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61、目指す場所

 ボスが夢中で草原を走っているのでスマホでいろいろ調べてみた。


 ソニックブームはマッハ1を超えると起こる。


 空気の移動速度は音速を超えられない。

 そのため音速を超えると前方の空気が押され密度が高まり壁になる。

 この壁を押して進めると左右に流れていく。

 左右に流れていった壁になるまで高まった密度の空気は波の如く広がりながら周囲にぶつかっていく。

 さらに音速を超えた物質の後方は急に物がなくなったため空気が流れ込む。

 結果周囲から空気がなくなり真空の波が押し寄せる。


 圧縮空気の波と真空の波が順繰りに襲ってくるのがソニックブーム。

 圧縮空気と真空がぶつかる時に爆音もしくは衝撃を感じる。

 ドン、ドンと2回程。


 今ボスが走っているけれどそんな衝撃を感じたり爆音を聞いていない。


 つまり音速超えてないじゃん。


「ボス」

「何?」

「音速超えたはずなのにソニックブーム起きてない。

 どっかで誤認識おきているよ?」

「え?」

「たぶん跳躍距離が30m届いてない。

 もしくは回転数が足りてないよ」

「嘘!」

「跳躍速度の時点で音速超えないとどうしたところで音速にならない」


 1秒に何歩進んでいるかなんて10超えた時点で数えられない。

 そんな動体視力よくない。

 速すぎてどこまで進んだかも正確に測れていない。

 仮に1秒に20歩進んでいるとしたら1歩にかかる時間は0.05秒。


 ストップウォッチで1秒など画面を見ないで測る遊びはしたことあるだろうか?

 この遊びで自分の時間感覚が正確かどうか試している。

 私は何回繰り返しても画面を見ずに1秒を正確に測れない。


 それでどうして正確に測れるというのだ。

 私とボス、お互いの感覚に依存する計測でしかない。


 空気抵抗を考えれば跳ぶ距離が短くなっている方か。

 いや足の回転数が下がっていても……うーん?

 ATKとDEFの関係からして足の回転数は変わっていない可能性が高いかな。

 まぁ、とりあえず計算してみよう。


「回転数が20だったら跳躍距離が20m届いてない。

 回転数が10だったら跳躍距離が30mでは音速届かないよ」


 そう私が口にするとボスが少し地団太を踏んだ。


「……く。そこまで言われたらソニックブーム起こすまでやってやろうじゃないか!」


 ボスに火が付いた。

 ただし今日はもう22時近くて眠い。


「すみません。明日に差支えが出そうなので私は今日ここまでです」

「ノウッ!」

「音速を安定して出せるようになったらソニックブーム聞いてみたいですね。

 ドン、ドンって音が2回聞こえるようですよ?」


 攻撃力を持つようだったら聞いた時点で私死んでいるかも。

 移動するだけで周囲で人が死ぬようになったら軽く兵器ですね。


「聞かせてみせるさ!このRSO廃神四天王が1人、瞬神のフォロの名に懸けて!」

「え?何それ?すごく倒されそう」

「盾男以外には勝ってるよ!」

「盾男?すみません、他プレイヤー情報詳しくないんです」


 基本ソロだし関わる機会がないというか……


「闘技場の廃神王、無敵の盾男さんですら知らないのか……。

 く、私の二つ名を知らなくてもしょうがないか」


 ボスがゲーム廃人なのはログイン時間の異常さからわかってた。

 でもそんなリングネームがあるんだねー。


「こんな身近に闘技場を見ていない人がいるとは気付かなかった……。不覚!」

「あ、話長くなりそうなのでまた今度聞かせてください」

「あ、うん。……引き留めてごめんね?おやすみー」

「おやすみなさい」


~~~~~~~~~~~~~~~~


 闘技場か。あまり興味なかったなぁ。私戦闘弱いし。


 確か次の町にあるんだったっけ?

 早めにいかないと。

 そこで魔法の威力を上げるテストがあるから。

 幻術スキルって魔法の威力を上げたところで何が変わるかわからないけど。


 次の町で魔法のテストあるはずだから魔法関係のイベントあるかも。

 からすみ達に魔法を覚えてもらうことできるかな?

 サモナー関係の情報がまるで入らないから本当によくわからないよ。


 ギルド長が闘技者ね。

 TOPが宣伝に立っていると考えると効果的なのかな?


 ギルドの技術力をアピールしつつ楽しめるだろう。

 潜在的な顧客層が闘技者と観客。

 商品使用の実演も出来る。コンバットプローブンだっけ?

 PVPだろうからネタ的要素も豊富。

 闘技場という場所自体がネタとなる動画の撮影にピッタリ。

 闘技場に基本常駐しているとなると生産が出来ないからギルドメンバーに頼むのは不都合。


 考えれば考えるほどギルドリーダーが闘技者であるメリットが思いつく。

 デメリットは何かあるだろうか?


 基本的にボスは仕組みを作り上げて各自自由に活動してもらっている。

 生産の素材集め、資金集めはプレイヤー自身に行ってもらっているので問題は少ない。

 部門リーダーは当番制で役目はギルド行事の連絡くらい。

 ボスはギルドメンバーの不和を気にするくらいで仕事自体は少ないと思う。

 このギルドは市場取引部門に素材を購入してもらうなどお金さえあれば出来ることが多い。

 ギルドのブランドを上げるために廃人ゲーマーのボスが宣伝に走るのは普通か。

 解体ギルドみたいにギルド間での約定締結みたいなこともしているみたい。


 ボスって普通に有能だ。


 生産はしていないと思うけど。


 ボスはいろいろなことをしている。

 リアクションが大きかったりコミュニケーション能力も高そう。

 私とまともに話が出来るほど柔軟性が高い時点でコミュニケーション能力高いか。


 ゲームの中とはいえここまで仕事が出来る人はすごい。

 ボスみたいな人になりたいなぁ。

 そしたらもっと自分に自信が持てるだろう。


 自分から行動し何もないところからギルドメンバーがえっと……、


 しばらく見てないうちに300人超えてるんだけど……、


 そんな巨大ギルドを作り上げてしまったんだ。


 ギルド作成時は私入れて2人だけだったのに……。


 仕組みがよかったのかな?

 宣伝がうまいからかな?

 それを思いついて行動しているボスが有能だったからか。


 あんなに人間らしい面を私に見せてくれている。

 気付けば近所の頼れるお姉さんと私は思っている気がする。

 誰か特定の人についてここまで深く関心を持つのは久しぶりだ。


 結局デメリットらしいデメリットが思いつかない。

 ボスが決済しなければいけない事案なんてあまりない。

 そんな仕組みになっているんだ。


 現実だったら、研究?自分の金でやれよ?無理だ!稼ぐ手段がない!、なんてことになっているだろう。

 だからお金を集金し助成金だしなんてことが起きて、会社全体で資金運用を考える必要が生まれる。

 そうなれば責任者が決済しなければいけない事案も増えて事務作業が増加。

 ボスが自由行動なんて事まず出来ない。


 ゲームだから出来た仕組みなんだろうなぁ。


 ギルドを運営することで動画やホームページで広告費を稼ぎ現金収入を得る。

 PVを増やしつつ自分のゲーム生活を充実させる。

 ゲームと生活を両立させることに特化したプレイヤー。


 なんとなくようつべやぬこ動の広告収入について調べたらPVの最低0.1%、ようつべ平均0.2%、ぬこ動平均0.3%程度の収入があるらしい。

 月に何本動画を投稿しているかわからないけれど定期的に動画を視聴しにくる層がかなり居るだろう。

 1本千円程度でも生活できるくらい投稿していそうだ。

 1本当たりの単価はもっと高い可能性がある。

 月何万じゃなくて何十万稼いでいるかもしれない。

 想像が多いけれどこのくらい稼いでいてもおかしくない。


 ボスがとてもすごいというのは確定だろう。


~~~~~~~~~~~


 帰り道つらつらと考えていたが自分がどうすればいいかは結局思いつかない。

 自分が目指すべき場所に歩んで行動できている人が身近にいる。

 私の目指すべき場所はどこだ。


 この日、日常雑事を終えるとベットの中で物思いに耽っていたが何も進展はなかった。


 思いついたのは、人間はなろうとしてなるのではなく目的を持って行動すればなれるかもしれない、ということだけ。


 具体性が欠片もない。

 私はどこを目指すべきだ。


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