を塞いだ。

『あーあーあー』なんて声を出しながら。


そこには緑色の姿をした『精霊王』の格好をしたエーコの姿。


「お前はまだ、無駄な抵抗をするのか。」


「……すみません、風が強くて耳がキーンとしてまして、よく聞き取れなかったです。」


まぎれもない嘘である。

もう姿がどう見ても精霊王の格好だし。

もう苦し紛れでもギャグでも、私は聞いてないを押し通す。


若干呆れ気味のエーコが私の話を無視してエリオットに話しかける。


「エリオット、王位は放棄させませんよ。

あなたはエリナと結婚してもらいます。

……それは運命なのです。」


「……そんな運命は、俺は、望んでいない……」


「……この国が滅んでもいいというのですね?

自分のエゴを振りかざし、国民を見捨てると。」


エーコは嬉しそうにエリオットを見つめる。


国民を盾に出されると、流石に眉が寄り、固まってしまう。


「……それは……。だが、私が継がずともセドリックがいる。何故あなたは私とエリナ様に拘るのか……。」


「……大事なことだから。エリナとあなたが……」


エーコはそこまで言うと、途中で自分にしか聞こえない様な声で唇を動かす。

聞き返そうとしたが、エーコはすぐに言葉を続ける。


「とにかく、ワタシの言葉は『精霊王』として、王と同じぐらいの発言力があることはお忘れなく。

エリオット王子。今日は引きますが、今後エステル様と2人きりで会うことを禁止致します。

王に報告し、これを決定していただきますので。」


はい、聞いてしまいましたよ、精霊王と。

ご丁寧に、精霊王を強調していかれました。

覚悟を決めて、精霊王と向き合う。


エリオットはひどく困惑している様だ。

自分の出方次第で大ごとになるというのが、よくわかっているのだろう。


私はこんな時だからこそ、彼女の出方を知りたかった。

アキラが知りたかったことを今度は私が聞いてみる。

今日は引くと言っていたし、最後にちょっとだけ……。


「……精霊王、質問をお許しください。」


私が静かに頭を下げると、顎を突き出し見下す様に私をみる。


「質問に答えるとは言いませんよ、聞くだけなら聞いてあげましょう。」


「ありがとうございます。では……。

あなたは何故、アキラさんを遠ざけたのですか?

……友達だったんでしょう?」


「あなただって、エリナの事友達だと思ってないでしょ?」


「いいえ、今も私は勝手に友達です。

エリナが私を覚えていなくても私は覚えています。

確かに友達なんです。」


「……ああ、アキラと同じ考えなのね、流石だわ。

だから波長があうのね?弱い虫ケラ同士。」


頭は下げたまま、顔を上げずに何も答えない私にイライラしながら口調が変わった。


「アキラは最初からワタシの『敵』。誰からも愛され、必要とされ、なのにワタシは……。不公平だとと思わない?同じ転生したのに、真反対の運命を背負わされるなんて。

アンタも私と同じ立場だったはずでしょ?

悪役令嬢という立場なのに、何故運命に逆らった?

だから物語はうまくいかなくなった。

だから今回もヒロインはいないのだ。

だが、ヒロインは作ればいいんだ。

代役でもいい。それでいい。

……もう直ぐ、全てはうまく軌道にのる。

聖獣も目覚める事なく、私の思うがままに。」


エーコの姿が一瞬揺れ、緑色の『精霊王』の姿と何か違う姿が重なった様に見えた。


「……エーコ、様?」


エリオットにも見えていたのか、表情が青ざめていた。

エーコはエリオットに微笑みを返す。


「……大丈夫、もう直ぐだから。もうすぐ…それまでの辛抱だよ。」


エーコはエリオットの頬を撫でる様に指を這わした。

その指は黒く長い尖った指先で。

エリオットの顔が恐怖に歪む。


「……あら?」


エーコは微笑みを崩さず、片方の手で黒くなった手を撫でると、元の手に戻った。


「……」


私はゆっくりとエーコを見つめた。


エーコは私にも同じ表情のまま笑いかけた。


「何故友達なのに遠ざけたか?だったかな、質問。」


私は戸惑いながら、ゆっくりと頷く。


エーコは甲高い声で高笑いをしたと思うと、今度は私の頬に手を添えた。


「『クソ女』って呼んでたわ、影で。

最初から友達でもなんでもない。あいつは偽善者よ。

ワタシを助けると言いながら、ワタシを蔑み、哀れんだ。

それを友達だと、あなたは言う?」


そういうと『精霊王』だった顔は、見たこともない様な悪夢を操る悪魔の顔で、私に向かって笑った。

赤く裂けた口角は耳まで上がり、瞳も赤く、そして瞳孔が猫の様に縦に細くなった。


思わず体が強ばり、目を見開いたまま動けない。

背筋が凍りつく様に、冷たくなる。


ゆっくりとエーコの爪が私の首に触れた。

私は必死に抵抗しようとしたが、体は動かないままだった。


「……エステル!」


エリオットの声に、エーコはあっという間に部屋から煙の様に消えていった。


緊張感が解けたのか、その場に崩れ落ちる様に膝をつくエリオット。


「……大丈夫?怪我はない?」


私はすぐに動ける様になったが、重力がかかった様に体が重く、ゆっくりとエリオットに近寄った。

近くによると、すぐにエリオットの力強い腕が私を引き寄せる。


「俺はないが、エステルは?」


抱きしめられながら、私は首を横に振った。


「エリオット、時間がないんだ。きっと何かを急いでる。」


エリオットの顔色は戻っていない。

キュッと頬を寄せた。


「俺より、エステル。君に何かあったら俺は……」


「私は大丈夫。クラウドがついてる……。」


未だ目覚めないクラウドを悟られない様に、クラウドが眠っているポーチにそっと手を添えた。

エリオットはクラウドが眠っていることをまだ知らない。

なので心底ホッとした顔をした。


私も頑張って悟られない様に笑う。


「エステル……。俺は。」


「あ、待って。私に先に言わせてほしい。」


「……なんだ?」


エリオットの腕がやっと緩み、私をすぐ近くで見つめる。


「……今焦って言おうとしてたことがあるんだけど、全部終わったらにしてもいい?」


漠然な言い方に首をかしげるが、優しく笑い頷いた。


私も口の端を歪ませて笑ってみせる。


「今言ってもきっと困らせるだけだから。でも私はエリオットの味方だから。絶対そばにいる。」


エリオットは何も言わず、ゆっくりと頷く。


「あ、後さ。全部終わったらじゃんけんで婚約決めた事、ちゃんと説明してね!……それだけは、いまだに……根に持ってます……」


後半はゴニョゴニョと口をすぼめた。

そして目をそらす私を見てエリオットは一瞬キョトンとしたが、すぐ笑いを堪える様に自分の口元を腕で隠した。


「……ちょっと!!真面目に言ってるのに!」


私は顔を真っ赤にして、エリオットの胸を叩く。

片方の腕がまだ私の腰にあり、私が叩くたび、離れない様に、その手にまた力がこもった。


「……わかった。説明するのを心待ちにしている。」


エリオットの顔が静かに近付いて、私の額に何か柔らかく温かいものが触れる。

そしてゆっくりと離れていった。


「……いまの、なに?」


見えなかったんだけど、私何された?


エリオットは私の怪訝そうな反応にイタズラをした子供の様に笑い、『何かあったか?』としらばっくれている。

私はますます顔を真っ赤にして、額を押え狼狽えた。


とりあえず、必死で落ち付きを取り戻し、エリオットの手から逃げる様に椅子に座って話をしようと誘導する。

ずっと抱きしめられていたら、身が持たないってやつ。



「……ともかく、会うのを規制されてしまったら、きっと監視もキツくなるし、なかなか連絡が取れないのは困るね。何かいい手はないかな?」


「リオンやビクターに頼むのはどうだろうか?」


「そこも警戒対象だと思う。…あのさ、私エリナに会えないかな?」


エリオットはびっくりした顔で私を見た。


「……エステルを覚えていないんだ、会っても無駄じゃないか?」


「そうなんだよねぇ……そこなんだよ。」


私は腕組みをして考えこむ。


「……ともかく、エーコ様は本当に精霊王なのか?あの姿は……」


「……もう隠す気がなかったのかな?それとも何かの拍子で姿は戻るのかな?

……もしくは急いでいたのは、時間がない所為なのか?」


「……エステル?」


私の嫌な癖が発動である。

ハッと自分を取り戻し、暴走気味の自分を鎮める。


「……ごめん、えっと。エーコは精霊王ではないと思う。

自分的には間違いないと思っているけど、見せられる証拠はないから『思う』と曖昧な言い方をするね。

アキラが本物の精霊王で、エーコは魔族の王。

2人はエーコの呪いによって姿を変えられた。だから、私はその呪いを解こうと思ってエーコを怒らせようかと思って、みんなでエリナのノートに書かれた『イベント』ってやつをやってみたのだけど……。

なんか、学芸会の練習みたいになっちゃった。」


私はそう言うと、頭をかいた。

エリオットは『ああ、だからか…』と何かが繋がったのか、納得する様に頷いた。


「俺は今後はどう動いたらいい?」


「……そうだね、とりあえずこの事はまだ内緒にしてて。誰かに言った所で、どうせ証拠もないから信じないだろうし、いま波風は立てないほうがいいのと……。

エーコには気をつけてほしい……かな。」


私は俯いてエリオットから目を逸らした。


「……わかった。」


エリオットはまた大きく頷く。

そして目線を逸らした私の手に自分の手を添えた。


「あと、セドリックどうしてる?監禁されているんだよね?」


「……ああ、そろそろ出れるかどうかはまだ俺にもわからないんだ。」


「……そっか。無事ならいいんだけど。」


「……心配か?」


「……あんな奴でも、幼馴染な友達だからね。」


そういうと、エリオットは静かに笑った。

そして『セドリックの友達になってくれて、ありがとう』と私の髪を撫でた。


エリオットさん。

なんだか途端に距離が近すぎる様な……。


ビギナーな私にはチョットそろそろ頭の中が湧いてしまいそうですが!


照れを隠す様にぎこちなく手を上げ下げしてみたり、変な動きをしてしまったので。

エリオットはまだ吹き出すのを我慢する様に、口元を腕でそっと隠すのだった。


こういう空気は『うおおお』と、奇声をあげながら走り去りたくなりませんか?

……私だけですかね……。

……なんだかすいません。


「とりあえず、絶対エーコに気をつけて。

私はエリナに接触してみるよ。

あと、アキラさんにも……。

いろんなとこ経由して手紙を書いてみる。


エリオットはセドリックをお願い……。


連絡はお兄様経由でエリオットにも手紙を送る。手間と時間かかるかもしれないけど、流石にお兄様はノーマークな気がする。また見つかったら別の手を考える……。」


とりあえず、私の方もエーコが接触してくれたおかげでいろいろ考えることができた。

少しだけ進むかもしれない。

そんな淡い期待を込めて、私はガッツポーズをした。


「……そういえば、来週表向きはエリナのお披露目だが、そこでエリナと婚約が発表される夜会が行われることになったんだが…。エステルにも招待状が行くかもしれない。」


エリオットの顔が暗くなった。


「……おっけ。ぜひ参加したいかも。そこでエリナと接触できないかな?」


複雑な思いを隠して、気にしてない素ぶりをみせる。

エリオットも同じ様に複雑な顔をしていて、なんだか笑ってしまうけど。


「……エステル、俺を信じてほしい。」


私を見つめるエリオットは私の髪を撫でながら言った。


「……わかった。信じる」


私の精一杯だった。

そう答えると、また強く引き寄せられ、抱きしめられる肩に力が入った。


とりあえず、夜会までにやる事を吟味せねば。

とりあえず手の置き場に迷いながら、エリオットの背中に手を添えた。

手のひらが異様なほど緊張した事は、多分ずっと忘れられないだろう。

書きたいことがゴチャゴチャ詰め込んでる様な気がして、何度も直しましだが、まだ少し読みにくいかもしれません。読みにくかったら大変申し訳ないm(_ _)m


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