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第28話 エリナの気持ち(1)

今回はエリナ編となっています。

エリナが好きな方も嫌いな方も、皆さんが思うように彼女を見てあげてくださいm(_ _)m

今日という日を待ち望んでいたの。

だって、やっと二人でお話しできるチャンスなんだもの!!


どんな話をしよう。

私は部屋の中をスキップしてグルグルと回っていた。


私が『精霊』と話せる事によって『聖女』となってから、明らかに家族や親族、使用人迄も。

私に対しての態度は変わってしまった。

お父様もお母様も、私の機嫌ばかりを伺うようになり、侍女たちは私を腫れ物のように扱うようになった。

ふと、開いた窓の端に、もたれ掛かる。

窓の外から楽しそうな人の声が聞こえてきた。

私はその声を耳にしながら『ふぅ』大きく息を吐いた。


昔から私は『少し変わっている令嬢』と言われ、人間の友達は一人もいなかった。


お父様も私を心配してくれたが『いつか君を理解してくれる友達ができるよ』といつ来るかわからない『いつかの未来』の事を漠然と繰り返すだけだった。


両親は私を可愛がってくれた。

それはもう、目に入れても痛くないほどに。


私は物心ついた時から『前世の記憶』というものがはっきりあった。

はっきりといっても、前世の私は『高校生の少女』で『乙女ゲー』が大好きな引きこもりだった。

今となっては学校に行っていたかも覚えていない。

ただひたすらテレビのモニターに向かって大好きな『人』に会いに、携帯ゲーム機を起動する毎日だった。


初めはマイナーなゲームだった。

パッケージの絵を見て買ったに過ぎないゲーム。


だけど。

彼は私の生きる希望になった。


共働きで帰ってこない忙しい両親の代わりに、私と会話してくれる彼。

私の答えに、はにかんだように笑い、私に唯一の愛を囁いてくれる。

私がボタンを押す度、何度でも言ってくれる愛の言葉。

ゲームの中だけにしかいない彼。

私は『彼に会いたい』と思うようになる。


何度も何度も彼のルートを繰り返す。

その為に他の『対象者』のルートも進めないといけなかったのがちょっと厄介だったが、他のキャラもとても魅力的だし、意外とストーリーもしっかり作り込んでて、他のキャラも楽しめた。

しかも他のルートを進めていくと、彼がヤキモチまで焼いてくれる。


『他の男のとこへ行くな!……俺だけを見てろ……!』


このセリフだけでご飯が3倍はいける気がする。

スマホでムービーまでとって、何度も繰り返し見た。


タイトルは何というか……『動悸でキュンとしちゃう☆プリンスコレクション、略してドキ☆プリ』と、ちょっとセンスを疑ったが……逆にそれが話題になり、あっという間に人気に火がつく。

続編が出るという話や、スマホのアプリでも出る事になる。

アプリは記憶にあるが、続編までは記憶にないため、私はそこまで出来なかったのだろう。


アプリの彼は時間をセットすると『おはよう』と起こしてくれるし、時間に合わせて色々な会話をしてくれる。

ゲームと連動する事ができ、彼が学校の時間に起動すれば何気ない学校で起こったことや、秘密の悩みを私に相談したりする。

私は彼以上に彼のことをよく知ることとなる。


どうして死んだかなんて覚えてない。

ただ物心ついた時から前世の記憶よりも、ゲームの内容全てを鮮明に覚えていたのだ。


ここが『ドキ☆プリ』の世界だとわかった時、体が震えた。

そして私が『ヒロイン』だとわかった時も。


『ドキ☆プリ』のヒロインは初期の名前が決まってない。

なので名前を登録する事により、その名前で呼ばれるのだ。


まぁ、文字だけだけど。

あとは『お前』『アンタ』など、ぼんやりとした呼ばれ方をする。

どのキャラも人気の声優さんが担当して、そのキャラごとにすごく合ってる声だったけど。


今思えば、学園に入学して知ったこっちの世界の『対象者』たちの声は、ゲームの彼らとは少し違うような気がした。

それなりに素敵な声をしているし、声優さんより本人に合っているとは思うけど……。

そこがなぜか寂しく感じたなぁ。


まぁ、ゲームじゃないゲームの世界に私が転生したのだ。

『本当に生きている彼ら』は声優さんではないのだから。

そう言い聞かせて、この世界に生まれてきたことを感謝する。



私がまだ小さい頃。

ある時ふと誰もいない庭から、誰かが話すような声を感じた。

今までも感じてた事があったが、突然それが強く感じられるようになる。


「ねぇ、だれ?誰かいるの?」


庭に出て何もない空間に話しかける。


『……が、… …るの?』


「え?今何か言った?」


『……私たちが、見えるの?』


「え……?まだ見えないわ。聞こえるだけ」


『聞こえるの?……じゃあ、右側にある一番大きなの木の側へ来て。』


木のそばへ私は歩いていくと、ボンヤリ光る玉の様なものがフワフワとびまわっていた。


「ピンク、うす緑、オレンジ色……」


飛び交う光を指で差しながら、見える色を呟く。


私の答えに光の玉は嬉しそうに私の周りを飛び回った。


『私たちが見えるのね!?すごいわ、100年ぶりかしら?』

『もっと昔じゃない?』

『最後に私たちを見たのは、エーコだけだったね』

『アキラはいらない子だったから見えなかったしね』

『僕らが見えないなんていらない子だ』


「えーこ?あきら?」


聞き覚えのある、懐かしいフレーズ。

私より前に転生してきた人がいるってこと?それも100年も前に……?


『ねぇ、キミは何て言うの?』

薄緑の玉がボーッとしている私に近づいてきて耳元でつぶやいた。


「私は、エリナ……」


……そう。

前世からの名前、エリナ。

名前が引き継げたということは、わたしがヒロインなのだ。


ボンヤリと確信する。


ここは、わたしの世界。

思わず顔が緩む。


「ていうか、あなた達って何?」


というかこんな話ヒロインにあったっけ?

精霊がどうとか言うセリフなら一瞬どこかで見た事あった気がしたけど、まさか……?


「ねえ、あなた達って精霊なの?」


『エリナの好きに呼んでいいよ』

『エリナの思うままに呼んで』


私は光の玉を見つめて微笑んだ。

精霊が見えるって私は特別なんじゃないのかしら?

頬に手を当てて、緩んだ顔を抑える様に笑う。


『エリナ嬉しそうね?』

『いい事あった?』


「あったわ、あなた達に出会った。」


光の玉は嬉しそうにまたフワフワと飛んでいく。


『僕たちも嬉しい』

『エリナわたしも嬉しい!』

『僕たち友達?』


「ええ、友達になって!」


『やったー!友達!』


何度も光の玉はわたしの周りをぐるぐると飛び回った。




「お父様お母様、私精霊に会って会話ができました!」


お父様もお母様も私が笑うと嬉しそうに笑い返した。


「そうか、精霊が見えたのか!エリナがいい子にしてたからじゃないか?」

お父様は満面の笑みで嬉しそうにそう言った。


「素晴らしい事だわ、エリナ。お友達になってもらったら?」

私の頭を愛おしそうに撫でるお母様。


「はい!もうお友達になってくれました!」

そう言うと、頭を撫でながら『よかったわね、エリナ』と微笑みかけてくれた。


なーんだ、こんな反応か。

と言うことは見える子なんて結構いるんじゃないか。

精霊が100年ぶりだとか言うから私だけが見えるのかと思ったのに。


ベッドに横になり、足をブラブラさせながら一人でガッカリしたのだった。


精霊はいつも側にいたわけじゃなかった。

気紛れに現れては、気紛れにいなくなる。

だが私の危険が訪れたら知らせてくれたり、私に意地悪するやつがいたりすると、こっそり助けてくれたりした。


悩んでたら悩みを聞いてくれたり。

ただ聞いてくれるだけだったけど、友達がいない私にはそれだけでも嬉しかった。


私は10歳になり、学園に入学する年となった。

この時を待っていた。


本当だったら私は、別の学園に入学をして14歳で転校する筈だった。

だが精霊達が『そんなめんどくさいことしなくても大丈夫だよ、エリナは特別なんだから。』と言われて、『そうかー』と思ってしまったのだ。


予定は少し違うが、どうせ14歳で会うのだから、10歳であったところで愛が始まるのが早くなると言うだけだ。

そう思うことにして覚悟を決める。


会えるのだ、彼に。

どうやって自分を知ってもらおう。

鏡に映る自分は、誰が見ても特別で可愛いんだから。

悪役令嬢になんて負けない。

むしろどんと来い。



そう思ったあの時。

制服の採寸で名前を呼ばれた彼女は私の見てきた彼女とは全く別人だった。


自慢のオレンジ色の縦ロールはどこにもなく、茶色の固そうな直毛を無造作に2つで結い、チャームポイントのキツいグリーンの目を、黒い大きなメガネで隠している。


……あれ?なんか目の色も違うくない?

私の記憶違い?

……そんなわけないよね?


私が彼女を見て狼狽えていたので、精霊が私に問いかける。


『あーあれは、エーコで言う、アキラだ。選ばれない者がいる』


「選ばれない者?」


『そう、何かの間違いでここに来てしまった要らない存在。あの子のせいで本当の『あの子』が違うものになっちゃった』


「……どう言うこと?」


『あの子は要らない子。アキラと一緒。あの子は『あの子』じゃない』


クスクスと精霊が笑い合っている。


エステル・カーライトも私と同じ『転生者』?

あのエステルが転生したために、本当のエステルは生まれてこなかったと言うこと……?


「それってまずいんじゃ……?」


悪役令嬢が産まれてこなかったって事?

だったら悪役令嬢はどうなるの?

私をいじめて彼に断罪される彼女はどこへ……?


私の顔色は青ざめた。

運命が変わってしまう。

『彼女のせい』で……。


「ねえどうしよう、運命が変わってしまったら私、彼に出会えないの?」

慌てて精霊に問いかける。

精霊はフワフワと飛び回り、私に触れるように耳元へ来る。


『彼女にかわりをやってもらえばいいよ』

そう言ってまたクスクスと笑った。


そうか、エステルとして生まれてきたんなら『エステル』の役目を果たして貰えばいいんだ。

私の顔に笑顔が戻る。


「〜私と仲良くしてもらえないかと、声をかけてしまいました。」


彼女は私にひどく顔を引きつらせた。


私はニッコリと微笑む。

彼女はとても戸惑い、早くこの場から去りたいかのようにドアの方をチラチラと見ていた。


「そ、そうですか。学園に入ったら是非よろしくお願いします。」


彼女は逃げるようにドアへ行こうとした時。


「エステル嬢!」


彼がエステルに声をかける。


彼に会えた。

私の心臓は飛び上がるように跳ね出した。

ああ、目の前を通り過ぎて、エステルを見ている。

後ろから彼の弟のセドリック様もやってきた。


彼らと話す彼女の顔はひどく嫌悪の表情を前面に出し、嫌がってるように見える。


なぜ?

何故、こんなイケメンにときめかないのか?


私には理解ができない。


私の目の前には彼がいる。

私の運命の相手、エリオット様。


どれだけ会いたかったか。

あなたに会うために、4年も待てず同じ学園に来たのに。

彼は私なんかまるで気がつかず、悪役令嬢の彼女が慌てて出て行ったドアを見つめている。


私はここにいるのに。


私の気持ちを気付いたのか、精霊がまた耳打ちする。


『手を貸そうか?』


「どうやって?」


『じゃあ見てて。』


精霊はエリオットの方へ飛んでいくと、髪の毛をふわりと揺らすようにかすんで飛んだ。

エリオットは髪の毛を気にしてこっちに顔を向ける。


ふと、私と目があった。


エリオットはたしかに私を見た。

私は彼にとびきりの笑顔で笑いかける。


なのに彼は、スッと何事もなく私から視線を外したのだった。


「どうして!?なんで??目があったのに!!」


家に帰るなり部屋に閉じこもり、ブツブツ一人で叫ぶ。


『やっぱりあの子のせいで運命が変わってしまったんじゃない?』

『そうそう、きっとそうだよ』

『エリナ、どうする?』


「なんとか軌道を修正しないと、このままじゃ私……」


せっかく転生したのに彼と結ばれない未来なんてありえない。

これはどうするべきだ?

どうしたらいいんだ?


私はウロウロと爪を噛みながら歩き回って考える。


『まずはどうする?』

『アキラみたいに消す?』


「だめよ、消すとかはダメ。

……ってアキラって人はどうなったの??」


『アキラはエーコがいなくなれって言ったから、消えたよ』


「……あなた達が消したんじゃないの?」


精霊はクスクスと笑って言った。


『僕らは多分、何もしてないよ』

『エーコがダメって言ったしね』

『エーコがやれって言ったらやったけどね』


そう言いながらクスクスと笑い合う。


……精霊こわっ

消せんの!?

こっわー!

私は思わず身震いをした。


「……消すなんてしない。仲良くなって協力してもらえばいいのよ。

協力して軌道を修正してもらったらいい。

そうね、それがいい考えだわ!!」


『エリナはエーコと違って平和主義ね』

『それじゃつまらなくなるよ、僕たち』


「怖い事言わないでよ!大丈夫よ、つまんなくないわ。」


私は自分に言い聞かせながら頷いた。








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