46、触れ合いましょう!
どこか心配げな顔してボスは去っていった。
膠を作る時間。
鍋から一定の範囲でしか活動できない時間。
やることはあるのでそこまで退屈はしないかな。
皮の状態を確認し手を動かす。
皮に脂がついていたらヤスリがないので包丁で削ぐ。
膠がないとヤスリ作りが出来ない……。
部屋に干している皮でひどい景観になっている。
これは割と問題。
風通りも悪いし気分も多少悪い。
もっと整理したいものだ。
大きさによる区分け、種類分け、処理日分け。
皮の整理に一段落つくと心持気分が楽になった。
鍋は屋外にあるので皮に膠の匂いが染み付くことが防げているといいな……。
鼻がマヒしているのか部屋の中では匂いがよくわからない。
今回1つも使っていない牛の蹄をいぬくんに投げてみることにした。
ただあげるのでは面白くないので跳躍力の限界を試すつもりで高く放り投げることにする。
この体で投げられる物はせいぜいこれくらいだ。
骨は干していないので中身に水分つまっていてかなり重い。
動物の蹄は犬用の歯磨きガムのように使われる。
ひなも好きでよく噛んでいた。
15㎝くらいのが5㎝きるまで2か月くらいもつ。
ある程度小さくなると噛みにくいのか興味なくすけれど。
私はこの体で物を投げたことは少ない。
そういえば現実でも物を投げたことがあまりない。
機会がない。
ついでにもともと球技は苦手。……ボッチには相手がいないから。
予想、大暴投。
どこに飛んでいくかは私自身も割と予想がつかない蹄。
うまく上に投げられるでしょうか……。
あと私は割と気まぐれです。投げたフリ、よそ見をしてる間に物影に投げ込む、持ってないフリなどを駆使しひなを翻弄し遊んでました。
楽しかったのか実家でひなが1番懐いていたのは私ですね!
いぬくんにも試していきましょう!
いぬくんの鼻の前に蹄を差し出す。
いぬくんの目が蹄に向く。くんくんと匂いを嗅ぎだした。
なので私は左右に蹄をふって、いぬくんの顔が蹄を追って動くのを確認し、十分に興味を引けたのを確認出来たらアンダースローで放り投げた。
放物線の上昇中にキャッチ。1mも上がらないうちに捕られてしまいました。
私は【待て】と合図をだしいぬくんが噛むのを止めたらあごの下を撫でて蹄を返してもらう。
蹄を返してもらったので頭を撫でていぬくんをほめた。
あごの下を撫でたら【放せ】の合図になるようについでに仕込んでおく。
ほめる時間は5から10秒で止める。ここをしっかりとしておくとメリハリがつく。日頃の習慣は大事。
いいことしたらほめる。
甘えたり吠えたりしてわがままになると気分悪いので見極め大事。
今度こそ跳躍の限界を調べるために蹄が放物線の頂点に近づくまで【待て】をさせておくことにした。
投げた蹄は高さ5mにも届きませんでした。頂点で余裕でキャッチされました……。
球速より跳躍速度の方が速いことを考えると10mは余裕で飛びそうです。
足元でいぬくんが座って待機してます。期待で目が輝いてます。
あごの下を撫でてほめてあげた。
よかろう、時間になるまで投げてやろうじゃないか!
あ、後ろからじっと見てくる他の子達が……!
困った。どうやってかまってあげよう?
いぬくんをかまう回数がこの頃多すぎて不平等になってる。
これはよくない傾向だ。
贔屓は主義に合わない。
明日かまってあげることにして今日はいぬくんにかまう!
明日のことは明日考える!
ローテーションはログアウト中につくろう!
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いぬくんと遊びリラックスした後ログアウトした。
明日も仕事頑張ろう!
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サモンできるようになった順に平日は遊ぶようにしようか。
今日はピュアちゃんだ。
スライムとどうやって遊べばいいんだろう……?
贔屓はされていない方が性格が悪くなってしまうからダメ。
注意を惹きたくていろいろものを考えるので賢くはなるのだけど、悪賢いだとか飼い主への嫌がらせを好んだりだとか扱いにくい存在になってしまう。
かまいすぎも問題。
かまってしまうのに慣れてしまうとそれが当然と思うようになったりわがままになってしまう。
私の子供時代のようにかまってほしくないのにかまえば性悪になる。
かまえばいいなんていう問題じゃない。
何事も加減が重要なのだ。
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ログインして、挨拶して、火にかけて、面倒を見る。
主語をなくすとなんか不穏当で笑ってしまう。
挨拶した人に火をつけて、その火の面倒を見そう。
ピュアちゃんをサモンすると風上に逃げられました。
膠の匂いがダメだったのかな?
嗅覚がスライムにあったのか……。
スライムって大きな単細胞生物?
だとしたら表面がそのまま感覚器官になるのかな?
匂いの成分が表面から内部に浸透していくとしたら感じられる?
細胞膜の性質上水などの極性物質と大きすぎる分子を通さない。
危険な物質は酸や塩基、高分子タンパク質が多いので基本通さない。
となると浸透ではない。
細胞膜表面に特殊なタンパク質があり、そのタンパク質に何かが結合することで感知できる?
だとしたら特定の匂いに弱いだけ?感知できない匂いなどある?
腐臭に近い匂いがすることが原因で離れた?
だとしたら細菌汚染に弱い?
スライムの楽園はきれいな、言い換えれば生物が少なさそうな空間だった。
細菌の類もタンパク質を変質させるものはいないだろう。
……あれ。私がピュアちゃんの乗りまわしていたのって地味に危険だったかも。
スライムってどうやって生存しているのだろう……。
エネルギー源は何なのだろう?
ピュアちゃんは料理を食べていた。
タンパク質をエネルギーにできるのかな?
あそこがスライムの楽園というくらいだ。
あそこで何か栄養源にしていたはずだ。
あそこにあったのは木と水とコケ?
コケを食べていたのだろうか?
ところどころコケが剥げている場所があった。
コケが剥がれている場所は石だったと思う。
いろいろ謎が多い……。
現在の問題はピュアちゃんが寄ってくれないこと。
かまって遊ぶことができない。
膠作りは明日くらいに終わるはずだから明後日の子と交代しよう。
明後日はねずみん。
腐臭に対して嫌悪を覚えないだろう。
さっそく交代。
ねずみんはきょろきょろ辺りを見回して私を見るとびっくりしていた。
サモンされるまでねずみんは何していたのだろうか……。
結構気になる!
ねずみんに期待するのはスピードと攪乱。
判断力を試す遊びがいいかな。
迷路を作るのは時間がない。
いぬくんと同じように【とってこい】出来るかな。
ねずみんに投げるものは木の実がいいよね。
手持ちにない……。
しょうがない小さな骨を使おう。
興味を持ってくれるかな?
いぬくんと同じようにしても興味を覚えてくれませんでした。
この方法じゃあ無理か。
楽しんで遊んでいるように見せる方式じゃなきゃ無理かな?
仲間意識を刺激する感じで。
となるとねずみんサイズでも遊べそうなものを用意しないといけないよね。
現実だと工具や材料を買えば済むけどゲームの私にお金はない!
今あるものから考えないと……。
ねずみって回転車以外で遊ぶイメージが思い出せない……!
あれは運動不足解消のためだから野で駆け回るねずみんにとって物足りないだろうし……。
ねずみは歯が伸び続けるから噛むものがあるといいんだっけ?
でも骨には興味していなかったなぁ……。
やっぱり木の実とかかぼちゃとか根菜とかだよね……。
手持ちにないよ……。
「お~、臭い!本当に臭いな~!」
「だな!」
「こりゃ、臭い!」
緊急事態発生。知らない人達が登場しました!