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51、ねずみんティーパーティー

 ログイン。挨拶。皮の確認。


 皮の表面の脂を包丁で削っていたため鞣し液に何度も漬ける必要があった。

 表面の毛が傷んできたのでこれ以上は諦めよう。

 これも売り物には出来そうにないなぁ……。

 NPC売りしておこうか。

 いや、いい部分だけ切り分けて使おう。


 とりあえず膠の様子はどうかな?

 冷えて固まっているといいなぁ。


 軒晒しされていた鍋の蓋を開けるときれいな3重層になっていた。

 1番上が脂、中間が膠、1番下が水と骨の層なのだろう。

 脂を調理スキルで呼び出したスープ皿に同じ方法で呼び出したスプーンで掻き出した。

 脂が出てきてはいるようだが薄い。

 膠分と比べるとかなり少ない。


 鳥の骨の成分を調べると無機物70%、コラーゲンつまり膠成分が20%、水10%程度らしい。

 油分はコラーゲンと混ざっていて分けられなかったのだろうか?

 分離にかかる時間を考えれば分ける気力もわかないかもしれない。


 脂だと思われる層と同じ要領で膠成分の層を掬い取る。

 これを乾燥させると保存用の膠が完成。

 とりあえず木の棒にスープ皿に入っている膠を少量つけて砂まぶそう。

 皮の脂を削り落とす用なのでそこまでヤスリに強度はいらない。

 ダイヤモンドの粉だとか砥石の粉とか特別な物は使う気はない。

 脂でぬたぬたになったら軽く洗っていけばいい。

 使い物にならなくなったら新しく作ればいい。

 膠さえ作れればヤスリは簡単に作れる。


 膠作りは時間がかかるからまとめてやらないと。

 今ある分は慎重に使おう。

 今回分の皮には作ったヤスリは使わない。

 製品にならないので今は貴重なヤスリを使うコストに見合わない。


 ヤスリにこびりついた脂は冷水で濯ぎ落せるかな……。

 簡単には溶けないだろうけれど温水は使いたくはないなぁ。


 サポニンなどの界面活性剤を利用すればいいかな?

 後で調べておこう。

 たぶん固形化しているコラーゲンタンパク質は溶解しない。


 ……界面活性剤で皮の表面を洗って鞣し液に漬けたらどうなるんだろ?

 皮についてる脂が抜け落ちるのはいいとして表面が荒れる?

 表面が荒れれば皮から柔軟性が失われる?


 少し調べるとアニオン性かノニオン性か灯油と界面活性剤の混合物かの違いがあるだけで、皮の脱脂では一般的な処理だった。

 ここもっと前に調べておけば手順が短くなってやりやすくなっていたかもしれない。

 完成度を上げるためには気づくことが重要だ。


 今回は界面活性剤を持ってないからいいとして探しておくと便利になるだろう。

 ログアウトしたら詳しく調べておこう。


 膠を回収して軒先に干す作業が終えた。

 ここにとどまってする作業もこれで無くなったことだし裏の森に行こう。

 そして木の実など拾っておこう。


 ちょうどいい実験施設に出来そうな場所はないかなぁ……。

 細菌や真菌は危険物。ちなみに酵母菌は真菌。

 感染症の原因にもなるし扱いに注意が必要だ。

 酵母を探すにしても、それが本当に目的の酵母菌なのか検証出来ないことには危険だ。


 間違って空気感染を起こす有害な菌を繁殖させた場合バイオハザード(生体災害)になる。

 例えゲームの中であろうと集団感染してしまえば全員死ぬことが必要になるかもしれない。

 発症したから死んでやり直しした。だけど保菌者と関わりまた感染し発症。

 なんてことも起こりかねない。


 現実ならワクチンだとか薬だとか既にあるかもしれないがゲームの中ではまだないだろう。

 開発するまでにかかる時間だとか考えたら、運営が特効薬を用意しました。とか起こしそうだ。

 細菌関係のシステムが凍結されたらチーズなどの発酵食品を作れる可能性もなくなる。


 確実にプレイヤー達に恨まれるだろう。私も困る。

 安全性は追及しなければ。


 空気感染を起こす細菌は結核菌だけだった気がする。未だ死因第3位の病気。

 ウィルスはたくさんいる。インフルエンザとか。


 ちなみにウィルスは細菌よりも小さい()()()

 生物学的に生物とは認められない物だ。

 DNAかRNAしか持たずタンパク質の合成を宿主にしてもらうそういう物だからね。

 宿主がいなければ増殖も出来ないそういう物。


 栄養培地の上で増殖できるのは栄養をエネルギーに出来る細菌や真菌くらい。

 細菌や真菌を宿主として増えることはできてもウィルス単独では増殖できず死滅する。


 とりあえずガラスルームみたいな隔離施設が欲しいなぁ。

 地震とか無いなら耐震構造とかも考えないで済むから色々簡単に出来そう。


~~~~~~~~~


 ねずみんとカニちゃん、とりちゃんを連れ、ギルドの森を歩く。


 ねずみんととりちゃんは肩に乗りカニちゃんは隣を横歩きしている。

 カニちゃんを持ち上げるのはサイズ的に難しい。


 カニの安全な持ち方は基本カニの甲の横を片手で掴んで持ち上げること。

 サイズが大きすぎてもう大人でも掴めないんじゃないだろうか?

 それ以外の方法は指を挟まれる危険性があるので出来ない。


 カニちゃんが懸命に追いすがる中私は木々を観察し情報を収集していた。

 

 以前森のMAPを作成してた時と同じで木を1本1本種類と場所を記載していく。

 今回はギルド限定の物なので他所に公開するわけにはいかない。

 後でこのデータをボスに渡しておこう。

 生産関連に使うことが出来るかもしれないから重要なデータになりうる。


 ギルドの森は敷地面積がおよそ千㎡あったのはびっくりした……。意外と広い。

 木の生えている本数は凡そ250本。

 だいたい4㎡に1本の間隔で生えていた。

 木と木の間に2m程度の隙間があるのだ。

 1本1本の木が森の木としては比較的どっしりしていた。

 木の太さは平均して直径0.4m程度だろうか。

 桜並木の桜より小さい程度の大きさだ。


 木の実はたくさん拾えた。

 ドングリのような茶色い硬い皮に包まれた種類の木の実がほとんどだった。

 果物の類は見つけられず。


 それにしてもこの森生き物がいない。

 生き物はモンスターとして扱われるせいかな?

 だから生き物がいない不自然な森なのか。

 小さな虫の類もいないから物音もほとんどしない。

 せいぜい風が吹き抜けて木の葉が揺れる程度。

 生き物がいる普通の森を知っている人だったら気持ち悪く思いそうだ。


 歩き回ったことで楽しむことが出来たのか、サモンモンスターたちは互いに戯れていた。


 ねずみんが木の実を食べていると、とりちゃんが木の実を持って近づき皮を剥いてもらって食べてた。

 現実ではありえない光景だ。

 カニちゃんがその後ろでうろうろしていると、ねずみんが振り向きカニちゃんのハサミを掴んで輪に引きづり込んだ。

 なんというか人間じみている。

 もしかしたらねずみん、私よりコミュニケーション能力があるかもしれない。

 ただカニちゃんに皮を剥いた木の実渡しても食べないんじゃないかな?

 あ、口に運んで食べている。

 カニちゃん、空気読んだのかな?


 そこで急に私にサモンモンスター達の視線が集まった。

 交ざらないのか、と言われている気分になった。


 この茶会、少々参加しようじゃないか!


 私は落ち葉の積もった地面に足を崩して座った。

 地面はちょっと暖かい。

 落ち葉の下は腐葉土の類なのかふわふわしている。

 踏み固められた地面でないからやわらかいのだろう。

 何も上を歩く生き物がいないから踏み固めようがない。


 木の葉が腐り土に変わる反応で熱が生まれる。

 だから暖かいのだろうか?

 こういう反応は雨の後起こりやすく37、8度まで上昇するらしい。

 それを巣に利用する鳥がいたと思う。

 何だったかは覚えていない。


 ねずみ、すずめ、かにと輪を作る風景、すごく不思議です。

 地面に座るとねずみんに皮を剥いた木の実をもらいました。


 ねずみの感染症って割と重篤な症状が出る危険な物が多いよね。

 ペストとかそういう感染症はネズミの糞尿の類が原因だっけ。

 とりあえずねずみんはそこらのネズミみたいに生ゴミを漁ってないから清潔だと思う!

 無菌ネズミ程じゃないだろうけれど病原菌はほとんど持っていないはず!


 食べてみた。

 噛んだ感触はナッツ類に近い。

 ただ味がほとんどない。少しえぐみがあるかな程度。

 炒って塩振ればおいしいかも。

 塩がないからとりあえず炒ってみるだけで楽しめるかな?

 

 虫を心配しないで食べられる木の実って楽。

 水に沈めたりしなくてもいいから。

 ただ炒めるだけでもカリカリした感触になりけっこうおいしいらしいです。


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