六十三話 魔法は変身しなくても発動する?
「ああ、だが最近スランプらしくてな。姉としてして何かしてやればいいんだが………」
闘華は言葉が続かない。
「六年も音沙汰なにしで今更姉っぽくなれないーとか?」
探が闘華の状況を察する。
「そんなんじゃない。だいたい、家族なんだから励ますくらいできるだろう」
「じゃあ何がダメなんだよ」
「魔法の影響であいつの奏でる音色に変化が出ている」
「は?」
「どういうことだよ」
二人は闘華の言うことが分からない。
「あいつの曲はいい曲だ。だがいい曲過ぎるんだ」
「いいことじゃないか」
「むしろスランプじゃなくね?」
「あいつの音色には魔力が込められているんだ」
「駄目だ、またわけがわからなくなってきた」
「さっきからなに言ってんだよお前」
二人は頭を抱える。
「あいつの使う魔導システムは音楽を奏でられる、それは潜縷も知ってるだろ」
「ああ、確かそんな技使ってたな」
探は聖麗の攻撃方法を思い出す。彼女は楽譜の譜線や音符を利用した攻撃をするのだ。
「その力は変身せずとも発動している、本人の意志に関係なくな」
探と春樹は顔を合わせる。
「そういえば最近テストの点数が急に上がったな」
「俺も目が急に良くなった気がするな」
二人は闘華の言葉に心当たりがあった。彼らも魔法使いの姿にならずとも自動で魔法が発動していたのだ。
探はテストの答えに窮した時検索能力ですぐに思い出せるように、春樹は狙撃用に遠くのものが見えやすくなっている。
「あいつの場合それが音楽に影響したということだ」
「しっかしよくそんなこと知ってるなあんた」
「常時発動する魔法には固有魔法以外に再生力の強化がある」
「再生力て、魔法使いて頑丈なだけじゃなかったのか」
「短時間なら意味はなさないだろう。だが以前聖麗が吸血鬼にやられた時首元の傷が一日で小さくなっていたんだ。薬物や遺伝子改造で強化されたわたしならともかく聖麗まで再生力が早いなどありえない」
闘華は過去に自分が見た事例を話す。
「だから魔法の影響だって?」
探が闘華の言わんとする結論を言う。
「ああ。当然再生力以外にも影響は出ると思えば楽器の演奏に余計な音が出るのは当然だ」
「ならそいつを教えてやればいいだけだろ」
「教えてどうなる問題じゃないだろう、あれはあいつの心の問題だ。それに………」
闘華は中々次の言葉を紡げない。
「なに、なんか理由でもあんの」
「あいつに避けられてる」
『は?』
探と春樹は闘華の答えに呆ることになった。
「なにか嫌がることでもしたのかよ。姉ちゃんのくせに」
探が軽蔑するように言った。
「闘華ちゃんやだぁ」
春樹はからからうように言った。
「そんな覚えはない、ないんだが………」
闘華は悩ましく頭を抱える。
「姉妹ってのも複雑だな、こっちは兄弟だけど」
探が手近な石をもてあそぶ。
「お前、兄弟がいるのか」
闘華が興味を示す。
「こいつが殺したけどな」
探は春樹にライフルを向ける。
「や、やだなあ。俺は仇じゃないって言ったじゃないか」
春樹が苦笑いする。
「許したとは言ってないけど?」
「じゃあ今から………」
「許すわけないだろ」
春樹の申し出を探は言い切る前に一刀両断する。
「お願いします!ほんと反省してるんで許してください!なんでもしますから!」
春樹は土下座して許しを乞う。
「うわ、めんどくせぇ」
そんな春樹に探は嫌悪感を覚えた。
「お前達仲いいな」
二人を見て闘華が言う。
「マジか!」
春樹が盛り上がる。
「いやよくないし、こいつが勝手に許せって言ってるだけだし」
探は嫌悪感をむき出しにしたままだ。それでも実際に撃たないのは戦力として必要になる可能性があるからだ。




