80、久々のサモンモンスター達の触れ合い
寒気があるので、体を温める料理を作ろう。
そこまで手をかける気力は今日は少ない。
ある程度食材をテーブルに出しておくと私は料理を開始した。
かぼちゃを切りスープ皿に入れ、かぼちゃの半分程度の高さになるまで水を入れ、ラップをかけて、500Wで7分くらいかけてチンをする。
その間に100gくらいのぶたひきにくを鍋で赤みがなくなるまで炒めて、150CCペットボトルの半分の水、お酒を香り付け程度、みりん、しょうゆ、めんつゆを大さじ1くらい入れ、中火で3分程煮詰める。
大さじ1くらいの水で溶いた片栗粉を加え、おもちを1つと納豆1パックを加え、鍋のふちがふつふつとしてきたら、いつの間にかチンが終わったスープ皿の中身を加え、弱火で3分程加熱し出来上がり。
お餅入り、ほくほくかぼちゃと納豆とひきにくのあんかけ!
お鍋からスープ皿によそいとり、こたつに入り、いただきます。
綿入りはんてんを羽織り、上も下も暖かくして、はしでごはんを食べる。
スマホにイヤホンをさして、音楽を聞く。
近くを走り抜ける車や騒ぐ人たち、一家団欒の談笑がない。
風の吹き抜ける音ばかり。
自身の空虚さを埋めるように音楽を聞く。
話さなくてもいい。
一緒に過ごす人が欲しい。
生活音が恋しくなってしまった。
体調が崩れた影響で人を恋しく思いすぎているようだ。
今日はご飯食べたらもう寝よう。
次の日、起きた時、寒気などなくなっていた。
私はまだまだ若い。
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その日の仕事が終わり、家で夕食を摂り、ログインしました。
チャットが届いています。
「テン子ちゃん、出来ることがあったらって言ってたよね?
教師やる気はない?」
ツナさんからでした。
「いいですよ。時間さえ合えば」
ギルドに挨拶を書き込むと、ツナさんから返事は返ってきた。
「ありがとう。助かった。じゃあ、いろいろ用意しておくね」
「いろいろ?」
「いろんな器具とか設備とか予告とかやっておくから、何か教材探してくれると助かるなぁ」
「期日はいつまでとかありますか?」
「次の次のログインする日かな?
次のログインの日にリハーサルとかやれるといいね」
「はい」
いや、はい。じゃないよ!
これって実質、今日、
よ、予定が詰まっていく……!
今回のお題は、生産者にとっての解体のメリットを伝えることだ。
解体の手順を変えることで、入手する素材を違ったものにする。
解体の際に手を加えることで、入手する素材の質を上げる。
とりあえずこの2つを意識した教材になるものを探さないと。
ATKが低い私が扱えるのは低レベル素材だけだ。
たぶん私が教えることになるのはカンスト生産者。
となると背伸びしてもあまりいいことはない。
ボロを見せて解体に対する意欲を失わせてしまってもいいことではない。
見せるべきポイントは決まっている。
私は私のできることをするだけだ。
私にはそこまで技術もないだろう。
基本的なことを丁寧にやる。
それ以外は考えない。
となると何を教材にするか。
私が安定してたくさん捕れるのは……スライム、カニ、トリ、ウサギ……少ない……。
攻撃力は足りるはずだからいろいろ単体なら狩れるだろう。
イヌとかだと囲まれたらビュンしてしまう。
お肉をとる普通の解体、塩を塗してハムにしたり、骨ごと調理してとか……。
血抜きしたお肉と血抜きしていないお肉の比較とか……。
あ、こんさんに頼めば香草とかもらえるかな?だとしたらコショウとか調味料の入手も出来るかも。
鳥の香草蒸しとかいろいろ出来るだろうし……。
普段使っていなさそうな部分の焼き鳥とかも出そうかな?新鮮なのは臭みが少ないから美味しく出来るはず。
調味料の分量がおかしくて不味くても、むしろ、最適な分量を見つけてみようという授業に出来るかも。
協賛はこんさんになりそう。ちゃんと頼みにいかないと。
過去に狩った分のお肉、あまり食べてないんだよね。
骨と皮は取り除いてあるから、解体の実演には使えないけど。
特にトリとウサギ、ウシはたくさん残ってる。
これらはバイトの時に使おうか。
食用としてあまりひかれること少ない方だから。
……ウサギは微妙かな?アメリカとかでもそこまで人気じゃないみたいだし。
ヨーロッパや中国の方は食用として見ることの方が多い。
日本は戦後の飢餓を体験した世代はあまり抵抗がないけれど、それ以降の世代は食用のお肉とは見ることできない、ペットとして見ることの方が多い。
どこかのまたぎ娘さんのサイトではウサギを解体したら炎上したらしい。
アイドルの女性がウサギを解体した、という発言でも荒れたらしい。
でもここの世界はゲームだ。
私にとっては1つの現実だが、世間的にはゲームだ。
ゲームの中でのことをとやかく言うな、でペットという意識は希薄になると思う。
ゲームの世界でなら、で大抵のことは軽視されるというのは微妙な気分になるけれど、今回のような場合は助かるかな。
忌避感が少ないことは選択肢を狭めなくて済むから。
スライムはまだ解体を選択したことないし、解体方法が思いつかないから、今回は使う予定なし。
カニは足だけならともかく、身を考えると泥吐きさせないと食べにくい。
やっぱりトリかウサギかな。
トリはまとまっていること少ないし、ウサギでいこうか。
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草原に出るとヘビちゃんとうしくんとピュアちゃんを私はサモンした。
ここ最近サモンモンスターと触れ合うことが出来なくて辛かったなぁ……。
うしくんの背にピュアちゃんとヘビちゃんを乗せ、私はピュアちゃんの上に座った。
ピュアちゃんを鞍代わりにして内もものずれを防ぐのだ。
うしくんにまたがると見晴らしがとてもよく、足を擦る草とは無縁になった。
ピュアちゃんがひんやりしていて気持ちがいい。
ヘビちゃんは腕をスルスルと登ると首に巻き付いた。
視界の隅にヘビちゃんの姿が映り、私がその体を軽く指で掻くと、ヘビちゃんは肩に頭を置いてしまった。
気分でうしくんに乗った私はうしくんに頼み、自由に歩いてもらった。
別にすぐ降りるのが嫌だったり、歩きたくなかったからじゃないからね?
うしくんに揺られて歩いて、タイかどこかの水牛乗りの気分を味わいたかったからね!
うしくんの歩みは遅かった。
しかし敵モンスターとの出会わなかった。
なにかコツがあるのだろうか?
うしくんの背中で、始め、私は背筋を伸ばし前方を見据えて警戒していたが、あまりに敵対するモンスターに出会わないのでうしくんの背中を撫でたり、ピュアちゃんとヘビちゃんにお肉あげたりしていた。
遠くを見ていると特徴的な姿が見えた。
太陽光を弾き、白くテカる、大きな人型の塊。
たぶん、あれは元サモナーの筋肉だ。
頼めば退いてもらえるだろうし、あそこにはウサギがいるだろう。
私はうしくんの進路をその白く光る塊の方向へ変えてもらった。