黒腕クリスマス特別編 雪降る聖夜の人助け1
黒腕特別編ついに投稿です!
これはまだ朝日達が異世界ザナンに転生する前の出来事。
クリスマスの日の出来事である。
「ぐぬ、寒いなこんちくしょう」
布団の中で丸まって寝ていた朝日は、起きて開口一言目にそう言った。
そして部屋のカーテンを開け、外の光景を見て絶句する。
「うげっ、雪積もってやがる」
その眼下に広がっているのはあたり一面の白銀の世界だった。
「こんなに積もったのって一体何年ぶりだよ…って、ん?」
そうひとりごちた朝日は窓からのぞいた景色の中に見覚えのある二人組の姿を見つけた。
「あいつら、こんな朝早くに何しに来やがったんだ?」
そんなことを言いつつ、朝日は簡単に支度を済ませ外套を羽織って外に出た。
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「あっ!朝日、こっちこっちー!」
そう言って手招きしているのは親友の勇二とその幼馴染の未希だ。
朝日は一度心底憂鬱そうな溜息を吐きながらも二人のもとに歩み寄る。
「お前ら、こんな朝早くにどうしたんだよ」
「うん?雪が積もったから遊びに来ただけだよ?あと今日はクリスマスだしね」
朝日が眉をひそめてそう言えば勇二は悪びれもせずにそうかえした。
「なんじゃそりゃ…」
朝日は呆れてため息をつく。
「朝日、ため息ばっかついてると幸せが逃げるよー?」
「もし逃げていたとしたら、それは紛れもなくお前らのせいだっつーの」
未希がそう言えば朝日はどこか疲れた様子で小さくつぶやく。
「それより朝日」
「あ?」
「実は面白いことがあるんだけど」
勇二がそう言って取り出したのは一枚のチラシだった。
「あの、駅の近くにある保育園あるよね?」
「ああ、あったなそんなもん」
「実は僕と未希がそこの卒業生?でさ。そこの園長先生から今日だけ子供たちと遊んでくれないかってお願いされたんだよね」
そこまで聞いた朝日はだんだんこの後の展開が読めてきた。
「もちろん朝日も一緒に来るよね?」
「はぁ、やっぱりか。まあいい、それじゃあお前ら楽しんでこ「よし、善は急げだレッツゴー!」っおい!俺を巻き込むな!」
そこまで聞いて家に引き返そうとした朝日だが、勇二に腕を捕まれ引きずるように連行される。
「大丈夫、大丈夫。お駄賃なら園長先生がくれるって言ってたから!」
「だから俺は関係ないだろうが…」
「まぁまぁ、そんなこと言わずに。さぁさぁ、抵抗してないで早くいくよ」
「おい、未希。さっさと勇二を止めろ」
「人助けモードの勇二を止めるなんて私に無理だよー。もう諦めちゃえば?」
確かにそうだ。
言われてみればこの男は人助けに関しては絶対に妥協することはないのだ。
こうなった勇二を止めることができないのもすでに周知のことだった。
朝日は少し疲れたようなため息を吐き、おとなしく連行されることを決めたのだった。
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ついたそこは普通の保育園だった。
「ほら、ついたよ朝日」
「はぁ、結局きちまった…」
朝日はそう言ってうんざりしたような声をあげながら目の前の建物を見上げる。
「なんというか普通の保育園だな」
「それはそうだよ。朝日はいったいどんなのを想像してたのさ」
そう聞かれて朝日は少し考え込むそぶりを見せる。
(勇二のような問題児を育て、未希のような抜けた天然を育てたところだからな。とんでもないものを想像していたんだが…予想が外れたな)
「うん、何考えてるかわかんないけど、馬鹿にされてることだけはわかるよ」
「私もなんか被害受けてる気がする」
「いや、別にそんなことはないぞ?多分…」
「多分てなに!?」
「おやおや、勇二君に未希さんは随分と賑やかなお友達を連れてきてくれたようですね」
朝日達が保育園の前で騒いでいると不意に声が聞こえた。
その方向を見るとそこには壮年の女性が立っていた。
to be continued...
これからの特別篇は恐らくこちらに投稿することになると思います。
これからも黒腕本編及び、心労の神狼をよろしくお願いします。