二十四話 探の検索は人の記憶さえ写し出す
探はカッと目を見開いた。すると彼の検索で現れたいくつもの映像がゼロの前に出現していく。
「動画がいっぱい。なにこれ、映画館よりすごいよ!」
さくらが探の技に興奮する。
「ちょっと、なんでこんな映像があるのよ?!誰か撮ったの?!」
聖麗は出現した中に見られたら恥ずかしい映像もあり顔を赤くした。
「おい、なぜ泣いている?」
映像の中でゼロ、いや、闘華が聖麗に話しかける。二人とも今よりもずっと幼い姿をしていてそれが過去の映像であると示していた。
聖麗は今のクールな姿からは考えられない弱い姿だ。ゼロもまた、今の非情とはほど遠い優しい声をしている。
「斉藤くんと近藤くんがね………」
幼い聖麗が泣きながら答える。
「またあの二人か。何度やっても懲りないんだな………」
幼い闘華は嫌悪感と呆れを顔に出した。
「いいだろう、何度来ようがとっちめてやる」
勝気な顔で闘華が言う。
「聖麗ちゃんて、昔はいじめられっ子だったんだね」
映像を見てさくらが言う。
「やめて!こんな映像恥ずかしいから見ないで!」
聖麗は恥ずかしさから映像の前で手を振って他の人間に見られまいとした。
「お姉ちゃんお歌うたおー」
また別の映像では聖麗が闘華と歌を歌おうと誘っている。テレビの音楽番組を見ながらアイドルの真似をするのだ。
「いや、わたしは別にそういうのは………」
闘華は歌には興味になく、出来れば歌を歌うのは遠慮したかった。しかも振り付けまで真似るなど恥ずかしい、そういう年代である。
「いいから歌おうよー」
「おい、引っ張るなって」
だが聖麗にはそんな事情など関係ない、闘華の腕を取って強引にテレビの前に立たせた。
こうなっては不承不承闘華も歌わざるを得ない、むっつり顔ではあるもののきっちり画面のアイドルに合わせて歌っていた。
「聖麗ちゃん可愛いー!あれ、AKBだよね?聖麗ちゃんてAKB派なの?」
映像を見てさくらが興奮する。やはりアイドルに憧れる幼子というのはいつ見ても愛らしいものである。
「あー!やめてー!あんなのあたし一番恥ずかしいから見ないでー!」
恥ずかしさが尋常じゃなくなった聖麗は頭を抱えて地面をのたうち回った。幼い頃の記憶、それは他人から見れば可愛いかもしれないが本人からしたら飛んだ黒歴史である。見せられたものではない、むしろ見るなである。
「あれは……わたし、なのか?いや、やはりあいつはわたしの………いや、わたしに妹なんていない、いるはずないんだ!」
聖麗が過去の映像に恥ずかしがる中、ゼロもまた混乱していた。自分にはないはずの記憶、妹の存在、だが目の前の映像はそれがお前のものだと訴えかけるのだ。
わけがわからない、これが正しいと思って暮らしてきたのに突然こんなものを見せられてそれも正しいと思えてしまう。どちらが本当なのか分からなくなった。
「闘華、いつも聖麗を助けてくれてありがとな」
また別の映像では二人の父親が闘華に話しかけていた。この家ではたまに言われる姉という立場への親からの感謝の言葉だ。
「当たり前だ、わたしは聖麗のお姉ちゃんなんだからな」
幼い闘華が笑って言う。彼女にとって妹の世話をすることは特別なことでもないしお礼を言われることでもない。だがこうして面と向かって言われるのは誇らしいことだった。
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