79、今日はゲームをお休みします。
チャットのやり取りの後、お餅を食べて眠りについた。
寝る前の炭水化物。すごく太りそうな予感がする。
朝起きるとちょっと寒気がした。
体調が少し崩れてるのかな。
体温計を手に取り、熱を測れば37.3度。
微熱だな。夜更かしのしすぎた。
風邪は万病のもと。
大事を取って休もうかな。
いや、この程度何もしなくても昔はどうってことなかった。
夜はちゃんと眠るようにすれば休まなくても問題ないはずだ。
今日はログインをしないでおこう。
ちゃんと眠れば私のことだからすぐ治る。
あ、そうだ、ゲームでも雇用主だから、ボスには一応連絡しておこう。
「少し具合が悪いので今日はログインは出来ません」
私は返信を待たずに仕事に出かけた。
体調の悪さは自覚しているから今日はいつもよりも慎重に行動しよう。
~~~~~~~~~~~~~~~~~
ダイブゲームだから目を酷使しているわけではない。
なので日差しが目に痛いなんてことは特になく、ただ精神的に疲れる。
体の体勢も楽な状態なので、体に凝りが出来るわけではない。
精神的に疲れてしまうのが私には重いのだろうか。
私には人に近づくのを少し避けてしまっている節がある。
そういう部分から治さないとボッチは治せないかなぁ。
近づいて不快な気分にさせてキモい奴扱いされるのが恐い、無難な対応をしないと悪い噂が流されてしまうのじゃないか、そう恐がってばかりだ。
私は職場に行く道を歩きながら駅から出てくる人たちを見ていた。
背筋を伸ばし、私は前を見ながら歩く。
下を見ない。それは根暗っぽいから。
上を見ない。足元がお留守になったらもし小さな子が来たとき蹴ってしまうかもしれないから。
人にぶつからないように1m以上の距離を取り続ける。
そうやって人を怖がってばかりいる。
相手がどういった目的で近づいてくるのか、そんなことの判断もつかない場合、何をすれば無難に対応出来るのかもわからず、頭の中が恐慌を起こしてしまう。
無難な対応をするのは人間関係において賢い対応だろう。
けれど私生活の空白を見ると分かる通り、それは人を遠回しに拒絶しているのと同じなのだ。
無難な対応、つまり保身に身を任せた自分本位の考え。
怖がる相手に、興味もそこまでない相手に、近づいてくれる人はいない。
ゲームの世界では多少特徴的だから、ボスみたいに近くに来てくれる人はいるかもしれない。
現実はそう甘いものじゃない。
だからボッチになりがちなのだろう。
私は、人恋しい、と体に訴えられてしまっている。
だから、現実で受け取った、チャットのコメント1つでここまで一喜一憂してしまうのだろう。
無難な対応では何も生まれない。
確かに争いは起こらない。
けれど人と仲良くなることもない。
私は職場に着きロッカーに荷物をしまう。
もし私だったらどうすれば喜んで対応できるだろうか?
適当に買い揃えた服。
少しは配色や形状など気にしてはいるものの、決まったブランドものではない。
ブランドってこういう製品を中心に出しています、という品質保証だから、別にそこまで気にする必要はないのだけど。
昔だったら、布の継ぎ目が荒い、壊れやすい、色落ちがひどい、なんていう悪いイメージが全般的にあって、そういうものとは私たちは無縁です。というイメージがブランドものにはあった。
今では、最低限の品質があるから、デザインさえ気に入ればどの製品を選んだところで関係ないのだ。
話のきっかけに出来そうなものは、話を続けられそうなものは、何かあるだろうか?
とりあえず、服のセンスや小物のセンスをつつく、とひどい目に合いそうな予感がすごくする。
たぶんある種の戦争が起きる。
日常生活をつつく。
……ゲームと掃除と料理と読書かな。
ゲームは話にのれる人が少なさそうだ。
私の好みがゲームの中でも時間のかかるRPGなので、身近な人はやろうとは思わない可能性が高い。
パズルやアクションのような類ならやっている人はいるかもしれない。
盤面をきれいにしたりするのは多少得意かもしれない。
でも戦略的なダメージ計算とか、何手までにどういう風な布陣に誘導するかとか、そういった計画を立てる能力が乏しいので、将棋とか非常に弱い。
一瞬はすごそうなんだけど、全然大したことのない、雑魚プレイヤーが私です。
日課の職場の私は掃除をしていく。
掃除。話を振っても、振られても、なんて答えればいいかわからない。
整理の仕方でも話せばいいのだろうか?
それにしたって、大きい物、丈夫な物を下に、小さい物、壊れやすい物を上にとか、棚の奥には普段使わない、大きい物、普段使う大きい物は端に寄せ、小さい物は手前に、壊れやすい物は中程の落ちにくい場所にとか。くらいですし。
料理は……人に出せるのはレシピを見て作った物くらいです。
自己流の料理は自分にしか食べさせる予定はありません。
私が美味しいと思う物は作れるけれど、練乳を美味しく飲める甘党過ぎる私の舌は信用できません。
塩味とか辛味とか苦味とか大の苦手なので、甘味以外は基本薄味になりがちだとかあります。
読書は……様々な本を読む乱読家ではあるものの、キャラクターに感情移入したりはない。
伏線の解説は出来ても、シナリオはよく把握していても、楽しみ方が根本的に人と違っていて、大多数の人と話が合わない。
人に合わせて作品をすすめることは出来ても、まず、そこまで関わることが出来ない!
そもそも私に似ている主人公の話なんてあるわけないじゃない。
似ていない主人公や他キャラクターにどうやって感情移入するの?
私みたいな主人公の話ってどうすれば話が進むの?
基本人と話さないよ?関係進展しないよ?
ちょい役に出てもメインや重要なサブキャラクターには到底なれないよ?
やはり出来る話がなさそうだ。
適当に相槌を打って、聞き役に徹するしか、私が現実で人と関わる手段はないのか。
話したい事は間口が狭い。
自分から人に関わっていかなければ、日常の空白は埋まらない。
ゲームでも人にチャットをしたことで会話といえるコメント群が出来た。
私が話したい話題だとかじゃなくていい。
とりあえず何か用件になりそうなことを関係する相手に聞いてみよう。
私なら意見を聞かれたらとりあえず何か応えるだろうし……。
無視されたら、相手に悪いし、その程度の事なら応えてもいいかな?、なんて考えて。
個人情報を聞かれる場合などは、何でそれをあなたに話さなくちゃいけないの?、だとか思う。
自分が聞かれたら身の危険を感じるような物には触れない。
掃除の仕方など、前後比較でどちらが使いやすいか、たずねたりしようかな?
今までは机には触らないようにしてた。
そういう部分も初めから触らないと決めずに人に聞けばよかったかな。
たぶん、触らないでほしいって人がほとんどだと思うけど。
机は人にとって自分の世界。なんて言いそうなくらいの領域だもの。
机の上に関して口出ししたら領域を失ったなんて思ってしまいそう。
人によっては他人に整理されたことで自分の居場所を失った気分になりそう。
……やはり不用心に掃除しようか?なんてたずねるべきじゃないかも。
たずねたらそこまで汚いかな?なんて不安になって、勢いでうなづいて後で後悔する、そんな人いそう。
掃除するとしても、相手にこれをこうしてもいいかな?とかたずねながらになるだろう。
相手が職場にいる時間だろうし、手が空いているとしたら休憩時間くらい……これはちょっと公開処刑状態かも。
この方面は考えないほうが正解だったか。
お客さんに対応しながらこの日何回目かの天気について話していた。
バリエーションがない。
冬の低い気温から関節についてふれていく。
肌の乾燥や喉の乾燥にも注意を促しながら話を済ませて私は見送った。
学術誌でとりあえず問題提起でもしてみるか。
新薬が来るとしたらどの分野になりそうかとか。
アルツハイマーなどの高齢者の病気に対する薬はある程度調べてはある。
他の病気などに対して出てきて欲しい薬の話も聞いたりしてみようか。
この話題なら新鮮な情報が出てくる度に話をふれるだろうか。
学術誌が出るタイミングで定期的に話をふれるだろう。
日常といえるくらいに習慣になればいいな。