三十五話 吸血鬼対探
「お前、魔法使いか」
吸血鬼が探を睨みつける。
「君の方こそ」
探がニヤリと笑みを返す。噂の吸血鬼が魔法使いと知って探は驚いた。
「なあ魔法使いよお、俺の食事がどんなに大事か分かるか、ああ?」
吸血鬼が唸ように言う。
「わかんないし、食事っていうか捕食だよねそれ。人間捕食しちゃだめでしょ」
探が眉を潜めて返す。本物の吸血鬼ならばそれは食事ととって間違いないが魔法使いなら女性の血を吸う行為は絶対必要なものではなかった。むしろ、己の快楽のために行ってるに過ぎないのだ。
「なにを言ってるんだ、俺は吸血鬼だぜ。吸血鬼が人間の血吸わないでどうすんだよ」
吸血鬼は探の言うことを聞くつもりはない。
「吸血鬼じゃなくて魔法使いでしょ、魔力出てるじゃん」
探は軽蔑の目を向けた。
「ちっ、バレたか。だがてめえがどう言おうと俺が吸血鬼なのはかわんねえし、血を吸うのをやめるつもりはねえよ。女の血ってのは美味いからな」
吸血鬼は揺らぎなく答えた。探はこいつ、懲りる気ないなと睨みつけた。
「その神聖な食事を邪魔するたあいい度胸だ。この落とし前はきっちりつけてもらうぜ!」
「と、飛んだー!?」
探が驚いて声を上げる。吸血鬼はなんとマントを翻して空を飛んだのだ。バサッバサッと音を立てコウモリのように飛んでいる。
「キエー!」
奇怪な音と共に探に迫ってくる。
「くっ」
探は空からの奇襲にはなれておらず、連続で体当たりを受けてしまう。反撃に銃を発射するが空を飛ぶ相手だけに狙いがブレてしまう。
「ああーもうっ」
弾丸が外れ苛立つ。
「ハハハハ!」
そんな探を嘲笑うように吸血鬼が飛び続ける。その間にも探に体当たりを仕掛けていく。
このまま手をこまねいてるわけにもいかない。探は検索能力を使い相手の速度、移動位置を計算する。
「そこ!」
「おっと!」
予測位置に向かって弾丸を発射、見事命中した。
「今だ!」
探はその隙に連続で弾丸を当てていく。バキュンバキュンバキュンと弾が当たるたび吸血鬼が悶えた。
「う、ぅぅ………」
やがて吸血鬼の息がか細くなる。ここまでくれば十分だ。探は銃にエネルギーを集中させた。それがいけなかった。吸血鬼はこれを機にマントを広げて飛び去ってしまったのだ。
「あ、ちょっと!」
探は呼びかけるがあの速さでは追いつけない。
「あー」
逃げられたショックで探は低い声を出した。




