五十九話 吸血鬼を射抜いたのは
探はもう無言で魔弾を睨むことしかできない。もう限界だ、撃たれるしかない。
「これで、終わりだあぁぁぁぁぁぁぁ!」
ゼロワンが大きく腕を動かし振りかぶる。ついに魔弾が探にとどめを刺す、その時だ。
ズガアァァァァン!
「え?」
「な………」
二人は言葉を失った。探ではない第三の方向から魔弾が飛びゼロワンを射抜いた。
予想外の方向にゼロワンは対応出来ず正面から受ける。超遠距離からの高レベル高威力狙撃、魔法使いを仕留めるには十分な一撃だった。
グラァッとゼロワンが倒れる。
「あの光は………」
いったい誰が撃ったのか、探は首を傾げるばかりだ。魔力も感知しづらい。
倒れたゼロワンに近づく。変身は解除、魔導システムのデバイスも壊れている。これ以上の戦闘は不可だ。
「てめえ、仲間を控えさせてたのか……」
ゼロワンはそう言うと何も言わなくなる。
「いや、知らない。まったくのあら………あいつは」
言ってる途中で探は近づいてくる魔力を感知する。
「よっ、待たせたな」
魔力の正体、三上春樹が挨拶する。
「いや待ってないし、なんでいんの?あんたの魔導システムのデバイス壊したよね」
探は懐疑心マックスで言う。
「紫のドレスに眼鏡の姉ちゃんに言われたんだよ、お前を助けろってな」
「紫とドレスに眼鏡………ヴェレインか」
探は春樹の言う人物に察しがつく。
「はあ………、結局こうなることはお見通しってわけか」
特訓をしたとしてもゼロワンの実力差を読んでいたヴェレインにため息をついた。
「おい。なんだこれ、消えかかってるぞ」
春樹がゼロワンを指さすと彼の身体が黒い粒子と共に消失しかけていた。
「どうなってんだ。お前何かやったのか」
「俺はなんもしてない、ただお前を助けようと魔力を溜めて狙撃しただけだ」
探が春樹を疑うが彼自身は否定する。
「これが人工魔法使いであることの性だ」
隠れていた闘華が現れて言う。
「誰だお前」
春樹がいきなり現れた闘華を警戒する。
「この人の元仲間だよ」
探がゼロワンを指して言う。
「なんだよ、人工魔法使いって」
闘華は春樹に人工魔法使いとその研究所の話をした。
「冗談だろ、そんなめちゃくちゃなやつらがいるとか漫画かよ。笑えねえって、冗談は顔だけにしてくれよ」
春樹が馬鹿にしたように言うが闘華は真剣な顔を崩さない。
「えっと……冗談だろ?」
春樹は不安になり確認する。
「冗談に見えるか?そら、そろそろ消えるぞ」
闘華がゼロワンを示すと彼の身体は完全になくなってた。少しの間粒子が漂っていたがそれもすぐに消えてしまう。残ったのは魔導システムのデバイスだけだ。
「冗談だろ?これ……俺がやったのか?やっちまたったのか?」
春樹は不安になった。知り合いではないがまた人を殺めた、その事実が春樹に突きつけられる。
「関係ないよ、あんたがやらなくても俺がやったかもしれない。それに放置すれば街の人がやられていた、気にする方がだめだ」
探が励ますでもなく神妙な顔で言う。
「あ、ああ………。なあ、お前正義の味方やってんだろ」
「やってないよそんなこと。ただ魔法使いを狩ってるだけアンダーウィザーズをおびき出すために」
探が謙遜する。
「やってんだろ、現に今街の迷惑者だったこいつから街の人間達を守った。これが正義の味方じゃなくてなんなんだよ」
春樹がゼロワンを例にして言う。
「そんな大したことじゃないけど」
それでも探は謙遜するのだった。




