五話 探は幼馴染に復讐の話をする
決めた、兄さんの大学に行こう。そこに行けばもしかしたら文芸サークルのことを知ってる人がいるかもしれない。探はそう決心した。
だが今日はもう遅い、索の大学に行くのは明日になりそうだ。
「うーむ…………」
そしてその日、探は唸っていた。今は平日、学校の授業のため机に向かっている。向かってはいるが頭は黒板に向いていない。今すぐ索の大学に行きたいのだ。
キーンコーンカンコーン。授業の終わりが告げられ号令になる。だがその後も探はしかめっ面のままだ。
「ちょっと探、ねえ探ってば!」
女生徒が探を呼ぶ。
「さくら、いたのか」
探が女生徒、さくらの方を向く。
「いたのかって、さっきから呼んでたのにー」
さくらが文句を言う。
「ごめん、気づかなかった」
「もうお昼の時間だよ」
「そっか」
二人は弁当を取り出して食べ始める。
「やっぱり………お兄さんのことがショックだったの?」
さくらが遠慮がちに聞く。さくらは探の幼馴染だ。当然索の葬式にも出席していて事情は察していた。
「あ、いやそれは大丈夫。こっちの問題だからね、自分でどうにかするよ」
探はさくらを心配させまいと答えを出す。
「ほんとに?辛い時あったらいつでも相談乗ってもいいんだよ?」
さくらはなお探を心配する。
「ほんとに大丈夫だよ、兄さんの大学に行くだけだし」
「お兄さんの?どうしてそんなとこに?」
「犯人の手掛かりを追うため」
「もしかして、復讐?だめだよそんなこと!」
さくらが声を荒らげる。
「シッ!他の人見てるから」
探が嫌そうに一本指を立てる。
「ごめん。でもほんとに復讐とかするの?危なくない?」
「普通の人ならかなり危ないだろうね」
「ならどうして……」
「普通なら、ね」
探がもったいぶって言うとさくらが首を傾げる。
「どうやら兄さんを殺した犯人は普通にはない道具を使っていて兄さんもそれを持っていたらしい。俺は兄さんの遺品を使う、だから心配ないよ」
「でもお兄さんはその道具を使って殺されたんだよね、大丈夫?」
さくらの言葉で探の余裕が消えた。あれ、もしかして復讐、上手く行かないんじゃないか?そう思えてきたのだ。
「そ、それに兄さんの日記だって見つかってるんだ。俺に仇を討てってメッセージもついてる、なんとしてもやらないと………」
探は動揺しながらも食い下がる。
「うわ、心配だなあ………」
そんな探をさくらがジト目で見詰める。
「とにかく!これは俺の問題だから!心配ないから!ね?」
探は強く言う。
「わたしも行く!」
「は?」
さくらの言葉に探が惚ける。
「あなた一人じゃ心配だからわたしがついてってあげるって言ってるの」
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