55、このフィールドはどこのエロゲー?
「すごく……大きかったです」
「きもかったでしょ?」
「きもい以前に大きすぎてそれ以外何も思えませんでしたよ……。
あれは牛よりも戦闘が難しいです」
「嘘!?」
「20mサイズの芋虫なんて想像してませんよ」
「うわぁ……」
「5m程度だと思ってましたよ……」
「5mが基本サイズだよ……。
すごいの引き当てたね」
「え……」
「異常個体は確率としては5%くらいしか出会わないんだよ?」
「割と確率高い?」
「異常個体にもサイズ差があってね。
そのサイズによってドロするものが違うからおいしいよ。
ここのボスは人気がないから希少価値はかなり高いかな。
まぁ、認知度が0だから需要があるかはわからないけど」
「サイズによってドロする物が違うって……それはひどい」
「解体すれば割と入手できるからいつもとあまり変わらないよ。
ドロ選択すればそれはそれで特殊なものが出ることがあるらしいけどそれはもうゼロコンマ幾つだよ?っていうレベルだよ」
「森に来たけどどんな気分?」
「木が密になって見通しが利かず大変です」
ボスはどこか遠くの空を見るかのように天を仰いだ。
ずれた発言をしてしまったのだろうか……。
もしや、感慨などを聞きたかったのだろうか?
あまりそういうことは考えられないのだけど……。
「この辺りのモンスターは20レベル相当だけど特殊性を強めてステータスが下がっているの。
テン子ちゃんと相性がいいかも。
普通のプレイヤーだと搦め手が多くて相性はよくないんだけどね」
ボスは気を取り直して会話を続けた。
私もそれに乗っかり会話をする。
「搦め手そこまで好きじゃないですよ?」
「ステータスが下がっているからサモンモンスターでもダメージが通ると思うの。
搦め手だって奇襲特化が多いだけだよ。
毒や麻痺、触手、粘着糸、罠とか張られていて引っかかったら負けなんていうフィールドなの」
「躱すの大変そうですね……」
「サモンモンスター使って空中偵察出来るから大丈夫よ。
あまり空中に罠はないからね。
いぬくんも木から木へ跳ぶことで罠回避してたわ」
「ボスも?」
「忍者だもの。
壁走りだとか跳躍強化だとか特殊道具の使用制限が緩いだとかこの森くらいなら散歩も出来るわ」
「壁走り?」
「スキルのおかげで垂直面を走れるの。
さすがに天井は対象外だけど移動できない場所はほとんどないわ。
移動できない数少ない場所も特殊道具を使えば移動できるわ」
エロに対応できるようにとネットで調べたときに見つけたもの。
ジャンルを1つ1つ開いて確認してたのは気の迷いです。
気づけば二次元にまでいって……対〇忍。
男優が人間の男だと興奮できないなんて私の性質を知ってしまった……。
ちなみに攻め手が女の人、男の娘は可!
本格的に私の頭がいかれてた。
なんだろう、ボスが性的に食べられている光景が繰り広げられそうなフィールドです。
ちょうどあそこの人みたいに触手でつかまれてお持ち帰りされそう。
……。なんかアウトな光景が視界に入っていた気がするけれど気のせいだ。
きっと気のせいだ。
別に以前見たビキニアーマーの女の人が植物の蔓みたいなものでぐるぐる巻きされてお持ち帰りされているのは気のせいだ。
どことなく嬉しそうな若干野太い悲鳴を上げてたのは見間違いだ。
きっとそうだ。
あれの中身はマゾなおっさんなんだ。気にしないでいい。
「この辺りの罠の特徴を教えてもらえるとうれしいです」
「あそこまで見といてがんスルー!……げふん。
木にしがみつけばたいてい大丈夫!
ただしツタに注意!ツタの汁は麻痺させる性質があるから。
影を作ったり息を吹きかけたりすると囲まれてぐるぐるにされるからね。
火で焼き払ったりしようとすると周辺中から集まってきて危ないよ。
捕まると麻痺毒かけられた挙句袋に押し込められて液体をかけられてじわじわ溶かされるよ。
麻痺と触手の性能に特化したせいで溶解力は弱い。
でも弱いからこそひどい。
プレイヤーが強いとHPの減少速度は低くて装備だけが先に溶けてしまうの……」
「……」
二酸化炭素の感知と光反応性でプレイヤーを見つけるのはいいとしてだ。
麻痺させるということはコカインなどのアルカロイドの類。
幻覚とか見えるようになるんじゃないだろうか……。
いや、さすがにゲームだからプレイヤーにそんな幻覚を見させる機能はないだろう。
とりあえずそのエロ特化した性質はなんなんだ。
ただ1つこれは聞いておこう。
「ボスはひっかかったことありますか?」
「……数回。それもボス戦向かう途中で」
「おぅ……」
「本気で装備が壊されることだけは勘弁してほしい……。
お願いだから一思いに殺してくれ、く、殺せ!」
「」
ここはどこのエロゲーフィールドですか?
生でくっ殺聞くとは思いませんでした。
装備の入手難度考えると本当に悪魔の手だ。
私もくっ殺言うかもしれません。
「地面は割と注意が必要よ。
落ち葉のせいで何があるか見えないの。
足元が急になくなってもがけばもがくほど深く沈んでいく底なし沼もあるわ。
底なし沼には地虫がたくさんいるのか深く沈むと体中を噛まれるのよ……。
プレイヤーはともかく装備がまた死ぬの……。
ついでに沈むと出られなくなるので最後は窒息死」
窒息ってあまり苦しくはないらしいですね。
練炭自殺と似たようなもの?
でもやっぱり気になるのは。
「ちなみにひっかかったことは?」
「あるよ!こん畜生!
延々と皮膚を甘噛みされるくすぐったさに悶えながら窒息死したけど何か!」
「地面は危険ですね」
「そうだよ、危険だよ!
思わずくっ殺せ!って大声で叫んだよ!
パーティ全員一緒に沈んで自害もできない状態だったよ!
1人は底なし沼に魅了された変態になったよ!」
「なんてハードな……」
どM様が誕生したんだ。
「他に危険はありますか?」
「あとは蚊柱かな……。
蚊じゃないから厳密には違うのだと思うけど羽虫の巨大な集団。
あれは火の範囲攻撃で1撃すれば終わる。
だけど火を使えばツタがくる。
他の魔法だとか使っても効果が薄いから出会いたくないね」
「出会ったら?」
「逃げる。1匹1匹潰すのはいいけれどそんなことしてる間に囲まれて装備が死ぬ」
「……装備が死にやすいフィールドなんですね……」
「パーティーで挑んで罠にかかった人を救助しながら進むのがこのフィールドだね。
プレイヤー間の距離を開けて罠に同時にかからないように進むのが普通のプレイ。
即死はないから大丈夫とは言える。
同時にかかったら装備は確実に死ぬ。
プレイヤーは下手したら数十分間生きたまま」
「なぶり殺しですね」
「救出余地があるだけマシなんじゃないかな……。
2次災害が起こる可能性も高いけどね」
ここのフィールド作った人は誰なんだ。
林の手抜きさと比べて難易度がレベルが違う。
「テン子ちゃんはきっと躱せるから大丈夫だよ。
ここまでが掛かったら最後の、装備が死ぬ罠かな」
「私よく考えたらそれ怖くないです」
初期装備と装備なしがデフォルトなのだもの……。
クロー以外に装備なし!
「モンスターは毒蜘蛛、毒毛虫、毒サソリ、麻痺キノコ、麻痺ハチといった状態異常特化型。
状態異常特化はステータスが低いから倒しやすいと思うよ」
「倒しやすさがまるで感じられない……」
「木の枝、葉っぱ、落ち葉、石、木の実などに化ける擬態型。
移動速度は低いんだけど攻撃速度が高いんだよね。
少し防御と移動速度が下がった代りに威力も高くなってるよ。
見つけにくいからいつの間にか囲まれているなんてこともある。
いぬくんが手柄を立てたのはこの擬態型だよ」
「いぬくん。君に決めた!」
「テン子ちゃんが1番気を付けるのは捕食者型かな。
アシダカグモだとかハエトリグモだとかが2mサイズで闊歩してるから。
動きが速くて攻撃力が高い。
状態異常型が攻撃力を上げて出直してきたタイプ」
「ボス!サイズが大きくて普通に勝てる気がしません!」
「最後に森のボスだけどジョロウグモタイプね。
体が基本的に10mサイズ。
移動範囲が広くなるほどその粘着する糸が大量に飛んできて動けなくしてくるタイプ。
はっきり言って1人だと糸を躱すだけで精一杯。
糸が飛び散れば散るほど戦闘可能なエリアがなくなる。
壁になって動きを止めてくれる人がいなければまず勝てないかな」
「それ勝てるの?」
「戦闘時間が短ければ短いほど勝利出来る可能性が高いわ。
時間が経てばそれだけ糸が飛び散って移動できなくなる場所が増えるから」
いろいろ策を練っておかないと。
「壁期待しているわ!」
肉壁になった!