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65、ギルドにいる濃い人たち1

「大丈夫です。少し道の整備など気になってました。特にお金の面です」

「あぁ、道ね!道はあるとないとじゃ時間が違うからちゃんと作ってるよ。

 ギルドクエストでポイント以外にお金も入ってきてるんだ。

 そこから出しているから大丈夫」

「ギルドクエストで稼いだお金は稼いだプレイヤーに還元されないんですか?」

「仲介費なのかな?依頼を受けたプレイヤーにクエストで表示された分と別枠であるんだ。

 難易度と数で評価されるのか10回達成して1回ギルドに報酬が来るっていう感じ。

 ギルド全体で達成した依頼数だから厳密に誰にどの程度払えばいいかわからないしギルド資金っていう形で扱うことに初めの頃に決めたんだ。

 この資金はギルドにとって利益が出る施設や設備の建築にしか使われないよ」

「ふーん」

「ま、具体例は1つ1つ今日見ていこう!」


 道なりに進むと光を反射し輝く泡の塊があった。


「……あれ何ですか?」

「近くで見てみよう。面白いよ」


 傍まで来ると1つ1つの泡の中に人が居た。

 音は聞こえないが、歌っていたり楽器で演奏しているような仕草をしている。

 泡の近くの道に1人の青毛のリス獣人が居た。


 青いリス……。現実じゃ考えられない色だなぁ。


「おはよう!ハッピー」

「フォロさん、おはようですー」


 ハッピー?というのがこの青いリスの人のアバター名なのかな?

 アバターは頭をリスにしているタイプだ。

 身長は私より少し高いくらいだから140㎝はないだろう。

 単色なので課金はしていない初期仕様だろう。

 白いラインが入ったらそれはそれでかわいいだろうなぁ。

 なんだか声がフワフワしていてユルユル。

 声の高さからして女性かな。

 目は細すぎてほとんど寝てるようにしか見えない。


「そちらの方はテン子ちゃんですねー。

 お初にお目にかかりますー。

 カラオケ屋兼演奏部門練習室バブルルームにようこそー」

「挨拶遅れました。私はテン子です。

 初めまして、ハッピーさん」

「いえいえー。では案内しますー」

「お願いします」


 私はハッピーさんの後ろを歩く。

 そこらの抱き枕より太くて柔らかさそうな、青くて先がくるんと巻いた尻尾が目の前に立っている。

 このアバターなら中に隠れられそうなぐらいの太さだ。

 すごくもふりたい。埋まりたい。

 確かこの太さのほとんどは毛なのだ。

 すごく柔らかいんだろうなぁ……。


「ここがカウンターですー。

 泡の空き情報などの管理はここでしてますねー。

 とりあえず1部屋借りますかー?

 下の所に料金が書いてあるので参考に見ていってくださいー」

「カラオケか!」

「ですよー。ちなみにこの費用は泡の技術費の返済に充てられていますー。

 ギルド費が少ししか下りなかったんですよー?

 ひどいですよー。フォロさんー」

「はいはい、そういう交渉はまた後で」

「ぶぅぶぅー」


 私たちはカラオケはせずに後を発つ。

 後ろで「冷やかし反対ー」なんて声が聞こえるけれどスルーした。


「演奏部門は集団での催し事の際BGMを担当してくれるところだね。

 ソロからオーケストラまで何でもだよ」

「ふーん。職業グループ活動のようなものかなぁ」

「だね。営利目的で演奏しに行く部門だから」

「なんだかあまり上手な人いなさそう」

「いや、結構上手な人多いよ。副業禁止だったり、住んでいる場所の近くに演奏できる場所がなかったりなんかで音楽活動を諦めた人とかいるから。

 現実では出来ないけどここでなら大したデメリットなく出来るもの。

 それにここでいくら歌ってものどは涸れない、演奏しても腕は疲れない。

 練習は時間の許す限り続けられるからね」

「なるほど」

「のどが壊れて少しの間しか歌えなくなった元プロだとか、事故で手足がまともに動かなくなって演奏できなくなった元プロとかそういうプレイヤーもここでならまた演奏出来るんだよ」

「……」


 ボスは少し悲しげに遠くを見つめていた。


 道なりに進んでいくと木工、皮細工、石工、鍛冶、道具作り、装備作り、武器作り、楽器作りといった寄り合いがあった。

 ボスは1つ1つ声をかけていき、私も彼らと顔を合わせた。

 クマ3人組はまだログインしていないようで顔を見なかった。


 各寄り合いは生産したプレイヤー名と生産品を掲示しこんなの売ってるよと示していた。

 とてもお金稼ぎに積極的なシステムです。

 ボスの性格がギルドに影響を及ぼしているのか、お金を稼がないと良いもの作れない仕組みが影響しているのかハングリーだ。

 個性の強い商品も多く見なければ分からないなんていう状態だ。


「料理部門はどこですか?」

「ふっふっふ」

「?」

「料理部門は町で喫茶やレストランを経営しているのだよ!」

「おぉー」

「見に行くかね?」

「はい。行ってみたいです」

「まぁ、その前にもう1つ重要な部門があるのでそっち先ね!」

「むぅー」

「じゃあ、商売部門にゴー!」

「おぉー」


 各寄り合いは円形を描いて並んでいてその中央にその部門はあった。


「はい。こちら商売部門。マネーです」


 ヒツジ度10%。金毛メガネの秘書風の女の人が目の前にいます。

 手首と足首にリングのようになっているふわふわした金色の毛。

 ふわふわとやわらかそうな金色の髪はボブカット。

 細い目は青く、垂れたヒツジ耳が少し雰囲気をやわらかくしている。

 耳に赤い宝石をつけたイヤリングをして、とても豊かな胸をお持ちです。


 母性的な容姿をしているのになんでこんなにも不安を覚えているのだろうか。

 眼鏡から見える細い目から言葉責めされそうな予感が漂うのは気のせいかなぁ……。


「マネーちゃん、出迎えご苦労ね。いつも可愛いよ」


 マネーさんは軽く頭を下げ、微笑み嬉しそうだ。


「ギルマスさん、そちらが件の?」

「そうだよ。我がギルドのマスコット、テン子ちゃんだよ」

「そうなんですね」


 私を見た目からマネーさんの表情が一瞬消えた。


 この人、やっぱり危ない人だろうか……?

 刹那のことだが気のせいだろうか……?


 不安を覚えたものの、私は会釈をした。


 問題発生。


 何をされるか想像出来ず怖かったのか、頭が言葉を出してくれません。

 具体的な危害の加え方が分かれば対処出来るんですが、分からないものは被害も想定できないので恐い。

 人間不信が一瞬の敵意に過剰反応しています。


「テン子ちゃん、緊張しちゃった?

 怖い人じゃないよ?」


 ボスが心配になったのか、軽く私の頭を撫でた。

 考えが煮詰まってたところに、予期していなかった人との接触。

 尻尾が急に立ち上がりました。


「ど、どうしたの?」


 何か言おうと思っても言葉が出ない。

 現状認識以外できない。

 考えられる言葉が本題にならない。


 それにしても尻尾ってこんな時に動くんだ。

 初めて動くのを感じられた。


 ってこんなこと考えているんじゃないです。


 何を話さないといけないんでしょうか?


「おーい?大丈夫?」

「毛が立ってますね」

「どうしたんだろ?」

「フォロさんどこ触ってんですか!」

「おっぱい」

「もう完全にフリーズしてるじゃないですか!」

「カッチコチだね!」

「大丈夫?」

「何あご裏撫でてるのさ」

「瞳孔が開いてます」

「この反応って見知らぬ土地に移動させられた猫と同じだねー」

「あ、持ち上げても体勢が変わりません」

「何小脇に抱えてるんだよ!」

「部屋に持ち帰ろうかと思って」

「今日、この子は私の物なの!」

「じゃあ、一緒に弄ります?」

「……ダメ!この子がいなくなりそうな気がする!」

「落とせばいいんです」

「落ちたらこの子が変になるからダメ!」

「えー?」

「そんな上目遣いしてもダメなものはダメ!」

「分かりました、ではフォロさんを落とします」

「落としちゃダメ!」

「えー?」

「それとテン子ちゃんはおじさんらしいですよ!」

「……大丈夫。アバターが女の子ならあたしはイケる!」

「い・く・な!」


「何やってるの姉さん」

「……お持ち帰り?」

「……元の場所に戻してきなさい」


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