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第43話 今時だんそんジョヒとか・かっこ笑

意識を回復した時には、もう既にお昼をまわっていた。

本当に『ハッ!』という感じで目が覚める3人。


限界が来てばたりと寝てしまったため、お互いの酷い顔を笑い合った。

各自部屋に戻り、湯浴みをして食堂で待ち合わせる。

食堂に着くと、兄軍団が遅い昼食を取っていた。


……あー、かぶりたくなかったけど、しょうがない……。


「エステル今起きたのかい?昨日は遅くまで楽しそうだったね。」


兄がキラキラの笑顔で私の横に座った。


「うるさくしてすみません。久し振りに会ったのでとても話が弾んでしまって……」


私の部屋から3人分の手付かずの夕食が運び出されて食堂に返される。

それを見つめていた兄がフフッと笑い、『食事もとらずに夢中になるのは流石に気をつけないとね?』と注意されてしまう。


……ごもっともです!

最後なんて生徒会長暗殺計画まで発展しました!!

そのあたりが一番楽しかったです!


「次から気をつけます!喋ってても、ご飯ちゃんと食べます!」


「喋りながらはお行儀悪いってば!」


と、えへへと誤魔化す様に笑った私に、『めっ!』と人差し指がおでこをついた。



「……サイラスは妹想いなのだな。」


リュカ・ターナーがカトラリーを食器に置き、口をぬぐいながらなんか喋って来た。


「ええ、自慢の妹なので。」


兄は天使の笑顔をリュカ・ターナーに向ける。


それをフンと鼻を鳴らし、兄に不敵に笑いやがる。


「私には妹はいないからわからないが、カーライト家は家長や長男を立てる習慣はなさそうだな。私だったらそんなナメた様な返事が返って来たら、手が出てしまうかもしれないな。」


と、首をすくめる。


『お前ん家の古い風習とかをこっちに押し付けんじゃねえ!縄文時代と平成ぐらいの差がある事、早よ気がつけよ!ていうかナメてないし!てめーなんて頼まれたって舐めるかよ!閉鎖民め……』


……なんて口に出しては言いませんけど。


「会長ともあろう方が結構古いお考えしてらっしゃるのですね!会長は時代の最先端を行く様な斬新かつ素晴らしい発想をいつも仰られてるのに。」


兄は『意外デスゥー』と言わんばかりにキョトンとした顔でリュカ・ターナーを見つめた。

リュカ・ターナーはまた鼻をフンと鳴らし。


「そ、そうか?いやこれは私の考えではなく我が父の教えなのだ。」


とちょっと誤魔化す。


兄はニコニコと笑顔で『そうなんですかーへぇー』と無邪気な笑顔を向けていた。


……1番の策士はうちの兄な気がするぞ……。

別の意味でいい仕事しそうだ……!

そんなこと思いながら、朝食に口をつけた。


モソモソ食事をする私の横を、バタバタと兄がリュカ・ターナーと愉快な仲間たちを連れて庭へ向かっていった。

不快に思わない様に、私に気を使ってくれたんだろう。

兄に感謝。


入れ替わりにマギーとコーディも食堂へ来た。


「……さっき会ったよ、天敵に……」


「……あら?何か言われてましたか?」


「言われたけど、うちのお兄様が仇を討ってくれた……!」


「まぁ!」


コーディは口元を押さえて嬉しそうに笑った。

マギーはまだ眠そうだったが、朝食が運ばれてくるとお腹が空いていたのかとても笑顔で頬張った。

昨日ぶりの食事……うんまい!


サロンはほぼ年少組の居場所となったため、年長な生徒会組はあまり寄り付かなかった。

……まぁ年下とはいえ、この国の王子がいるとこにはいたくないのも事実。

セドリックが初めて役に立つ。

今日初めて、いて良かったと思ったわ。


みんなで宿題の進みを確認したり、夏休みに過ごした思い出などを話し合っていた。

ビクターもマギーの話を一杯しており、その度マギーが頬を赤くして俯くのがもうほんとに可愛かった。

ニヤニヤ顔を緩めまくる私を、セドリックが何度も片手でホッペむぎゅーをしやがる。

ブスが進行するじゃないか!やめろ!


しばらくは兄の計らいもあってか、食事も食堂ではなくサロンでとるようになり、年長組と関わることもなく過ごしていたのだが。

その日事件は起きた。


来るはずもない年長組がサロンの中央で座っていた。

兄の姿はなく、居るのはリュカ・ターナーとチャールズ・フランチェスの2人。

我が物顔で私のお気に入りの場所で踏ん反り返っている。


私が思わず小さく舌打ちをしたので、それに気がついたリオンが気を利かせて、みんなを連れて踵を返そうとする。

だが。

私たちの姿を向こうが見つけるのが早かったのだ。


「コーデリア。こっちに来てもうしばらく立つが、兄にも婚約者にも一度も挨拶がないのはなぜだ?」


「あら、お兄様。そしてリュカ様。なかなかお会いできなかったのでご挨拶が遅れてすみません」


そういうとさっとスカートの裾を広げ、お辞儀をする。

その様子を見て、コーディ兄が『ツカツカ』とこちらに歩いて来たと思ったら、コーディに向かって手のひらを振り上げた。

とっさに、私が庇うように前に出る。

その瞬間、コーディ兄の手が振り下ろされた。


『バチンッ』


鈍い音が響く。


いっ……


……痛くない。

あれ?


殴られる覚悟で前に出たけど、どこも痛くない。

ゆっくりと目を開けて前を見ると。


コーディ兄の片手を『真剣白刃取り』状態のリオンが立っていた。


「……副会長殿。流石にご兄妹であろうが、ここはカーライト家です。その様に手をあげるなどという行為はここの領地にお世話になってる以上…流石に。ここは引いて頂けるとそちらの体裁も守られるかと……」


「……貴様。名前は?」


「リオン・グレイスと申します。」


リオンは笑顔で『真剣白刃取り』状態を崩さす、ジリジリと支えている足を動かし耐えていた。


「……ほう、あのグレイス家か。ならば今回はそちらの顔を立てて引くとしよう。」


スッと手を下げるコーディのクソ兄。


その間私はずっとコーディのクソアホ兄を目ヂカラマックスで睨みあげていた。


私の睨みにフンと顎を突き出し、まるで虫けらでも見る目で睨み返された。


あああああ、こいつ今すぐバナナの皮で派手に転んで、豆腐の角に頭ぶつけて宇宙の果てまで飛んで行ってくれたらいいのに!!!

ワナワナと肩を震わせたが、すぐにコーディを抱きしめた。

コーディは気丈にも笑顔を崩さず自分のクソアホ脳みそ豆腐な兄を見つめていた。

でもわずかに体が震えている。


「コーデリア。未来の夫にその口ぶりはなんだ。『そして』だと?帰ったら覚えてろよ。」


「はい、お兄様。」


コーディは声のトーンを変えず、笑顔で返す。

体の震えはさっきより強くなった。


あああ、言い返したい。

言い返せば兄もコーディも立場が悪くなる。

私1人が暴走するわけにはいかないんだ。

せっかくリオンが体を張ってくれたんだ。

無駄にするわけにはいかない。


ブルブル震えるコーディをずっと抱きしめて、豆腐頭が去るのをずっと耐えた。


遅れてノロノロやってきたセドリックが私たちを見つけて首をかしげる。


「そんなとこで何やってんの?」


「……地震ごっこ。というか、避難訓練?」


ごめん、説明超めんどくさかった。

状況説明するとまた、仕返しされても困るし!


私のわけわからない回答に最初に吹いたのがコーディだった。


「……エステル!これ、避難訓練だったのね。」


コーディは震えながら、涙が出るほど笑った。

そしてリオンも笑った。


「あー今日ばかりは僕、宰相の息子で本当に良かったと思ったよ!」


「たしかに家名で引いた節はあるな」


そう言いながら、ビクターがよろけて座り込んだリオンに手を貸して起こす。


「父が城勤は強いな……」


リオンが首をすくめ、舌を出した。


「皆さん、私事でご迷惑をおかけしてすみません……」


コーディが立ち上がり頭を下げる。

マギーが目にいっぱい涙を溜めてコーディに抱きついた。


「あんなの酷すぎます!酷すぎます!」


と、怒りながら泣いた。


1人状況のわからないセドリックが首を傾げながら頭をかいた。

……君はそれでよし!


この件で私は本気で豆腐頭どもをどうにかしようと考えることになる。

コーディをなんとかしなければ、家に返すと危険があるのは分かり切っている。

5つも年が上なのに。

自分の妹を平気で殴るような奴に、私のコーディは渡さない。

もちろん、その様子を楽しそうに笑いながら見ていたあのリュカ・ターナーも絶対許さない。


さぁ、みんな、悪巧みするよ。

私は眼鏡をクイッとあげて、みんなを引き連れて自室に向かう。


あ、その前に。


『あいつらに殴られかけた』事は兄に報告しなくちゃね☆


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