デッサン人形のこと。
デッサン人形。
一言で言えば、「デッサンに用いる人体模型(?)」のことである。私が初めてデッサン人形を買ったのは、百円ショップの「ダイソー」だった。木製でお値段三百円(本体価格)。
こんなもん買うのは初めてなので、舞い上がって名前もつけた。当時ハマっていた「銀魂」から名前を拝借して「保里 権蔵」(分かる人いるかな~?)。
人形の台座に『保里 権蔵(38) 会社員。妻光子(37) 娘真由(6)と共に都内に在住』とか簡単な設定まで書いた。
が、使えない。そも腕と足がほんのちょっとしか曲がらない。台座に細い鉄の棒で固定されてるので、いつでも立ったままである。関節を無理に曲げようとすると、『きゅいっ』ってイヤな音がする。ほどなく権蔵さんは机の引き出しにお蔵入りになった。
次にデッサン人形にお目見えしたのは、権蔵さんの悲劇から数年後。今度は文具屋(画材屋にあらず)での対面だった。見た目権蔵さんとそっくりだが、お値段は三千円(だったと思う)。
これはいけるのか……? お値段権蔵さんの十倍あるし、こっちは使えるかも……。
という希望的観測のもと、私はこいつを購入した。駄目だった。関節の動きが(というか、動きのなさが)まんま権蔵さんなのだ。台座から外せないし、やっぱり棒立ちである。
使えねぇえええぇーーっ! ていうか何のためのこのお値段! 三百円なら許せたけど、三千円ってCDアルバム一枚まるまる買えるじゃん! あーもう!!
と私の心情は荒れ狂い、名前もつけぬまま人形は部屋のオブジェと化した(権蔵さんと同じく、お蔵入りはもったいなかった)。今は十字型のミニパズル(自作エッセイ『パズルにハマる。』に登場)を抱えて、ひっそりと部屋に住んでいる。
さて、ここからが本題である(前置きが長い)。
そんなこんなで『そういやまともなデッサン人形、持ってないな……』とふと思った私は、アマゾンで検索をかけてみた。すると、『ポーズスケルトン』という代物がヒットした。見た目はまんまガイコツ。そして小さい(十センチ以下)。
気になってちょっと調べてみると、小物をあしらった楽しそうな画像が出るわ出るわ。ちゃぶ台でお酒片手にご機嫌の図。台所でチャーハン炒めてる画像。犬(これも骨)を散歩させてるシーン。ガイコツのくせになんか可愛い。そして多彩な動き! 台座もないのに自立可能!
これはいいんじゃないの? と思った私は、すぐにアマゾンで『ポーズスケルトン ヒト』と『オオキイヒト』を注文した。もとが七百円ちょいで、今はセールで五六〇円前後になってるのもありがたかった(他の使えそうなアクションフィギュア(?)は軽く三千円以上した)。
数日後、彼らは梱包されてやってきた。封をといた私は、まず軽くびっくり。小さいのにリアル! 権蔵さんとは比べものにならん!
パッケージを開けて少し動かしてみた私は、すっかり満足した。
(そうか、こういうのを本当の『デッサン人形』というんだな)。
何より台座がなくて、座らせるのも寝かせるのも自由自在。私はひとしきり彼らにポーズをとらせ、軽くデッサンをした。画力が足りないのは否めないが、彼らはとても良い仕事をしてくれた。
すっかり気に入った私は、もう一カップルずつ購入しようと、パソコンを立ち上げた。が、駄目だった。人気商品なのだろう、画面には『ご購入はお一人様一つずつ』の旨の表示が……。
あきらめきれない私は、地元のスーパーセンターのおもちゃ屋に行ってみた。だが「取り扱いしておりません」と断られ、すごすご帰宅。その点はちょっと惜しかった。
まあそんな訳で、今現在私の部屋には、小さいガイコツ二体がちんまり住んでいる。彼らカップルは部屋のすみで、パッケージに包まれながら、今日も出番を待っている。
(了)
いかがでしたでしょうか……? ちなみに、その後楽天で『ポーズスケルトン』を注文し、もう一カップル家に届きました! 現在、彼ら二組のカップルに名前をつけるかどうか思案中です。良い案がおありの方、いらっしゃいましたらお教えくださいw