三十四話 探、吸血鬼を探す
探はその夜早速家を抜け出した。それは吸血鬼を退治するのでもさくらを守るためでもなかった。吸血鬼という存在に個人的に見てみたいのだ。どうやらさくらの話で自身にも好奇心が湧いてしまったらしい。
「魔法演奏!」
探は魔法使いの姿になる。それだけではない、呼吸を整え、意識を集中させる。
「はあっ」
短く息を吐き出すと初期状態の緑の姿から赤と白の強化形態に変わる。
その能力を使い周辺の地図を視界に表示させる。地図の各所には生体反応が記されていた。地図を拡大すると夜も深くないためかせわしなく動いているものもある。
吸血鬼は屋外に出るという情報がある。ならば生体反応のある場所を一箇所一箇所探り、それが屋内にあるなら吸血鬼ではないし外にあっても直接人間か確認すればいいということである。
と、そこで探は人の気配を感じた。いけない、この格好を人に見られては目立ってしまう。探は建物の上を経由して移動することにした。どちらにせよ目撃者には不審がられたが彼自身は気づかなかった。
一時間近く辺りを探索したが吸血鬼らしき人物は現そうになく、いつごろ帰ろうかと悩んでいる時である。魔法使いの気配が現れた。隠すつもりもない強大な魔力、以前会ったゼロこと調辺闘華に匹敵していた。
急いでそこに向かうと息を飲んだ。探が見たのは吸血鬼らしき人物が今まさに女性の首を噛もうとしてる場面だったのだ。
「た、タイムタイム!」
何をしたらいいか分からず、仲のいい友人にかける言葉を投げてしまう。吸血鬼に人語が通じるかはわからないがそれを考えていては女性がやられてしまうだろう。
「ああ?」
吸血鬼が頭を上げる。探は自分の言葉が理解されたかわからないが反応があったことは気づいた。
吸血鬼は不機嫌になった。なんだこいつは、俺の食事を邪魔する気か。探に不審な目を向ける。
「えっと、日本語通じます?」
探は相手に言葉が通じるか直接聞いてみることにした。
「あ、はい」
返事をしたのは襲われそうになった女性の方だ。
「いや、あなたじゃなくて………あ、今の内に逃げた方がいいですよ」
探は期待と外れて驚いたが女性に避難を呼びかける。
「はい!」
女性が吸血鬼から離れる。
「逃げんなって」
吸血鬼が女性を追う。そこに探が立ち塞がった。
「させないよ」
「てめえ、邪魔すんな!」
吸血鬼が殴りかかる。
「ふっ」
探は吸血鬼の腕を弾き反撃する。吸血鬼が衝撃に後退する。




