九話 旋律の助っ人
その時、ポロロンという音色と共に光のコードと音符が敵魔法使いを襲った。探を狙った彼も、さくらも人質にしてる彼も、周りにいる彼らも全員その攻撃を受けた。
「新手?」
探が周りを見渡すと青と白の衣装を纏った魔法使いが現れた。衣装には音符や楽譜のコードを示す模様がついている。
「大丈夫?」
「あ、はい」
青い魔法使いは三上軍団の一人からさくらを引きはがす。
「あなたは」
探が青い魔法使いに近づく。
「細かい話はあと!今はやつらを倒すよ!」
「はい!」
探は頷くと銃を回収してエネルギーを溜める。
「ホーミング……スマッシャー!」
何十発もの弾丸が飛び二人の敵魔法使いを襲う。
『うわー!』
ズドドドーン!二人は攻撃に耐えられず変身解除されて吹っ飛んだ。
「コードハーモニスタ!」
青い魔法使いが光の鍵盤を操作し先ほどよりも多量のコードと音符を二人の敵魔法使いに飛ばす。
「ぐあー!」
ポロロロン、トゥルルン♪さらに二人の魔法使いを撃破する。
「ぐ……」
「うう……」
敗北した魔法使いが地面に伏せ、痛みに苦しむ。
「お前ら……」
リーダー格の魔法使いが仲間を案じる。
「よくも仲間を!」
そして探に向かって駆ける。
「はっ!」
探は剣を回収して柄の下部分で二本を合体させる。薙刀に変化したそれを彼に向かって振り切った。
「があぁぁぁ!」
斬撃にリーダー格の魔法使いが悲鳴を上げて倒れる。
「やった、みんな倒したんだ」
さくらが安心する。
「これで終わりだと思うなよ。三上はこの戦いを見てる、あいつが現れた時がお前達の最後だ」
リーダー格の男子学生が言う。
「なんだって?!三上春樹はどこにいる?どこで俺達を見てるんだ!」
探が彼に詰め寄る。
「さあな。どこか俺達がよく見える場所にでもいんじゃねえの?」
その言葉に探は近くの建物を見渡す。だがガラスの向こうには三上春樹どころか人っ子一人いない。人目の付く場所ならともかくここは戦闘や人殺しがあっても誰も気づかないのだ。
どこだ、三上春樹はどこにいる。探は懸命に辺りを見渡す。
その視線は屋上へと移動した。
「…………!」
探は息を飲む。一人だけいた、その影はこちらを観察するように佇んでいる。影が探に気づいてニヤリとする。この距離では互いの顔を認識することは出来ない。だが影は探が自分を見たのを認識し、探は彼がニヤリとした気がしたのだ。
探は夢中で走り出す。
「探?」
「ちょっと君!」
さくらと青い魔法使いの制止も聞いていない。
探は外の階段を上り建物の屋上に辿り着く。
対面する影と探、影の男は軍人が着るようなポケットのたくさんついた服にガンベルトのついた衣装を派手なものにした衣装を纏い、頭にはスコープつきヘッドギアをつけている。
「お前が三上春樹か」
探が男に言う。
「そういうお前は潜縷の弟か」
男が呼応するように呼びかける。
「そうだ。じゃあ、あんたが兄さんの仇てことでいいんだな」
「だとしたら、どうする?」
春樹が言うと感初入れずに探が銃を発射する。だが弾丸は空振りした。
「と、危ない。ていうのは冗談で今度思いっきり戦おうぜって言おうとしたのさ」
春樹が舌なめずりし、獲物を待ち焦がれる狩人のように言う。
「どうして?今戦えばこっちが消耗してる分あんたが有利なはずだ」
探は彼の意図が分からない。
「それじゃ面白くねえんだよ。あの潜縷と同じ姿をした弟、わざわざ俺を狙うためにその力を使っているお前、そいつを狩るのにハンデがあったんじゃつまらないだろ? 」
探は彼の言葉が、心が理解できない。まるでこれでは人殺しを楽しんでるようではないか。現実にこんな人間がいるのかと戦慄までした。
「じゃあな、また会おうぜ」
そう言うと春樹は空を飛んで去っていった。
「探、あの人は?」
追いついてきたさくらが言う。
「あれが三上春樹だよ。俺の兄さんの仇」
「あれが………」
「君、大丈夫?怪我とかない?」
さくらと同じく追いついた青い魔法使いが言う。
「なんとか。あなたのおかげで軽い怪我で済みそうです」
探が答えた。
「そう、良かった……」
「ところであなたは?探と同じ魔法使いなの?」
さくらが青い魔法使いに聞く。
「ええ、わたしは 調辺聖麗。彼と同じ魔法使い」
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