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魔導奏者サグル  作者: 兵郎桜花
フェーズ3 吸血鬼ゼロワンあらわる

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三十七話 闘華対吸血鬼ゼロワン



「あいにく、そいつはわたしの獲物なんでな」


人影は吸血鬼の頭を掴み聖麗から離すと投げ飛ばした。吸血鬼はドーンと音を立てて近くのビルに当たった。


「お姉ちゃん!」


聖麗が人影を見て言う。オレンジのコートにショートパンツという派手な出で立ちは多少の光でも間違うことはない。


だが聖麗ならそんなものなくても気づいた。姉を溺愛する彼女が姉の姿を間違うことなどないのだ。


聖麗の姉、闘華は無言で吸血鬼を睨みつけている。


「いってぇ……」


吸血鬼は痛みに呻きながら立ち上がる。その際、パラパラと建物の破片が落ちた。


闘華を見ると目を見開く。


「あんたか、俺の邪魔すんなよ。俺との仲だろ」


これくらい好きにさせてくれと言わんばかりの態度だ。


「言っただろ、あれはわたしの獲物だと」


闘華は聖麗を顎で示した。


「それは悪いねぇ。じゃあ、横取りしちゃおうかなっ!」


吸血鬼は挨拶も早々に聖麗に向かっていく。


「ふっ」


闘華は拳を突き出し吸血鬼の顔に当てた。


「ぐえっ」


正面から打撃を受け、吸血鬼が転ぶ。


「相変わらず単調だなゼロワン、外に出てからまとも戦ってないと見える」


闘華が嘲るように言う。いや、半分呆れていた。この男、弱すぎると。


「施設最強と謳われたあんたにだけは言われたくないなぁ」


吸血鬼、ゼロワンが苦い顔をする。


「知り合い?」


二人の会話を聞いて聖麗が闘華に聞く。


「以前やりあった仲とだけ言っておこう」


闘華はすました顔で言う。


「やり……え?それって………」


聖麗は顔を赤らめてしまう。


「おい違うからな。あれは男でわたしは女だが違うからな?断じて恋人同士でも夜を共にした仲でもないからな?」


勘違いした聖麗に闘華は念を押して訂正する。


「やだなー、実際夜を共にしたじゃないかぁ」


今度はゼロワンが闘華の言葉を訂正する。


「いや、してない、断じてそんな真似してないぞ、してないからな!」


闘華は必死に否定する。


「そんなこと言わずにー、いけずだなー」


ゼロワンが闘華をからかう。


「しねえっ!」


ゴウッ!闘華の拳から魔力の拳が飛ぶ。バガーン!再びゼロワンが建物に激突して新たな穴を作った。


「げほっ、げほっ。また不意打ちかよ……」


ゼロワンが痛みに咳き込んだ。


「今度ふざけたことを言ってみろ、貴様の骨が粉々になるぞ」


闘華はドスを効かせて言った。あんな奇食悪い人間と一夜を共にするなど死んでもお断りという怒りがあった。


「いいねえ、その方がやりがいがあるよ」


ゼロワンは不気味な笑みを浮かべて飛び立つと上空から闘華を襲う。体当たりの猛攻に闘華が何度も転ぶ。


「お姉ちゃん!」


聖麗が彼女を心配して叫ぶ。


「狼狽えるな!今火が入ったところだ!」


闘華は聖麗の心配を制する。


「負け惜しみを言ったところで単調な能力しかないあんたじゃ俺には勝てないぜぇ」


ゼロワンが上空から嘲笑う。


「勝ち誇るならわたしの拳を食らってから言うんだな!」


闘華はゼロワンの攻撃を回避すると拳にエネルギーを溜めて同時に発射した。


「うわあああ!」


大量の拳にゼロワンは回避不能になる。


「もらった!」


衝撃に地面に落下したところを闘華が狙う。よろよろと立ち上がるゼロワンに正拳突きを見舞う。


「なにっ」


「だから単調て言ったんだよ」


だがその拳はゼロワンに回避され腕を掴まれてしまう。


「いただきます」


ゼロワンの牙が闘華の首を狙う。


「がっ」


牙が食い込み闘華の悲鳴が上がる。闘華の身体から魔力と血液が吸われ始める。


「ぐ、貴様離れろ!奇食悪いぞ!」


闘華はゼロワンを引き剥がそうとするが先ほどと違い取りづらくなっている。


このまま魔力と血液が吸われ続けるのも不快だ、闘華はそろそろ本気にならねばと感じつつあった。

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