三十一話 探は索の思い出の品を語る。
三人は二階の索の部屋に向かった。
「ここが、兄さんの部屋です」
探が扉を開けて聖羅を案内する。
「わあ、ここが男の子の部屋………」
聖羅がお初となる男の子の部屋に興奮する。
「探じゃなくてお兄さんの部屋だけどね」
さくらが聖羅に蔑むような目をした。とは言うがどちらにせよ聖羅にとって男子の部屋が初めてなのは変わりなかった。
中に入ると青い男性らしい色のチョイスのカーテンが招き入れた。そのカーテン達はさあ、主のいない部屋へようこそと言わんばかりに閉じられている。
「て、あれ………」
聖羅は拍子抜けした。次に彼女を招いたのは幾多にも重なったダンボール箱であったのだ。
ダンボール、それは商売の場所にあっては違和感がないが引っ越し前後でもない家庭に箱の姿で部屋の真ん中にあると違和感以外のなにものでもなかった。
「あー、兄さんのアパートから荷物持ってきてそのままだからね。しょうがないよ」
探が気まずく言った。
「じゃあ、その荷物の中にお兄さんの宝物があるのね」
「なんだけど………」
聖羅の言う通りそのダンボール箱には索の集めたゲームやCD、漫画、アニメグッズが眠っている。だが探が見せたのはそれではなかった。
探はポケットから魔導システムのデバイスを取り出して腕にはめた。
「魔法演奏!」
魔法陣を出してその姿を変えた。
「まずはこれ、魔法使いのブレスレット。兄さんの遺品の一つなんだけどこれ結構便利なんだよ。スマホなんかなくても色んなものが検索出来るしエロ動画もアニメもタダで見れるんだぜ、すごいだろ」
探がブレスレットを聖羅に見えるよう前に出して自慢した。
「え、エロ動画………」
その言葉を聞いて聖羅は苦い顔をした。女性が聞くにはよろしくない言葉である。
「ちょっと探!聖羅ちゃんにエロ動画とかなにいやらしいこと言ってんのよ!ちゃんと紹介出来るもの紹介してよ!」
いやらしい言葉を使った探にさくらが怒りをぶつける。
「ごめんごめん、じゃあこれにしよう」
探がダンボールから一つのノートを出した。
「それは?」
聖羅がノートについて聞く。
「兄さんの日記さ。これのおかげで、俺は兄さんの仇を討とうと思った。兄さんは得体の知れない敵に殺されたと思ってたけど、その正体を掴めた。だからその仇を追えたんだ。これはその証さ」
探が日記への思い入れを語る。
「これが、探くんの始まり………」
聖羅が緊張して日記を取る。ここら魔法使い探の戦いが始まったと思うと感慨深いものがある。
「いや、俺じゃなくて兄さんのね。あとこれ最後のやつ」
探が聖羅の間違いを訂正する。
聖羅がノートを開く。
「一月一日、今日は正月、久しぶりの実家で正月パーティだ。おせちも食べて腹いっぱいだ。お年玉のおかげで何もしないで五万も貰えたぜ。役得役得」
そして書かれてる文を読んだ。
「なにこれ……」
聖羅はその文に衝撃を受けた。索の仇を討つため手がかりがあると聞いたからその文があると思ったのだ。
「だから言っじゃん、日記だって」
あ然とする聖羅に探が言う。これは調査表ではなくあくまで私的な日記、ありきたりな日常の話が紛れていても問題はない。いや、ありきたりな日常こそがこの日記の大半を締めているのだ。
「探、そんなしょーもないものじゃなくてもっとましてなの紹介してあげなよ」
さくらが呆れて言う。
「へーい」
探が今度出したのは一つの映画パンフレットだった。
「これはマジシャンズレディユウカの映画パンフレット、兄さんと俺の好きなシリーズさ。公開当時は一緒に住んでなかったけど俺も兄さんもこの映画はちゃんと見たんだ」
探がパンフレットの説明をする。
「それ、子供向けアニメじゃなかったかしら?」
聖羅が苦笑いする。その瞬間、さくらがあ、やばいという顔をした。いけない、そのワードだけは言ってはいけないとその目が訴えた。
「分かってないなあ、聖羅さんは。この作品は十年も前からやってて今も不動の人気を誇るんだ、だからこうして映画も出来てる。若い人にも今の子供にも人気なんだ、それを子供向けアニメと一刀両断なんていただけないねえ」
探が聖羅に詰め寄って語り出す。
「いや、そんなつもりは………」
聖羅は慌てて否定する。
「いい?そもそもマジシャンズレディユウカは………」
だがそれは既に遅く、探がどんどん喋り出す。さくらはやれやれと首を振った。
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