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58、クモの生態

 ログインしました。時間は待ち合わせ3分前。


「お、来た、来たー」

「お待たせしましたか?」

「大丈夫、大丈夫。私もついさっき来たところだから」


 ボスの周りには背中を切り裂かれた1mサイズのハチが6匹。

 ボスは手でつかんでインベントリにしまっていく。


 ハチに襲われたらいぬくん以外対応できるメンバーが私のところにいないなぁ……。


「おし、じゃあ、森ボス戦対策立てようか」

「おぉー」


「今回は短期決戦でいこうと思うんだ」

「はい」

「私がぶすっとクモの背中を刺せば終わるんだけど狙う場所が難しいんだよね」

「イモムシで体験しました……」

「背筋をぶった切らないといつまでも動いているよ……。

 森で虫系モンスターの頭落としても動き続けていたのを初めて見たとき思わずGMコールしちゃった。

 そしたらなんていわれたと思う?

 仕様です。って言われたんだよ……。

 特別なアイテムがないと殺せないのかって聞いたら必要ないです。って返されるし」

「虫に関しては知識がないと倒すの難しいですよね……」

「林のイモムシは胴体が柔らかいからそこを切り裂いて頭落とせば自然と背筋も分断されるっていう寸法だったんだけど……テン子ちゃんはイレギュラー個体引いちゃったしね」

「調べる機会ができたのでよかったと思うことにしてます」

「真面目なのはいいけどほどほどにね?」

「?」


 意味が分からなかったのでクエスチョンマークを出してみたらボスに温かい目で見られた。

 私けっこう不真面目ですよ?


「そういえばテン子ちゃんってクモ、ダイジョブ?」

「平気ですよ、何度も言ってますがおっさんですから」


 なんかまたやさしい目をされた。

 ついでに頭撫でられた。


「私、本当におっさんですよ?」

「うんうん。おっさんだねー」


 やさしい目が止まらない。げせぬ。

 おっさんを撫ぜて楽しくはないだろうに。


 どうすればおっさんだと思ってくれるかは今はおいておこう。

 さっきの余韻かセクハラ方面しか思いつかない。


 セクハラで訴えられるのマジ怖い。

 冤罪でも世間的評価まで影響するから本当に怖い。


 高校の道徳の時間に『私は〇になりたい』を見た。

 本当にやっていなくても信じてもらえない恐怖はやばい。

 お金を払えば大事にはしないよ。とかやられているのマジ怖い。

 とりあえずつり革は両手でつかむ。

 近くにないときはスマホを両手でつかむ。

 痴漢が出来ないことを周囲に知らしめるようにとにかく全力回避に走る。


 セクハラはこわい。

 疑惑すらもたれるのは怖い。


「むすっとしないの。

 はいはい。テン子ちゃんはおっさんですねー」

「……」

「わざわざ三転リーダーをうたなくていいから~。

 はいはい。じゃ、話進めるよー」

「ふん」

「……アピールが激しいね。

 じゃ、気を取り直して攻略に向けて意見ありますか!」

「敵がクモなので視覚は移動するものに対して非常に敏感です。

 反対にあまり動きが遅いものは気づくことが難しいです」

「へぇ?で、それで?」

「私が幻術のスキルツリーを持っているのを覚えていますか?」

「そういえば持ってたね」

「私は動物などの幻影を被せたものを動かしてクモを囲みます」

「いいんじゃない?」

「クモって魔法スキル持ってますか?」

「森ボスとは短期決戦しかしてないから何とも言えないけど今まで見たことはないよ」

「なら幻影が破られる可能性は少ないですね」

「おぉー」

「クモは触覚に優れていて体毛で空気の流れなどを調べられるそうです。

 触覚が疑似的に聴覚を形成している模様です」

「ふむふむ?」

「なのでいぬくんやとりちゃんを騒がせます。

 聴覚封じと視覚封じは出来るように動けると思います。先生」

「そっかそっか。って先生ちゃうねん!」


 頭をこつんと叩かれた。


「クモって嗅覚がないか鈍いらしいですよ。

 他の虫が避けて通るトマトの匂いに気づかないくらい」

「あ、その話なんか知ってる」

「かがく〇とも、トマ〇のひみつっていう絵本で私知りましたよ」

「懐かしい……」

「なので嗅覚はもとよりあまり気にしなくても大丈夫だと思います」

「よく知ってるねー」

「調べましたから」


 火力が足りていない私が情報なしで戦闘始めるなんて怖いマネしたら即壊滅です。


「おっけおっけ。じゃあ突入しようか!」

「らじゃー」


 ねずみんをどこかに帰してボスのパーティーに加入。

 ボスが森ボスの召喚円に入ったので私も入り準備完了!


 私はスマホに浮かんだ参戦と書かれたポップをクリックしボス戦に突入した。


~~~~~~~~~~~~~


 ボス戦開始の火の幕のエフェクトが晴れるとそこには巨大なジョロウグモがいた。

 昔通っていた学校の体育館と同じくらいだろうか?

 60m×120mくらいだったっけ。

 イモムシが小さく見えるよ。


「テン子ちゃんってさ」


 ボスはチャットを使い音を出さないように話しかけてきた。


「なに?」


 私はいぬくんを走らせクモの足に向かわせた。

 クモの聴覚は触覚で作られている。

 つまり8本の脚がそれぞれ耳のようなものなのだ。

 地面を走る振動なども聞いているだろう。


「異常個体引き当てるの得意なの?」


 ボスは足音をたてずに走っていた。

 忍者のスキル、忍び足。

 振動の類も押し殺せるのかもしれない。


「あ、やっぱりあれは大きすぎるんですね」


 私は幻術スキルを使いクモの周辺に10mサイズの岩を乱立させていく。

 1回につき10個対象にしてCTは10秒。

 移動しないことでMP回復速度が上昇しているためこの作業だけならいつまでも続けられる。


「基本サイズはあれの4分の1もないから」

「事前に調べたデータでもコンテナか大型トラックサイズだなんて書いてありました」


 出していく岩は10mサイズで大きいように思えてもボスクモから見れば小石。

 パーティーメンバーにはこの石は半透明に見えるので幻影だと分かるので戦闘に支障は出ないはず。


「あれ、どうやって戦おうか」

「虫なので足だとか狙っても痛打になりえません。

 だから当初の予定通りボスが背筋の神経節を切り裂く以外道はないと思いますよ」


 それをすれば虫が相手なら確実に殺せるはずです。


「だよねー。それとあの白い塊って嫌な予感しかしないんだけど」


 ボスクモがお腹の下に置いているボスとほぼ同じサイズの白い塊。


「私もです。これ、卵のうにしか見えません」


 ネットで検索した際画像で確認したものと同じだろう。

 あの中には大量の子グモがいるらしい。


「子グモフラグか……。

 これは急がないと孵化してしまうかも」


 ジョロウクモは卵の状態で越冬するらしい。

 卵のうを作ったことで力尽きるもの、卵のうを守るかのように傍で巣を張るもの、放置してどこかに行ってしまうもの、産卵2回目に向けた行動に入るものなど卵のうを作った後のジョロウグモは自由に動く。

 ジョロウグモは気温10度を下回る程度でも生き残れるが冬を越せるものはほとんどいない。

 なので孵化する時既に親はいない。


「現実だったら子グモが孵化しませんって断言できるのですが今は何とも言えません」

「え、子グモ孵化しないかもしれないの!」

「ジョロウグモが孵化するの5月くらいです」

「となると回収できるアイテムフラグ!

 さっさと親グモ倒して回収しなくちゃ!

 卵のう壊すのはNGだよ!」

「私壊そうなんて思ってませんよ?」


 卵のうを守っているのか周囲を石が取り巻いていく様をボスグモは静観していた。

 いぬくんが走る音は聞こえているはずなのにそれすらも静観するボスグモ。


 動かれないのが1番何をしてくるか予想つかないので厄介。

 そろそろ石の森と呼べるほど幻影が積み重なってきた。

 視界が効かなくことだろう。

 ボスクモ退治いよいよ本格始動!





























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