92、川原のボスは小さかった
今日はあまり長い時間ログインしているつもりはない。
明日も仕事があるし今日も仕事帰りだから。
今すぐは解体しないけれど次の街に向かう道中のモンスターは集めておこうか。
何が出るのか分からないとどう解体していくのか、次の講義用の題材に出来るのか、という判断が出来ない。
一応、事前に調べたので出現するだろうモンスターは把握している。
今回はなんとスライムを除けばファンタジーらしいモンスター、ゴブリンさんが出てくるそうです!
川という水場が近いからか、近くに食料となる魚やカニ、林に入れば植物の類があるからか、集落が存在するようです。
集落にポップ地点があり、そこからゴブリンさんが出てくる模様。
性格は珍しいことに温厚で何もしなければ襲われることはないとのこと。
衣は知らないけど食は満たされているから?たぶん住は満たされているだろう。
ただし1度でもゴブリンさんを殺した人には集団で襲い続けるらしい。
ゴブリンさんには知人ネットワークでもあるのかな……?
私よりも社交能力が高いなんてことないですよね……?
とにかくゴブリンさんは恨みを忘れません。
ゴブリンさんの襲撃方法は罠を使い、遠距離から攻撃したり、魔法で攻撃したり、他のモンスターをけしかけたり……。
なんだか私と似てます……。
いえ、下手したら上位互換かもしれない。
武器の性能がいい分私の方が上だと思いたい!
あ、でもプレイヤーと違って人数制限なしだ……。
け、経験なら私の方が上のはず!
ま、まぁ、ゴブリンさんは倒すと危険。
倒したら防御力が高くならないと通れなくなる。
防御力を装備頼りにしていた場合ゴブリンさんの数により耐久値を減らされるので素の防御力が高くならないといけない。
私はこの制服を壊されるのは嫌ですよ!
ちなみにゴブリンさん1人ずつに名前があるそうで倒すと大量の討伐アチーブメントを稼げる。
ただゴブリンさん1人1人は弱いのであまり特殊なアチーブメントは稼げない。
つまり特殊なクラスアップが出来ない。
初期の大部分のプレイヤーはここでアチーブメントを稼いでしまったためにノーマルのクラスアップしかできなかったという。
アチーブメントの内訳が重要なんて情報は確認されるまで時間がかかったもの。
クラスアップの出来るレベルへの上限引き上げのメンテナンスまでゲームオープン初日から1ヶ月近く間あったから多くの人が引っかかったらしい。
酔狂な趣味プレイヤー以外は全員ノーマルのクラスアップだったみたい。
美味い話には裏がある……。
このゲームは近道っていう言葉はないんだね……。
川では一部が溜め池と化していて、カニが川原に比べて巨大化しているらしい。
他にもイモリのような両生類が居たり、カエルのような両生類が居たりするという。
巨大化しているヤゴも、その成虫の巨大化し3mを超えるトンボもいるという。
溜め池の中央の1番深いところには巨大な主がいるらしい。
まぁ、主は私には関係ないか。
水生モンスターを調べているらしい人がいるのか、wikiでは非戦闘系のモンスターなどのデータもあった。
水底に生える苔などを主食にしていると思われる巨大化した小エビや小魚、貝類。
巨大化している時点で小エビも小魚もないだろうなんて言わない。
現実での生物に当てはめただけだから。
水生植物についてもまとめられていた。
どうやら食材として使うらしい。
前のフィールドが露店会場になっているのは近くに食材として利用しやすい物が多いからでもあるんでしょうね。
敵が弱すぎて営業に支障が出ないというところも大きいだろうけど。
その敵はほとんどそのまま調理してしまえるし。
私はようやくこの制服の感覚にも慣れて走る程度の運動が出来るようになっていた。
さすがに戦闘をしたり、隠密行動をしようというのにまともに運動出来ないようでは論外だ。
そんな状態でまともに戦える程このゲームは甘くない。
店からは歩いて、街に出たら小走りして、川原に出たら足下の石が崩れないように気を払いながら走った。
川原は非常に走りにくい。
1つ1つの石の粒がテン子の足と同じ程度12㎝弱と大きく、足を引っ掛ける場所に事欠かない。
足下で地下の石が砕けるのか、体重をかけると沈み込むことがある。
露店会場になっているため人も多い。
視界も悪く足下の確認も難しい。
足場を見ないことには石の角度などを目測できないのでこけてしまうだろう。
必然的に走る速度は遅い。
川原は非常に走りにくい!
いろいろと物を考えているうちに川原の端に着いた。
私の目の前には円陣がある。
ここのボスはまだ倒していなかったんです。
倒さないことには次のフィールドに進めないんですよね〜……。
また巨大化していませんよね?
供物となる川の水をインベントリから取り出しながら思う。
ここのボスは巨大化されると魔法使いがいないと倒せない気がする。
ここのボスは普通、5m程のカニだから。
そのサイズでも甲殻の厚さが10㎝弱ある。
武器のクローの刃渡を考えると甲殻を切り開くのはギリギリのラインだろう。
もしまた30mクラスに巨大化されたら武器の刃渡が甲殻の厚さを下回りダメージを与えることが困難になるだろう。
魔法を使ってエラの辺りで火を燃やし酸素不足に追い込む以外に勝機はあるだろうか?
いや、まぁ、さすがにボスがそう何度も巨大化することはないでしょ!
え?もうイモムシ、クモ、ウシと3回巨大化しているって?
2度あることは3度あるとはいうけどさすがに4回目はない!
巨大化する確率なんて統計上小数点以下何桁というパーセンテージしかない!
3回遭遇している時点で小数点以下何十桁というレベルなんだよ?
4回目はあるわけがないじゃないか!
ないったらないの!
フラグは立たないで!
今回のパーティーは分厚い甲殻をクローで切り裂いた後柔らかい身を壊してもらう一団です。
攻撃力より攻撃回数と攻撃を回避するすばやさが重要なので、ぬこにゃん、からすみです。
いぬくんがボスのところに出勤しているので今回はパーティーが3人になります。
4人目は選ぶとしたらねずみんでしょうか?
攻撃回数や回避能力はともかく攻撃出来る深さが足りないでしょうし選ぶのはなかなか難しいです。
さてと全員の様子も確認した、忘れ物はない、準備オーケー。いざ、出陣!
供物を円陣に振りまき私達は円陣の中へと足を運んだ。
いつもと違い今回円陣が作り出したのは水の膜のようだ。
川原だからこの演出なのだろうか?
もし特別な意味があるなら困るなぁ。
水の膜は外側に向かって弾けるように消えた。
そして目の前にいるカニ……
……。なんですか。これ。
目の前には黒い岩があった。
火山の近くで固まった溶岩のようなゴツゴツした黒い岩。
玄武岩だっただろうか?そんな色調、質感だ。
1つ1つは1mくらいの大きさだ。しかしそれは見渡す限りにある。
そして遠く離れた場所には黒い岩山が見えた。
遠近感から考えると一軒家と同じサイズだろうか?
よかった、小さい。
……小さいのか?
それよりも問題です。
この小さい?黒い岩は何でしょうか。
ちなみに1つ1つ動いていますね。
黒い岩は横長で忙しなく動き回っています。
だいたい徒歩よりも速い程度の速度で周囲を闊歩しています。
現実を見ましょうか。
答えは少し成長して親カニと似た姿になった子ガニの大群です。
控えめにみても数百は超えているでしょう。
カニの産卵って数百個程度のわけがないですよね。
ありがとうございました。
これはどうしたらいいのさっ!
私に何の恨みがあるのさっ!