十六話 探は魔法使いを狙う
「今日もいつものあれ、頼むよ。なあ?」
男子学生が慣れたように集団で一人の男子学生に詰め寄る。
言うまでもない、これは恐喝だ。彼らはこのひ弱な学生を狙い毎日のように金を脅し取っていた。
「おい、どうした?早く出せよ!」
集団の一人が怒鳴る。この時のひ弱な彼はいつもと様子が違ったのだ。
「い、いいいつもの俺と同じだと思ったら大間違いだからな!」
ひ弱な彼はブローチような石のはまった機械を作動させる。すると魔法陣が現れ彼の姿が変わった。
「なんじゃこりゃあ!?」
「ば、ばけものぉっ?!」
集団の学生が怯える。その姿は全身黒づくめで虫の触手のような凹凸が全身にあり、頭には蚊をモチーフにした被り物、背中には透明な羽根があった。
「ふん!」
蚊の魔法使いは集団の一人に針を突き刺した。
「なんだ?力が抜けて………」
彼が痛みの次に受けたのは強烈な脱力感だった。針の一撃は刺した相手から生命力を奪うのだ。
魔法使いが針を抜き、学生が血を流して倒れる。
魔法使いは残った学生に歩を進める。
「ひぃ!」
「に、逃げろー!」
学生達が恐れを成して逃げていく。
「待て!」
魔法使いは羽根を広げ空から学生達を追う。ブーンという羽音まで蚊そっくりである。
「うわあ!」
魔法使いはバサっと学生にのしかかった。倒れた学生の首を掴み首元に針を突きつける。その間に他の学生は一目散に彼を放置して逃げ出していた。
「やめろ、やめてくれ!俺達が悪かった、俺達が悪かったから!」
学生が魔法使いに命乞いする。
「もう許さない。今まで俺が受けた痛みや屈辱はこんなもんじゃ治まらない!」
魔法使いが叫びさらに針を相手の首に近づける。
「ひ、ひい………… 」
学生は今にも泣きそうになる。
バキュンバキュン!そこにエネルギーの弾丸が飛んで魔法使いに当たった。
「今日の一人目、発見と」
探が蚊の魔法使いに銃を向けていた。
「なんだお前?俺の邪魔する気か?」
蚊の魔法使いが言う。
「その人から手を離しな、出ないともっと撃つよ」
探が警告する。
「撃てるものなら撃ってみろ!」
蚊の魔法使いが学生を探の前に出す。
「撃たないでくれ、頼む!」
学生が怯えた表情で探に言う。
「バーン」
「うわぁ!」
弾丸は屈折し、学生を見事にかわして蚊の魔法使いの腕に当たった。
痛みで蚊の魔法使いは学生を離し、腕を抑える。
「さ、逃げるなら今の内だよ」
探に言われ学生が逃げていく。
「お前、よくも俺の邪魔を」
蚊の魔法使いが恨めしく探を睨む。
「君がどういう気持ちで彼らを狙ったかは知らない。けど、今は倒させてもらうよ」
探が剣を両手に蚊の魔法使いを襲う。X字に二撃食らわせるとそれを起点に連続で斬りつけていく。
蚊の魔法使いが針のついた腕を突いてくる。
探はその腕を狙い剣を振るう。ガキン!という音がして蚊の魔法使いが針のついた腕を抑えながら後退する。
さらに追撃を加えようとした時だ。
バキュンバキュン!
上空から炎の弾丸が飛んできて距離を取った。
探がその方向を見ると火の鳥が人型をしたような魔法使いが現れた。
「新手?」
「あなたですか、近頃現れた魔法使い狩りというのは。困るんですよ、そんなことされたら我々の商売があがったりです」
火の鳥の魔法使いが探に言う。
「その声、魔導システムをくれた人!」
蚊の魔法使いが叫ぶ。火の鳥の魔法使いは仮面を被っていて顔で正体を判別出来ないのだ。
「お行きなさい、ここはわたしが助けてあげましょう」
「ありがとうございます!」
火の鳥の魔法使いに言われ蚊の方がここから立ち去る。
「やっと出てきてくれたね、魔導システムの商人さん」
探が言う。
「なるほど、このためにわざわざ魔法使いを狙っていた。わたしはまんまとあぶりだされたわけですか」
「そういう、こと」
「既に魔法使いであるあなたが何の用です?よりよい型のシステムをご所望ですか?」
「たくさんの人に魔導システムを配って人殺しをさせるあんた達を潰しに来た」
「これはまだ物騒なものいいだ。だが勘違いしてもらっては困るな、結果論として殺戮が起きているが我々の目的は決して殺戮などという血なまぐさいものではない。我々はもっと崇高な目的があるのです」
「崇高な目的?」
「人間は魔法使いになることで新たな境地に進化出来る。各魔法使い固有の能力を伸ばすことでより活性化したデータを得られる。我々は人類の進化のために働いてるのです」
「そのために罪のない、いやあったとしても大勢の人を犠牲にするのか!」
探が言い返す。
「物事には犠牲が付き物だ」
「どうやら言っても聞かないようだね」
「元より聞いてくれるとは思っていないがね」
話は平行線、もはや話など不要となった二人の魔法使いが剣を向け合い睨み合う。
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