三十六話 逃げた吸血鬼はさらに女性を襲う
吸血鬼は先ほどとは別の女性を見つけると勢いよく空中から降りた。
「きゃー!」
突然現れた吸血鬼に女性が悲鳴を上げる。
「血を寄越せー!」
一時も欲しい吸血鬼は脅かすこともなくいきなり女性の首に噛み付く。女性の血液が減っていくと共に吸血鬼が探から受けた傷が癒えていく。だが肉体の倦怠感はまだ残っていた。
血が出づらくなると吸血鬼は女性の身体を倒した。
「まだだ、まだ足りないー!」
吸血鬼は叫ぶと再び空に舞った。
☆
探は急いで吸血鬼を追った。だがその速さは探では中々追いつけないものだった。ゆえに大変なものを見ることになった。
先ほど吸血鬼が血液を吸った女性である。探は倒れた女性を見つけると声をかけた。
「大丈夫ですかお姉さん、俺の声が聞こえますか!」
返事がない。探は女性の首から垂れた血を見ると状況を察した。あいつ、なんてことをしたんだという怒りと共に自分が逃がしたせいでこうなったという苛立ちが沸き起こった。
イライラしてるだけでは解決にはならない、まずは救急車を呼んで彼女を治療してもらうことにした。被害者が増える前に急いでやつを捕まえねば。
☆
調辺聖麗はバイト帰りに夜道を歩いていた。魔力を感知し、警戒する。徐々にこちらに近づいている。
「血を寄越せー!」
魔力の正体が接近し、聖麗は横に回避する。
「魔法演奏!」
こちらに来たということは間違いなく敵だ。聖麗は魔法使いの姿になった。
「はあっ」
ピシン、パシンと光の弦を振るう。
「お前、魔法使いか。ならお前の血も寄越せー!」
吸血鬼は聖麗の魔力を感じると勢いを増して飛び上がった。
「な、なに?!」
聖麗はその勢いに驚いてなにもできない。
「きゃ」
声を上げて吸血鬼にのしかかられてしまう。
「あ」
ズブリ、吸血鬼の鋭い歯が聖麗に入った。そのまま血を吸われていく。
────なに?力が抜けて………。
聖麗はいきなり血を吸われてわけがわからなくなった。
「ぐ、離れて、離れなさい」
吸血鬼の頭を掴むが強い力で噛み付いていて中々離れない。その間にも聖麗の力は徐々に失われていく。やがて口を開く余裕もなくなり心の中で離れろと叫びながら吸血鬼の頭を離そうとするが無理だった。
やがて意識が遠のき助けて、お姉ちゃんと呼んだ時、新たな人影が現れた。




