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88、ボスはどこにいるでしょう?

 デートですか。

 今回は何を目的としたデートなんでしょうか?

 皆目見当がつかない。

 ツナさんがいたあの場で詳しい話を聞くのは気まずいので止めたのですが、何の予定があるんでしょうかね?


 人に誘われると裏を疑うのは私の底意地が悪いからかな。

 私が人を誘おうと思ったらいつも何か目的があるだろうし。

 こういう部分がボッチになる原因なんでしょうね。

 人は自分の鏡なり。反省しないと。


 それにしても定期公演化か……。

 話す内容を作る時間があるので大丈夫だと思いますが、なかなか大変だなぁ。

 何を伝えていくか。

 いや、とりあえず伝える内容自体は同じでいいか。

 伝える内容を変える意味がない。

 何を目的かにしていることを考えれば伝える内容を変える意味がない。

 内容は変えずに使う題材を変えていくこと。

 そう考えれば何を探せばいいか決めやすい。


 目的が変わってから、講義が十分浸透して役割を全うしたら、伝える内容を変えればいい。

 役割から内容を考えればきっとすぐ思いつくさ。


 とりあえず頑張ろう!


~~~~~~~~~~~~~~~


 ログイン、ギルドに挨拶、返答に温かい気持ちになり、今日も知らない間に入っていた力が抜けてテン子ちゃんモードに切り替わる。


 幼女アバターに合わせた行動をとろうとして、中身おっさん主張のためそういった行動とろうとして、いろいろ混ざった結果がテン子ちゃんモードなんでしょうね……。


 つまりどこを向いているのかわからない行動です。

 あまりよくないですね。

 作っている幼女と思われるのはいいのですけど、根が幼女と扱われるのは違う。

 そう思って行動していたはずなんですけど、この頃幼女がおっさんと言い張っています的な扱いになっている気がする。

 面倒なことにならないといいんですが。


 徒然と歩き、とりあえず職場となる場所へと向かう。

 ただ歩くだけでも力加減が難し過ぎる。

 これで走るにはまだまだわれにくんふーがたりぬ……。


 唐突に得てしまった力のせいで簡単に飛び上がりかけてしまう体に苦労しながら歩いていると、スマホが震えてチャットにコメントが来た。

 スマホを操作するとボスからのチャットだ。

 ……普段と同じくらいの感覚で操作しているのによく壊れたりしないなぁ……いや、さすがにスマホが壊れたらゲームが成り立たなくなるか。絶対不壊スマホさん。現実にほしい……。

 私はスマホを落としたりはしないけど、電車に乗っていると女子高生とか特に、画面がひび割れていたりする。あれ、なんで直しにいかないのだろう……?

 リンゴのスマホは防水機能がないし、けっこう怖いんだよね。

 他社製のスマホだとお風呂の中で使えるとか聞いてけっこううらやましく思ったりしてる。

 

「やっほー?テン子ちゃん、こんばんはー」

「こんばんはです、ボス」

「今大丈夫~?」

「大丈夫ですよ」

「そかそか、じゃあ、【もふもふ】に来て!

 あ、ちなみに【もふもふ】はテン子ちゃんが働くお店のことね」

「了解です、ちょうど向かっているところでした」

「お、気合入ってるね!じゃあ、待ってるよ!」

「まだ走れるほど慣れてないのでしばしお待ちを」

「うんうん、着ているんだね!」

「はい、着ています!」

「そかそか!」

「はい!」


 体に余計な力をいれない。

 背筋を伸ばし、目線をまっすぐ前に向ける。

 腕と合わせて尻尾を緩やかに左右に振ることで歩く時のバランスを上手くとる。

 腕と尻尾を組み合わせることでそれぞれの振れ幅を狭くすることが出来、結果歩調を速くできる。

 人を避けて歩くことは体のバランスをとる練習にちょうどいい。

 視界は広く保ち不意に出てくる人たちを察知することに労力を割く。


 下手な動き方をすれば衣装に対して悪いです。

 だらしない動き方は様になる人もいるけれど、基本的に見苦しい。

 まして軍服風の制服なのだ。

 颯爽とした動きでなければ格好が悪いというもの。


 それに……この制服を着るのは私が最初だ。

 宣伝頭として舞台に立つのは私なのだ。

 この制服に対するイメージは私が背負うものであり、この背中を目指す者を増やすか減らすかも私のイメージが決めてしまうのだ。

 悪印象を覚えられては困るのだ。


 肩肘張るのは少し違う。

 ただメリハリをつけるだけだ。

 失礼がないように。相手を心配させないように。


 大分、体の動かし方に慣れたのか、そこまで意識しなくてもきれいに歩けるようになれた気がする。


 歓楽街に入ると紅い毛が見えた気がした。

 ボスが出迎えにでも来ていたのだろうか?

 その方向に目を向けると、そんな紅い毛の持ち主はいなかった。

 気のせいだったのだろうか?

 どこからか見られている気がするけれど、そんないつものこと、気にする必要はないだろう。


 歓楽街に入ると人の込み具合が段違い。

 先ほどは人が疎らだったから人を避けることを考えて動いていた。

 今回は人の波に乗ることをしなければならない。


 歩く速度を周囲の人と合わせる。

 速度がずれれば前後の人とぶつかってしまう。

 ぶつかってしまえばメガネや帽子といった小物が落ちてしまう。

 急ぐ人は屋根の上を跳ねていくのだけど、私にはまだそんな技能は使えない。

 お店の建物の周囲は宣伝や客引きがいるため、時折立ち止まる人がいる。

 道の真ん中は安定した速度で人が流れていく。

 奥へと行くほど高レベルの装備をまとった人が流れていく気がする。


 そんなことは置いといて歩いていくのはなかなか困難だったものの、ようやく【もふもふ】がある建物へたどり着けた。

 建物の前にたどり着くと見覚えのある紅い毛が見えた。

 私は少し小走りになって、力加減間違えて、ずさーっとこけた。

 私にはまだ走るのは早かった。

 ちなみに紅い毛の人はボスではなかった。

 紅い毛の人は狐人種の女の人でした。

 尻尾の形が大分違う。

 オオカミの尻尾はこうシュッと細長くて、キツネの尻尾は先が少し太くて先っぽの色が白いんです。

 人相も違いますし、本当に恥ずかしい。

 ダブルで恥ずかしい。


 紅い狐人種の女の人に頭を撫でられ「大丈夫?」など声をかけられ「大丈夫です、ありがとうございました」などと返し、周囲の方々に心配されながら、エレベーターによろよろと入ると昇るの舵を回し【もふもふ】のある階へと移動した。

 極力弱い力で回したため舵が壊れるなんてことはなかった。

 そんな壊すなんてミスしないよ。


 エレベーターを降りるとそこはモフモフの楽園だった。


 視界にはモフモフのクッションの山。

 他に何があるのかまるでわからない。

 これは何なんだろうか。

 床には、いぬ、ねこ、とら、うさぎなどのモフモフした動物を模したクッションが散らばっていた。


 モフモフしたクッションの山の中、見覚えのある紅い細長い尻尾が1本ゆらゆらとくねっていた。


 あれはボス今度こそ間違いないはず……!

 私はもう間違えないんだ……!


 私はゆっくりとクッションの山へと歩み寄るとモフモフしたクッションに手をかけた。

 クッションは手に持つとけっこうずっしりした感触がした。

 中身がたくさん詰まったいいクッションだ。

 現実で買ったらけっこういい値段がするんじゃないだろうか?何万とか。

 クッションを両手でゆっくりと持ち上げて傍へと静かに置いた。


 別にボスの寝顔が見れるかな?なんて思っていませんよ?


 十数分前とはいえさっき連絡とりあったばかりじゃないですか。

 きっと起きていますよ。

 えぇ、きっと起きていますよ。

 ……えぇ、きっと……。


 どきどきする胸を抑えつつ私はゆっくりゆっくりクッションを除けていった。

 1つ1つ丁寧に。

 クッションの山が崩れないように上から順に。

 こっそりと。


 クッションを避けていくと今までのクッションと違う材質の素材が見えた。

 きっとボスの衣服だろう。

 私はより丁寧にクッションを避けていった。

 ゆっくりと。


 見えていく衣服の感じからそろそろきっと顔が見えるはず。

 ボスの呼吸音が聞こえる気がします。

 音はスー……スー……と聞こえる気がします。

 私は音をたてないように唾を飲むと最後のクッションを取り除けた。


 そこには人形の顔がありました。


 私は思わずぽけっと口を開けて間抜けな顔をさらした。


「てーん子ちゃん!」


 その声に思わず私は後ろを振り向くと背中からギュッと抱きしめられた。

 驚きを隠せず体が強張らせてしまった。

 おずおずと顔を横に向けると人形のお面を横にかけたボスのイタズラっぽい顔がありました。


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