六話 索の大学に行こう
探とさくらは午後の授業をサボり索の大学に向かった。電車に乗って移動した。高校生がこの時間にいるのはまずいので二人は見学ということで通すことにした。
「で、どうするの?」
さくらが言う。
「まずは文芸サークルの顧問の先生を探そう。兄さん達は文芸部のいざこざで死んだらしいからね」
「でもどうやって?」
「とりあえず知ってそうな場所から探さないとね」
学生課に行くと文芸部の顧問は今は302研究室にいることが分かった。
「うーん、302てどこだろ」
さくらが周囲の研究室番号を見渡す。目的地と同じ階ではあるが部屋番号は離れている。
「この辺りが340番代だから………あー、めんどくさい!こうなったら!」
探は魔導システムのブレスレットを取り出す。
「なにそれ?」
それを見てさくらが疑問符を浮かべる。
「まあ見てなって」
探は変身とは別のボタンを押して魔導システムを限定的に起動させる。
「この大学の、302研究室の場所、と」
検索能力起動してフリック入力をしてフロアの地図を呼び出す。
「あっちだ」
探が目的地を指さして進む。
「なにそれ?魔法?魔法なの?!」
さくらが探の検索能力に戸惑う。
「うん、魔法」
対して探は自慢でもなく自然に答える。
二人は目的の研究室に入った。
「君は………」
文芸部の顧問教授が探を見る。
「ご無沙汰してます」
探が頭を下げる。教授は索の葬式に来ていたため面識だけはあったのだ。
「それで今日はどんな話を聞きにきたんだい?学校見学てわけじゃないだろ?」
教授が探の意図を察するように言う。
「文芸サークルの事情、もう少し詳しく話してくれませんか?兄が、いえ、兄達がなぜ争い、殺し合うことになったのか知りたいんです」
探は索がとあるサークルにいたことは彼から聞いてたが詳しい話は聞いていないのだ。
「そこまで事情を知ってるなんて、お兄さんの日記でも見つかったのかい?」
教授の言葉に探が頷く。
「そうか………」
教授は辛そうな顔をした。
「春樹くんに、復讐でもするのかい?」
「兄の日記にはそうしてくれと書かれています」
「 潜縷め、弟さんになんてものを残してくれたんだ」
教授が忌々しいとばかりに言う。
「その春樹て人の居場所とか知りませんか?」
さくらが言う。
「あいつは人殺しを初めてから大学に一切来てないよ」
「じゃあ、行きそうな場所とか………」
「それも無理だ。もしかしたら高校時代の友達やバイト先の知り合いに世話になってるかもしれないしな」
「そう、ですか……」
「すまないね、力になれなくて」
教授が謝る。
「いえ、お気になさらず」
探とさくらは部屋を後にする。教授が春樹の居場所を教えなかったのは故意ではなかった。だが彼はこれでいい、これで探に復讐などさせずに済むと安心していた。
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