49、おっさんですから!
必要量が少なく、需要がない、行けば拾えるアイテム。
ドロップする敵はパーティーだと30秒もかからず終わってしまうザコ。
いつもパーティーを組んでいるメンバー内で使うのは自分だけ。
既に経験値も獲得した敵で、パーティーメンバーに付き合わせてしまうのは気が引ける敵。
ただそんな敵でもサモンモンスターは文句を言わない。
サモンモンスターにドロップの配当などなかったのでアイテムの総取りも出来たので用事もすぐに終わって別のモンスターに向かえた。
などなどサモンモンスターのレンタルの有用性を論点に3人の話は積もっていく。
私はその間時折相槌を打ったりしながら膠の生成。
今日完成する予定なのだ。
鍋が冷めない程度に熱を与え続けるというのは結構気を遣う。
熱くなれば脂と膠が混じってしまう。
冷めれば抽出が止まってしまう。
スマホで火力調整できるから1度つけてしまえばそれでお終いなのだけど。
液温管理用のセンサーもついてる。たぶんこれ揚げ物用だけど。
脂が入手できたらそれはそれで利用手段はたくさんある。
そういえばこの脂は鶏油みたいに扱えるのだろうか?
割と気になる。
分溜したりして純度を上げれば火がつくような代物になるかな。
膠は今のところヤスリ用かな。
火力が足りないからヤゴをスルーする手段を模索していたけれど日曜はボスと共に狩りの時間。
火力要員になりそうな人がいるのにスルーする手段を使うことはめったにないだろう。
私にとっての新規エリアを開拓したほうがいいかな?
足手まといになるだろうから新規エリアを選ぶのは今は無いか。
とりあえず現状安定して狩れると思う草原エリアでいこう。
人が話している最中に別の事を考えれば割とすぐ気づかれてしまうね……。
気づくと3人の視線が集まってる。
「ごめんなさい。ちょっと気をそらしてました」
「こちらこそ、すまんな、なんでもない」
「なんだか隙だらけで不安だな」
「本当におっさん?」
「おっさんです。30代男性のおっさんです」
大事なことなので2度言いました。
「口元をよく手で隠してないか」
「立ち方、座り方、動き方どこを見ても女の人そのものだろ」
「男性というには汚さが見当たらないな」
「「「女だろ」」」
「歌舞伎の女形、女装男子など。
彼らは男性でありながら女性よりも女性らしいと聞きますよ?」
「女装するの?」
「したこと自体ありませんが」
似合いそうだと言われました。
「なら関係ないだろ」
「む、確かに」
「まぁ。テン子ちゃんがおっさんだろうと女の人だろうと気にしなくていいんじゃないか?」
「「気にするだろ!」」
「おっさんだったら下ネタを目の前で話していても何も思わない。
女の人の前で下ネタを話す根性がお前にあるのか?」
「いや、そもそもテン子ちゃんの前で下ネタ話すのはなんかダメだろ」
「「確かに」」
「そんな話を聞かせたら汚れてしまいそうだ」
「あのー。私はおっさんなんで気にしないんですがー」
「なんかこうテン子ちゃんは『おほほ。』っていう感じの仕草でスルーして言った自分が傷つきそうだ」
「私はけっこうそういうエロ話行けますよー」
「「「テン子ちゃんがそういう話しちゃいけません!」」」
「ご無体なー」
「なんにせよ。こういう話をテン子ちゃんにしてほしくない」
「だな」
「やっぱ、テン子ちゃんはテン子ちゃんで話は終わりだな」
「あのー。それはおっさんだとは認めないと言われた気がするのですが?」
「「「テン子ちゃんはテン子ちゃん」」」
「なんかひどい!」
現実と同じ展開が発生した。
認識が特別扱いにされると2つのフラグが生まれる。
ちなみにどちらもボッチになる。
1つは根暗などの条件がある場合起こりやすい。
カーストを最下位にする。いじめられっ子フラグだ。
特別な能力を持たない時に発生しやすい。
もう1つは祀り上げフラグ。
カーストから除外される。
独特な雰囲気があると生まれやすい。
際立った腐女子がなることが多い。
孤高など言われることが多い。
前者は色々と不利な状況だ。
いたずらしてもコイツだからいいや、別に何しても構わないだろうなど悪影響が降り注ぐ。八つ当たり要員にされる。
後者の状況に陥ると簡単には身動きが取れなくなる。
融和を求めて行動すると印象が崩れるなど言われた挙句前者に陥ることが多い。勝手に思い込まれただけなのに……。
回避しなくてはボッチ脱却出来ない!
「私はおっさんなのです!」
「はいはい」
相手が理解できるものなのだと私を見てもらわないと祀り上げフラグを回避できない。
祀り上げは1度成ってしまうとカースト最下位か除外かのほぼ2択しか選択肢がない。
イメージを維持しなければカースト最下位になってしまう危険な立ち位置なのだ。
気違いしかなれない立ち位置とも言える……。
気違いは困る!
「流さないでください!私はおっさんなのです、おっさんでしかないのです!」
「じゃあ、声出してみて」
「このアバターで声を出す気はありません」
体が小さいからか声が少し高い。
カラオケだと千〇桜が75~80点、平〇堅の大きな古時計が15~30点。
音痴が原因だとしても点差がひどい。
そんな点数あるんだね、なんて言われたことは記憶に残っている。
分析採点機能で音程を画面でチェックしながら歌っているのに一向に音痴が治らない……。
女性パートの方が歌いやすい現状話すメリットがない。
「女だってばれるからだろ」
「いえ、おっさんです」
「なら声出せばいいじゃん」
「このアバターでは声出す気がないのです」
「あぁもう、とりあえずテン子ちゃんはおっさんだ。
それでいいね。これでこの話は終わりだ」
「む」
「テン子ちゃん。俺が言い聞かせとくから角を収めて」
「むぅ」
ここで言いつのれば立場が悪化してしまう。
でも認めてもらわなければボッチが進行してしまうかもしれない。
何か打つ手はないだろうか。
打てる手はないだろうか?
「しょうがありません。とりあえずディーノさんに免じて今回のところはここで終わりにします。
ですが私はおっさんだという主張を止めません」
「はいはい」
どこか呆れが顔に浮かんだクマ3人組を見ながら私はボッチ脱却のためのおっさんアピール計画を立てることを心に決めた。
話をしていると時間がかなり押してしまいクマ3人組が帰る頃にはカニちゃんと遊ぶ時間がなくなってしまった。困った。
まだまともに遊んであげられたのはいぬくんだけだ。
次の週こそはサモンモンスターとの触れ合いの時間を作らなければ。
今日はログアウトをする際鍋をインベントリにしまわず放置していくことにした。
冷却作業だ。
明日は膠を使った作業が中心になるだろう。
情報によれば簡単に分けることが出来るらしい。
明日を楽しみに今日は落ちることにしよう。
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今日は何もレンタルしなかった。
明日は進化がない日だ。
ねずみんととりちゃんの進化の成果をあまり確認できていない。
これはいけない。
何か方策立てないといけない。
どういった能力なのかの確認は重要だ。
目立った成長が発現しているといいなぁ。
あとカニちゃんとどうやって関わっていくか考えないと。
それと私の立ち位置をもっと普通に!
おっさんアピールは下手すれば女を強調することになりかねない。
ふと漏れるおっさんらしさを見せられるようにしなければ。
ダジャレとかおやじギャグは……趣味に合わないし……困った……。