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黒腕クリスマス特別編 雪降る聖夜の人助け2

「おやおや、勇二君に未希さんは随分と賑やかなお友達を連れてきてくれたようですね」

そんな声とともに現れたのは壮年の女性。

目元は優しげに細められており穏やかな雰囲気を感じさせる女性だった。

「あ、園長先生!」

「こんにちわ!宣言通り、友達を連れてきました!」

未希と勇二はそう言って女性のもとに駆けよる。

どうやら、この目の前にいる女性が勇二達の言う園長先生らしい。

「はいはい、分かりましたよ。あなたが朝日君ですね?二人がいつもお世話になっているようで。今日はよろしくお願いしますね」

園長先生はニコリと微笑みかけてくる。

「…えっと、自分も二人には世話になっていますんでお気になさらず。それと、こちらこそ今日はよろしくお願いします。」

そう言って朝日は礼儀よくお辞儀をする。勿論、横目で二人を睨み付けるのも忘れない。

(一体どういうことか、あとで話をじっくり聞かせてもらおうじゃないか。うん?)

(ははは、えっとお手柔らかに)

「さて、それじゃあ外も冷えますし入りましょうか。園児たちも中で待っていますしね」

勇二と朝日がアイコンタクトで会話をしていると園長はそう言って保育園の玄関に行き中に入る。

朝日達も一度顔を見合わせ、その後に続き保育園の中に入っていった。

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「えんちょーせんせー、おかえりなさーい!」

保育園に入って案内されたホールでは数十人の性別、年齢がバラバラの園児達がいた。

園児達はそれぞれ園長先生の姿を確認すると、みんな一目散にそこに集まり始めた。

「はい、ただいま帰りましたよ」

園長先生はそう言いながら園児のもとに歩み寄っていく

「あれ?ゆうじにいちゃんだー!」

「みきおねぇちゃんもいるよ?」

「あのおにいちゃん、おかおがこわーい!」

すると三人に気づいたのか、園児達が三人に対してそれぞれ反応を起こす。最後のは朝日に向けられたものだ。

勇二と未希は外套を脱ぎながらここぞとばかりに朝日をいじっている。

「ほら怖いって、その仏頂面をどうにかしたら?」

「…るせぇ」

「もしかして朝日、地味に傷ついてる?」

三人もそんな感じでしゃべり始めたところで園長先生が手をパンッパンッ、と叩きその場にいる全員の視線を集める。

「えー、皆さん。今日はなんと勇二お兄さんと未希姉さん、そしてそのお友達の朝日お兄さんが遊びに来てくれました!」

園長先生がそう言うと園児たちからは拍手の喝采が起こる。

「それでは皆さん、今日遊んでくださるお兄さんたちに挨拶しましょう!せーの!」

「おにいさん、おねぇさん、きょうは、よろしくおねがいします!」

若干、というかかなりバラバラだが園児達が一生懸命挨拶をしてきた。

「はい、よくできましたね。それでは先生は今からお買い物に行ってきます、このお兄さんたちと仲良くしてくださいね」

どうやら自分達が呼ばれたのは留守番をするためだったらしい。

だったら自分が来る必要はなかったんじゃないかと思い至り、勇二のほうにジト目を向けるが、当の勇二は肩をすくめるのみだ。

「へ?先生どこかに出かけるんですか?」

未希が園長先生に聞き返す。どうやら聞いていなかったようだ。

「ええ、少しだけね。戻ってくるまで園児たちをお願いしますね」

そう言って園長先生は外套を着こみ玄関まで歩いていく。

「せんせーいってらっしゃーい!」

そうして保育園には園長先生を見送る園児たちの声が響き渡った。

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ー勇二の場合ー

園長先生がいなくなった後、話し合いによって勇二達はそれぞれ三人に分かれて園児たちのお世話をすることに決まった。

話し合いの途中で朝日が猛抗議したのだが結局それはうやむやにされた。

「ゆうじにぃ!あそんであそんで!」

実のところ勇二と未希はこの保育園を出てからもちょくちょく遊びに来ていたのでここの園児に結構懐かれていたりする。

そんな勇二のもとには沢山の少年たちが集まっていた。

「はいはい、それじゃあ何しよっか?」

なるべく園児たちと視線が近くなるようにしゃがみ込む勇二。

「はい!おにごっこしたい!」

どうやらこの少年は鬼ごっこをご所望のようだ。

「じゃあ鬼は僕がやるよ。皆! 逃げろ逃げろー!」

そんなことを言いながら園児たちに聞こえる声で十数える勇二。もちろん手加減はするつもりである。

「…九、十!よーし、皆行くよー!」

こうして勇二と園児たちの鬼ごっこが始まった。

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ー未希の場合ー

「それでね、たかしくんがね、あのね」

「みきおねぇちゃん、わたしのはなしもきいてー!」

少年達と遊んでいる勇二とは対照的に未希は沢山の少女たちに囲まれていた。

誰がカッコいいだとか、誰が好きだとか、やはり少女とは幼くとも恋に生き物なのかもしれない。

しかし、そうなれば当然少しませた女の子もいるわけで...

「ねぇねぇ、みきおねぇちゃん」

「うん?なぁに?」

「ゆうじおにいちゃんとはおつきあいしてないの?」

「っ!?」

少女の言葉に思わず驚き戸惑う未希。

「え、えっと、なにをいってるのかなぁ?」

「だって、えんちょーせんせいが『ゆうじおにいちゃんはどんかんだから、みきおねぇちゃんはくろうする』っていってたよ」

「え、園長先生、こんな小さな女の子に何てこと教えてるんですか…」

(っていうか、園長先生にまでバレてたんだ…)

未希は園長先生に対して戦慄を覚えつつも園児の質問をはぐらかすのに苦心するのだった。

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ー朝日の場合ー

「……この場合俺はどうすればいいんだ」

朝日は今困り果てていた。

三人で別れて園児の世話をすることになったのはいいものの、誰一人として朝日のもとに来る者はいなかったのだ。

重苦しい溜息を一つ吐いてホールの隅に移動しようとした朝日だが、そこで問題が起きた。

誰も自分の付近にはいないと思い込んでいた矢先に服の端を引っ張るものが現れたのだ。

それはどこか暗い印象を持った。

片手で大きなピンクのぬいぐるみを抱きしめながら朝日の顔を見上げている。

「…どうかしたか?」

痺れを切らして朝日が声を掛ければ、少女はビクッ、と肩を震わせ首を横に振る。

「なら離してくれないか?」と朝日が言えば少女は再び首を横に振り拒否の意志を唱える。

「………だから、この状況は俺はどうしたらいいんだよ」

思わずそう呟かずにはいられない朝日なのであった。


to be continued...

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