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43、もふもふレンタル

 いぬくんの匂いを嗅ぐことで膠の獣臭を緩和させながら頑張る。

 イノシシの骨からだと70℃で9時間はかかる模様……。

 ウサギやトリなど小動物の骨が多いので大型動物と違い同量で比較すると膠の成分が少ない。

 油分と膠の成分の層の分離は皮より骨の方が効率がいいらしい。

 ただし時間がかかる。


 インベントリを使って時間停止出来なければ休日じゃないと作れない代物だ。


 膠の作り方は骨や皮を煮て油分と膠の成分を抽出し冷却。油分の層は使わない。

 膠の成分と油分の層を分離するため70℃程の温度に保たないといけないので注意。

 膠の成分はこの時油分の層の下にあり、これを乾燥させることで膠は完成する。


 イノシシで9時間程かかるなら小動物からなら短いかもしれないと思いながらのチャレンジ。

 現実的に考えればイノシシ1匹捌くのとウサギやトリなどを数十匹捌くのでは効率が悪いのでしないのだろうが今回は幸い骨が余ってる。


 ウシとかイヌの骨は?今回使いません。

 サイズが違いすぎるので抽出時間がそろわないと思うので。

 比較的骨の太さが近い物で統一。


 骨が重いとうまく飛ぶことが出来ないトリとか中身がスカスカな分抽出の割が合わない気がする。

 ウサギの場合、足の骨はいい感じに出てきそう。他はあまり期待できない気がする。


 いい膠が出来るかどうかはすごく微妙です。

 骨を砕いてから袋に詰めて重石として河原の石をのっけって浮かばないようにしてはいるものの70℃という温度の判別がつきにくいのが問題。

 グラグラ沸騰させたら分離が起きないので油分多めのぬるぬるした物になってしまいます。

 やすりに使うなら油分は出来るだけ少な目がいいですね。


 先に沸騰させて素早く抽出を済ませてから濾してという方法もあるにはあるらしいです。

 ただ余計な物まで抽出してしまい臭気がひどい物になったり、膠の成分が熱で変質し粘着率などに影響が出てしまうことがあったりするようでおすすめ出来ないらしいですね。

 基本が肝心です。基本を理解しないで応用なんて選択肢を狭めてしまいます。


「匂いの壁が厚い……!」

「しばらくは膠作り止められませんよ?

 抽出止めたらどうなるかよくわかりませんし」

「おぉぅ。つまりテン子ちゃんに近づくためにはこれを越えなければいけないのね!」

「マスク推奨です」

「テン子ちゃん、カムヒア!」

「……」

「ごめん!そんな目で見ないで!」

「……」

「諦めた顔で鍋の方向かないで!

 大丈夫だから!」

「」

「むぅー。お姉さん頑張っちゃうぞ☆」

「?」

「がおー」


 何事か言ってたボスが急に飛びついて顔を髪に埋めてきた。

 体育会系の正反対の存在の私が避けられる身体能力を保持してるわけがなくそのまま覆いかぶされてしまう。


「何してるんですか?」

「マスク」

「息荒いんですが」

「いいじゃないか。

 ……けも」

「けも?」

「獣臭が強くて女の子の匂いがわからない……」

「膠作りしてるのだから当然です」

「もっとこう甘い匂いとか」

「こんさん処に行けば野菜の甘い匂いに包まれると思います」

「こんさんは農作業しているから手伝いを頼まれちゃうよ。

 それと女の子の匂いが嗅ぎたかったの」

「中身おっさんです」

「アバターは幼女だから大丈夫」

「えぇー」

「中身が君なら幼女の違和感がないから大丈夫」

「それって私が幼いってことですかー?」

「YES!」

「むぅ」

「君がおっさんだとはどうにも信じられないよ~。

 あ、漫画に出てくるような小さなおじさんなら信じられる!」

「えー」

「なんだか真面目にかわいいことしてるところが小さなおじさん!」

「……ちなみに役職はどの辺り?」

「課長!」

「課長クラスかー」

「部長以上には貫禄が足りないよー」

「貫禄……」

「貫禄のある幼女……」

「……こぶた」

「それは言っちゃダメ!」

「のぶた?」

「なんか野生化した!

 女の子をぶたなんて言っちゃだめだよ!」

「……横綱」

「相撲ネタもダメ!

 君に貫禄なんていらないよ!」

「昇進できない」

「小さなおじさんは昇進しなくていいの!」

「ひどい!」

「テン子ちゃんは小さなおじさんでいいの!」

「!」

「テン子ちゃんは昇進しないの!」

「うだつが上がらない!」

「テン子ちゃんは日向ぼっこしてるのがお似合いよ!」

「ボケちゃう!」

「身じろぎするテン子ちゃんは……こうしちゃう!」

「ちょ、くすぐりは止めて!

 けほっ、げほっ、ぐほっ、げぼっ、がぼっ、ぐ、ががが……」

「あ……マジでごめん」

「げぼ……本気でくすぐりは耐性ないの……」


 0距離で躱すことも適わずかかったいぬくんは何しやがるんだ。という視線を私に向けてきた。


 ~しばらくお待ちください~


 調理スキルで水を出し洗い、火を使って乾かすとさっぱりしたいぬくんは拗ねてそっぽ向いていた。


「嫌われちゃいました」

「本気でごめん!」

「謝るのはいぬくんにしてください。

 とばっちりを受けたので」

「あ……あぁ、そうだね!」


 ボスはいぬくんに向かっていき頭を撫で謝っていた。

 いぬくんはしばらくそっぽを向いてたけれどボスの顔を舐めて仲直りの合図をしていた。

 私も謝りに行くとそっぽを向かれたので正面から抱き着いていき背中を撫でた。

 一瞬びくっと恐怖に震えられたけれどされるがままされてくれた。

 許してくれているかわからない……。

 なんとなくそのままひっくり返し押し倒しモフモフしていく。

 あ、投げやりな目された。


「うん。どう見てもおじさんのする行動じゃない」


 はっ!


「アバターに合わせた行動をとったまでです」

「ふ~ん。どうみても素の行動だったよねー。いぬくん」


 にやにや、いや、によによした目で見られて内心たじろぎつつ思う。


 膠の匂いに慣れたのかなぁ。


「でも私もそうもふもふしたいなぁ……」

「そろそろ私ログアウトするのでレンタルします?」

「レンタル?」

「サモナーの能力の1つでサモンしているモンスターを貸し出すことが出来るんですよ。

 経験値稼ぎが他の職業よりも大変なサモナーの救済措置なのか分からないですね。

 今まで1度もしたことがないので何とも言えませんが」

「おぉー。じゃあ、お願いできる?」

「いいですよ」

「は……ギャラをとるとは……」

「私の経験にもなるのでいいですよ。

 できたらいぬくんと一緒に戦闘してくれると嬉しいですね」

「得意なこととかある?」

「教えているのは注意をひいて壁をすることですね。

 攻撃が通じればいいですけど武器もないし噛むしか出来ないので難しいところでしょう」

「ふむふむ」

「熊を狩る時の要領で1撃を入れるための隙を作るための壁として扱ってくれるとうれしいです」

「なるほどー。……ねぇ、もし武器を与えるとしたらどんな武器を想定しているの?」

「口にくわえられる中央に柄のある両刃のクナイ風の刃物!」

「……銀牙シリーズの作者の書いたマンガ、白い戦〇ヤマトの兄犬ハヤテの武器!」

「!」

「……確かにそんな古いマンガのネタを知っているなんておじさんだ……」

「算盤の先生がくれた古本で読んだんですよ……魁〇男塾と一緒に」

「!……ふ、ふるい!平成元年に完結した作品を……」

「言ったでしょう。おじさんだって。

 ……私が読む頃には既に完結してましたけど」

「く。でもイメージはすぐ出来た!」

「これを知ってるボスが私より年上だと確信できました」

「違うよ!リアルなイヌで戦闘マンガ描いている人が珍しくて調べていただけだからね!

 コンビニに銀河シリーズが置いてあることがあったから知っただけだからね!勘違いしないで!」


 20年以上前に完結している作品を知っている段階で40台以上の気がする……。

 私は小学校の頃通っていた算盤の先生から息子が残したこんなマンガあるけど読む?なんて言われて読んだので知ってますけど。




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