第49話 エステル、兄の幸せを願う。
最終話、その後。
もう直ぐ彼女達の夏休みが明けます。
もう少し、ダラダラと。
あの日。
私はあのまま、また寝てしまったようだ。
起きると次の日の夕方だった。
えーっと、えーっと。
お兄様とコーディのプロポーズはどうなったんだろうか?
あと。
そうだそうだ、聖獣が目覚めると世界が終わるって話。
あれもどうなったんだろう。
パタリと意識を失ってしまって、起きたら1人である。
……当たり前だけども。
あ、1人じゃなかった。
足元に1匹。
私が起きたのと同時に目が覚めた様で、大あくびである。
「……クラウドも起きた?」
「……うん。」
まだ眠そうにさっきより大きなあくびをする。
私はベッドから起き出して、クラウドを抱っこした。
そしてヨロヨロとおぼつかない歩き方で部屋から出た。
「……エルー?」
私は自分付きの侍女の名前を呼ぶ。
いつもだとすぐ側にいて、呼ぶと聞こえる距離にいるはずなのに、なんの反応もない。
「……あれ?誰もいないの?」
壁を手で押さえながらヨロヨロとエントランスまで進んだ。
人の気配を感じられず、不安になり階段を降りようとして手すりに手をかける。
「……お嬢様?」
後ろからエルの声がする。
思わず振り返ると、フラついてしまい、足を滑らせてしまう。
あっという間に体が階段に向かって後ろから転げ落ちる。
「きゃーーーー!!」
エルの悲鳴と共に、私の体が重力に逆らった。
…あれ?
「……お嬢様!?」
エルが私を見上げる。
……見上げる?
私はふと周りを見渡すと。
「……浮いてた!!!」
「……浮いてます。」
エルが真面目に答えた。
「……なんで浮いてるの!?」
「オレのお陰に決まってんだろー!」
パタパタと短い羽を羽ばたかせてる。
「……羽根ぇぇえ!?」
「……なんかこないだエステル助けた時生えた。」
……生えたって。
パタパタと泳ぐ様にゆっくり地上に降ろされて、エルに抱きかかえられる。
下につくとアライグマの羽根は『うにょーん』と無くなった。
「……しかも、出し入れ可能とは。」
思わず撫で回し、感心をする。
クラウドも得意げに『えへへ』と照れておられた。
いいのか、それで。
「お母様やお父様は?あと、お兄様やみんなは?」
「皆さんなら今日は各自でゆっくり過ごされてますよ。昨日は色々バタバタしておりましたから。」
「そう……。お兄様とコーディはどうなったの?」
「無事ご婚約が決まりましたよー!」
ななななんと!!
リュカ・ターナーの事があって、確かにお兄様にコーディを奪ってと頼んだけど。
まさかのプロポーズとは。
驚き過ぎてまた気を失いそうになったけど。
「お嬢様、とりあえず湯浴みしてお着替えいたしましょうか?」
「……そうね。クラウドも一緒に入ってついでに洗っちゃおう。」
「お手伝いしますよー!」
エルは腕まくりをして笑った。
クラウドはお風呂と聞いてちょっと嫌な顔をしたけど、湯船に浸かるのは好きな様だ。
ゴシゴシが嫌いなのかな?
マイルドにゴシゴシ頑張る。
久しぶりにお風呂に入った感。
頭もベトベトだったのがサッパリした。
髪を拭いてもらい、よく乾かす。
湯あたりで少し疲れてしまったけど、エルが厨房から牛乳とお砂糖を混ぜて固めたアイスを持ってきてくれる。
「あー、サッパリするー」
口に含むと、すうっと溶けるように体にしみ渡る感じ。
何日もご飯食べれてないんだからそりゃそうか。
アイスをゆっくりと口に運んで食べ終わると、いいタイミングで兄がやってきた。
「お兄様、昨日あれからどうなりましたか!?」
「……えー、体調を心配して尋ねてきた兄にいきなりソレ?」
兄は口を尖らせて頬を膨らます。
「だって昨日途中で寝てしまったし!」
思わず弁解がましくなる私。
「……まぁそうだね、しょうがない。昨日あれからコーデリアも倒れてしまったので、今日改めて婚約成立したよ。これで彼女は平民になることはなくなった。」
「……え?」
私は驚いて身を乗り出す。
「フランチェス家はコーデリアのお母様が爵位を継ぐこととなった。……というか、現実はフランチェスは爵位剥奪されてしまうだろうから、コーデリアのお母様のご実家の爵位の分家という形で残す感じ。コーデリアが僕と結婚したら、フランチェスは正式になくなり、コーデリアのお母様もご実家の姓を名乗ることになる。これに関してはフランチェス父の罪が確定してしまうと無効になるから、今裏でお祖父様に早急に動いて貰ってる。」
「……なるほど……。」
それで突然のぶっ込みプロポーズか。
なんか妙に納得した。
「まぁまだ正式にコーデリアがターナーと婚約破棄が出来てないから、それが解消してからの婚約となるけどね。うちはまだお父様も若いし、僕が爵位継ぐまで時間もあるから。コーデリアもしっかりとやりたい事や勉強も出来るんじゃないかな?形式的に結婚は成人してからと、急ぐけど……。」
「では結婚は初等部卒業したらですか?」
「……そうなるだろうね。」
「……一つ聞いてもいいですか?」
兄は『え、怖いんだけど?』と、嫌そうな顔してこっちを見る。
私は愛想笑いをしながら『まぁまぁ』と兄の背中を叩く。
「エリナが来た時、お兄様ボーッと赤い顔をされたので、魅了でもされたのかと思いました。あの時聞いた理由もなんかぼんやりとした理由でしたし……」
『はて?』と兄は首を傾げた。
覚えてないんかーい!
なんて、ツッコミ入れたくなったけど。
あの時の状況を説明すると、『あぁ!』と思い出したように声をあげた。
「ピンクの髪の子か!あの子がつけてたブローチでさ、思い出してただけなんだけどね……。」
「……何を?」
「……うん、まぁ。」
「……お兄様?」
「……はぁー、これ言わなきゃダメ?」
「……是非。」
私の目がマジになる。
すごい真顔。
それをまた嫌そうに見ていた兄が、また大きく息を吐いた。
「あのブローチ、コーデリアも付けてなかった?初めて会った時だったかなぁ。制服につけてたんだよ。…それでコーデリアを思い出してたんだ。」
「……お兄様?」
「あー、もうやだなぁ。こんなこと妹に話すなんて。」
兄は恥ずかしそうに顔を両手で隠しながら歩き回る。
「……え?どういう事ですか?」
質問に無言の兄。
しばらく寝てたせいか、全く頭がついてこない。
もしかして兄は。
もしかしなくても兄は。
「……もしかしてお兄様初めからコーディのこと気になってましたか?」
「……あー!だからやだったんだよ。」
「……はい?」
話をまとめると。
兄は初めて会った時からコーディが気になっていたらしい。
初めて会った時、顔もよく見れないほど恥ずかしくなった為、目線を逸らした場所にあった、コーディのつけていたブローチばかり印象に残ってしまったと。
そう言えば最初の頃、エリナがみんなで仲良くなった記念にってなんかブローチ配ってた気がする。
私は貰って大事に机に閉まったままだったけど……。
兄が次にコーディに会った時は、生徒会長の婚約者として紹介され、失意の底に落ちた様だ。
縁が無かったと諦めようとした時、私に奪ってくれと言われたと。
しかもひどい扱いをされてることも知る。
妹にはそんなこと言うなと言った手前、表立って何も出来ないが、なんとかしようと模索した。
裏から婚約者を奪う準備をした結果。
私が表で戦っている時に、兄は裏で動いていた様だ。
お陰でコーディは平民に落ちることもなく、救われた。
「……お兄様、ありがとう。」
「……お礼言われる様なことは何も。」
「……しかしうちのツリ目好きはどんな遺伝なのでしょうか…」
「……いや、ツリ目だから好きになったんじゃないからね?」
「……申し訳ないのですが、信じられないです。」
「ちょ……!違うからね!!」
兄は赤い顔をして口を尖らせている。
「……と言うか、コーディはなんで婚約受けたんだろう?」
私はふと考える。
「ねぇ、それ僕に対して失礼じゃない?…別に無理やり婚約したわけじゃないからね!」
「平民に落ちず、フランチェスの家名もしばらくは守られる為じゃないのですか?」
「……政略的なものだと思ってる?」
「お兄様がコーディ大好きって言うのはわかりました。」
兄はフッと鼻で笑った。
鼻で笑った?
顔を見るとえらくドヤ顔でこっち見ていた。
「……なんですか?」
「政治的なものではないのです。」
「と言いますと?」
兄はまたえらくドヤ顔のまま言った。
「両思いだってば。」
「……。」
またまたぁ。
いつも冷静なコーディがそんな節は。
兄を見ても表情一つ変えたことは、な……。
あれ?
私は両手を頬に当てペタペタと顔をあちこち触る。
あれあれあれ!?
ここ最近の兄を見るコーディの表情を思い出す。
そして、納得。
「あー!」
私はよほど色恋沙汰に鈍いらしい。
私の親友はいつからあんな表情をしていたのだろうか?
マギーとビクターに気を取られすぎだったか…。
「……ちゃんと両思いだから、ね!」
口を尖らしたまま、兄がプイッとそっぽを向く。
「お兄様はドヤ顔よりいまの顔のが可愛いと思います。」
「……え?かわいいって…?」
「……いえなんでも!よかったなーって思っただけです!!」
私は嬉しくなって、兄を見て照れ笑う。
「……コーディがお姉さんになるのか……!」
「……そうだね。」
兄はすごく恥ずかしそうに目を逸らした。
「コーデリア・カーライトかぁ。」
「あー、もう僕行くからね。生徒会の書類の整理、夏休みもあと少しなのに終わりそうにないし、コーデリアの家名の件や前のは破棄して、僕と婚約の手続きとかまだ色々あるから……!」
頭をかきむしりながら部屋から出てった。
私は心底嬉しかった。
ベッドで小躍りしたいくらい。
お兄様とコーディが……!
私は両手で口元を押さえ、自然とこぼれる笑みを隠した。
……てか、あれ?お兄様もなんちゃら対象者だった気が。
いいのか?
……まぁ、いいか。
兄と親友の幸せのが先だ。
そして私はしばらくベッドでゴロゴロしながら、気持ち悪い笑いを繰り返していた。
いつも誤字報告ありがとうございます。
頭の中にあるものを一気に文章にしているので、なかなかの誤字の多さに穴を掘って埋まりたい気分でございます。
感想もドキドキしながら感謝して読ませていただいてます。
文章力、表現力…もっと磨きますm(_ _)m
これからもよろしくお願いいたします。




