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84、おいしいお肉を考えたら

「ありがとうございます」

「僕のところにはいろいろ生産に必要な道具そろっているから気軽においでよ」

「はい。訪れさせてもらいます」


 何かツナさんの言葉が続くかと思い少し見ていた。


「ツナさん、とうもろこし1つくださいー!」


 ツナさんが何か困ったような顔をしていた時そんな声が聞こえた。


「今行くよ!……ごめんね、お客さん来ちゃった」

「いえいえ、お客様の方が重要ですから。では行ってきてください」


 お祭り装束みたいなツナさんに私は手を振り挨拶をした。

 ツナさんも私に手を振りかえし、お客さんの方へ移動した。


 私もピュアちゃんとヘビくんを洗わなきゃ。


 川原に近い部分の浅い水辺に入ると、ピュアちゃんとヘビくんの上にちょろちょろとゆっくり川の水をかけていく。四万十川みたいに、透明で不純物が全く見えない、きれいな水だ。

 気もちいいのか、ピュアちゃんは体を弛緩させ平たくし、ヘビくんは目を細めてじっとしている。

 水で軽く濡らしたピュアちゃんとヘビくんの体を手のひらでさすり、表面についていた粘着物を洗い落としていると、ピュアちゃんは体をごろっと転がらせ、ひっくり返ってみたり、ヘビくんは洗っている間腕に絡みついて来たりと甘えてきた。途中、何度かうしくんが鼻先で背中を突いてくる。

 手が離せないので、うしくんのことを待たせていたら、徐々にこめられる力が強くなってきた。かまってちゃんめ。

 軽くうしくんの頬を掻いてあげると目を細めて気持ちよさそうな顔をしていた。


 ピュアちゃんとヘビくんの体を洗ってあげると、だいたいHPが回復してきた。

 今日はボスウシあと3体くらい倒したら寝ようかな。


 ふと周囲を見渡すとけっこうな数の人に生暖かい目で見られてた。

 この行動子供過ぎたのだろうか……。

 私は見ていた人たちに対し軽く頭を下げてその場を去った。


 マスコミの視聴率獲得のためのABCだったかな。Aが動物(Animal)、Bが美人(Beauty)、Cが子供(Child)

 似た意味だと広告の3B、動物(Beast)美人(Beauty)赤子(Baby)かな。

 注目率が高くなるから使い勝手がいいとかなんとか。

 AとCがいればそれは目を惹くよね。

 Bはたぶんない。現実ではともかくゲームでは普通の容貌のはずだもの。

 別に私がおかしな行動をしたわけじゃないよね。

 もともと注目されやすい特徴があっただけで。


 草原に入ってからうしくんに乗り移動しボスウシのところに向かう。

 やっぱりエンカウントがない。そしてうしくんの移動速度は遅い。

 移動の仕方が重要なのがよくわかる。


 移動中、撫ですぎてか、ヘビくんはうとうとしちゃっている。

 うしくんの背中で揺られているだけで何もしていない時間が長いのも問題だ。

 さっきのボス戦では荒い使い方をしてしまったし、クローの点検しようかな。


 クローは細長く加工された4本の黒い鉤爪が手甲に埋め込まれているものだ。

 正確には手の甲の所の装甲に平行に等間隔で埋め込まれている。

 手を外側に曲げられる構造だ。いぬくんが装備しても走れる構造である。

 防具としても使え、手のひらが空いているので別の武器を持つことも可能だろう。

 材料のレベルが高いので並大抵のことでは壊れないだろう。

 切り裂くことに特化している作りで、壁を登ることに使ったりしたら消耗が激しいだろう。


 低品質の革を取り出し、鉤爪についていた泥や脂を拭い取ると、鉤爪は黒く照り輝いた。

 売り物にならない品質でもこういうことには使えるか。

 泥や脂に汚れた革は……燃やしてしまおう。ゴミだもの。

 天然素材だから土に埋めても分解されるかな?いや一応防腐処理をしたのだ。

 いつかは分解されるとしても先は長いだろう。燃やすべきだな。


 クローを手入れしていると、うしくんが停まった。目的地に着いたようだ。

 このメンバーではもう経験値をとったことだろう。

 パーティーを変えよう。

 ……今日はもう早く寝たいし、いぬくんとねずみんに任せちゃおう。

 私のところのメインアタッカー達だもの。一瞬で仕留められるはず。


 ヘビくんとピュアちゃんをしまって、いぬくんとねずみんを呼び出した。

 うしくんはボスウシの行動封じのために必要になるからそのままで。

 ピュアちゃんがいないと内腿が擦れちゃうから騎乗するのは止め。

 いぬくんにクローを装備させるとボスのフィールドに入った。


 開幕すると脇を一陣の風が吹き抜けた。

 召喚酔い状態のボスウシ目がけてその黒い風は流れて行き、そして血の華を咲かせた。


 いぬくんが首筋を深く切り裂き、ボスウシの首筋から鮮血が吹き出したのだろう。

 ボスウシの血でフィールド上の草を紅く染め上げていく。

 ボスウシは一瞬唖然とした表情をすると、下手人であるいぬくんに向かって突進をしようとした。

 けれど、いぬくんはボスウシの右側になるように動き続け、ボスウシを挑発するように吠え立てる。

 ボスウシは突進出来ず、方向転換を繰り返すうちに足が震えだし、やがては倒れてしまった。

 いぬくんはボスウシをにらみつけたまま一定の距離を保っていた。


 後ろに立たない理由はきっと後ろ足による蹴りを警戒すること。

 側面に立つことで視界に入り続けること。

 流血による失血が一定の量になるまで気が抜けない。

 今はまだ生きている。最後の一撃には注意しないといけないのだ。


 いぬくんが手早く仕留めてくれました……。

 いや、実際にはまだボスウシは生きているのだけど。

 なんだろう。この瞬殺劇。


 ……きっと武器が強すぎるんだよ……。

 武器がなければこんな風に失血を狙うことはムリだもの。

 武器ありきの戦い方だから、なくなった時戦えるかといわれてみればムリに違いない。


 しばらくするとボスウシは1つ低い呻き声をあげると、お腹が動くのを止め、スマホにメールが届いた。



 さてと次はどうやればいいでしょうか。

 うしくんに揺られながらスマホで検索していると、失血死、牛で検索すると屠畜場の話が出てきた。


 興奮状態で倒してしまうと、筋肉が硬直してしまうし、うっ血して、不味い肉にしかならない。

 屠畜場では、電気ショックを与えて一瞬で気絶させた後失血させて、お肉にするのです。

 叩いたりすれば内出血で黒ずみが出来てペット用の食肉にしかならないみたい。

 興奮させる間もなく倒せないとおいしいお肉は入手できない。


 どうすれば開幕ですぐに倒せるだろうか。

 たぶん最速で倒せるのがさっきのいぬくんの方法だろう。

 あれでも5分近くかかってしまっている。


 近接職の皆さんなら開幕と同時に頭をはね飛ばすとか、頭を叩いて気絶させるとか出来そうです。

 後衛職でも何か出来そうです。

 そういうのは私には出来そうにないですね……。

 いい牛のお肉は買ったほうがよさそうですね。

 私の獲ったお肉は悪い例としたほうがよさそうです。


 となるとどうしよう……?

 ツナさんに相談してみようかな。人数分の解体前の牛を入手できないかって。

 それに解体に関してのレクチャーを考えると私だけじゃ大変だもの。

 4人以上になったら目が行き届かないし誰か巻き込まないとムリだ。

 それにそこまで私も解体には詳しくはない。

 せいぜいこれがこうできるかな?って考えてるだけに過ぎないもの。

 そういう発想がほしいから頼んでいるだと思うのだけど。


 解体における手順と倒す上での注意とかをあげていくのがベストだよね。

 手順を変えることで入手できる素材が変わることとかも伝えていくから、その点をもう少し詰めていこう。

 明日はもっといろいろ調べ事しないと。


 ウシを倒す意味がなくなっちゃったし、今日はもう帰ろう。

 使う分以上狩ってもしょうがない。

 売るのも解体してからじゃないと安いし、そんなに手が回ると思えない。


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