41、鞣し職人の道
ウサギを処理し終えた時にはログアウトしなければいけない時間になっていた。
今日はここで落ちてしまおう。
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ログイン時間を短くして毎日ログインするようにしようかな。
皮の鞣し作業も始めを抜けば1回の作業時間自体は短いけれど待ち時間が長い。
休日に狩りと鞣し作業の始めをして皮の様子を見るための少しのログイン。
睡眠時間や日々の仕事に影響がでない程度の間隔で頑張ろう。
そうすればもっと効率よく強くなれそうだ。
……どうみても鞣し職人になっている気がします。
まぁ、いいや。
専門性が高まればそれだけで食べていけるようになるかもしれない。
まず時間を決めるとしよう。
ギルドの主な活動時間と同じでいいかな?
鞣し作業の間少々会話をしつつ行動すれば私のコミュ障ももしかしたら改善されるかもしれない。
このゲームに期待しているのはもふもふとコミュニケーションになってしまった。
初めはソロで頑張ってやるぜ!だったのになぁ。
サモナーはソロ職だけどほとんど何も出来ない職でした。なんてハプニングのせいかな?
もふもふ万歳、火力ってグロくてえぐいものです(違
現実でもコミュ障を治す努力をしてますが意識を変えるのはなかなか難しい。
年をとればそれだけ新しいことをするのが難しくなる。
30代って新しいことをするよりも持っているものを磨き始める年代ですよね……。
磨く分には経験を活かし意識を伸ばすだけなので。
もっと若いうちに人付き合いをうまく出来るようになればよかった。
後悔は先には立たない。
現実でコミュ障解消の努力といえば話題を見つけることをしている。
最近読んだ小説にイケメンがする人との付き合い方について書いてあった。
常にいつでも話せる話題を3つもっておくこと。
話している最中に物を考えて話しているようでは半人前。
テンポよく話すことが出来ない。
話すタイミングが少しずれることで不信感や噛み合わない不愉快さを相手に与えるそうだ。
すごく心当たりがある。
仲間など自分とある分野で共通点がある人を相手にするときの関わり方は批判中心。
他人など自分とある分野で共通点がない人を相手にするときの関わり方は賞賛中心。
そうした方が相手の気分がよくなりやすい。
めぐるんよ、いくら調べても実行できなければ意味がないのだよ……。
言うは易しやるは難し……
とりあえず何でもやるだけやってみよう。
現実なら顔や名前がわかるだけに悪評は一度ついたら拭うのは難しいし経歴として残ってしまう。
ネットなら使い込んだアカウントが使えなくなって精神的に落ち込むだけで全部終わる。
リアルアタックするようなプレイヤーに狙われる程いい装備を入手する可能性や人に憎まれるプレイをするつもりなんて毛頭ない。
恋愛関係なんて望まない。むしろいらない。ただ友人関係といえるほどの関係がほしい。
ネットで普通の友人関係が築けるほどのコミュニケーション能力があればコミュ障は治る見込みが出てくるだろう。
1つ1つ進んでいくしかない。
千里の道も1歩から。
そこまで対価なく人付き合いが少しは体験できる環境がある。
いろいろ違うこともあるだろう。
それでもネットを介したその先に人がいる以上頭の中でごちゃごちゃ物を考えているよりも有益だ。
用もなく人が話しかけてくるなんてことはない。
それがあるとすればそれはもう友人関係にある人くらいだろうか?
いや、すぐに別れることが予想されるカップルくらいだろうか?
互いに依存しすぎる関係って本当にもろい。
溜め込んだ愚痴を吐き出すのにはちょうどいい人扱いされている私はそういう話題はよく耳にする。
トーンが上がらないけれど下がりもしない。
トーンは低くもないから落ち着きたい時には便利という扱い。
ペットもそうだよね。目を見てくるから話を聞いているように感じて、でも相手がその発言を聞いても変わらないという安心感が愚痴をこぼさせる。
落ち着きたい時はちょうどいいよね……。
人間扱いには程遠いなぁ……。
早く人間になりたい。
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ギルドに挨拶をしログイン時間を変える旨をギルドに伝えるとそっか~という反応が返ってきた。
私はスライムの楽園から移動し町に入り雑貨屋でアイテムを売り払った。
視界に浮かぶ金額は今まで最高額。
気分がよくなり足取りも軽くなる。
視界に入る値札が気になる。
服屋が多い……。
装備とは何か違うのだろうか?
色合いが派手なものや突飛な恰好した服がおおいなぁ。
地味な普段着みたいな服もあった。
この区画は食べ物を除いた消耗品類が多くなっているようだ。
装備とか武器とか道具とかは目的がなければ買わないだろうが服や日用雑貨、回復薬などはどこか行く度に必要になるから多くのエリアの中継点のこの区画に軒を重ねているのだろう。
町用の服?が多い理由はよくわからないがきっとデザイン関係の趣味がある人が作ってるのだろうね。
ゲーム内で消耗品を買ってもしょうがないといえばしょうがないか。
だからデザイン性が重視される衣服の類がここのメインアイテムなのかも。
あ、あのビキニアーマー、森の人が着てたのと色違いだー。
ビキニアーマーはこのお店のブランドなのかな……。
商品のすべてがビキニアーマーだ……。
着ぐるみ専門店発見!
ヒツジの着ぐるみが多数!
今までだったら高値だ、私には関係ないと目を反らしていたものが今日はやけに目につく。
耐えろ。それは消耗品だ。
今の金額なんて皮が安定して売り払う宛ができれば塵の様なものだが今はなければ困る大金だ!
装備の類を買える程の金額がなくてよかった。
無事誘惑を振り切り図書館に辿り着き目当てのスキルツリーを購入した。
これでなんとか新しいアイテムが作れるようになる。
売れるものが作れれば金策にだってなるかもしれない。
ただこれでもう一文無しだ……。
とりあえずギルドで皮の整理してこよう。
下処理不足があったら注意して直さないと。
もうミスはしたくない。
売り物にするなら出来るだけ価値が高くなるようにしたい。
人が使うなら目的にあった性質を提供できるように出来たらブランド力が高くなるだろう。
そしたらそれだけでも価値が上がる。
ブランドは品質を保証する意味合いもあるからね。
業界で生き残りをしたければ自身の価値を示さないといけない。
丁寧に仕上げよう。
見てくれる人が多ければ需要も上がる。
供給は私だけで賄う現状上限がある。
需要と供給の曲線が釣り合うところが出来るだけ高い位置に来たらうれしいな。
そしたらお金が入っていい装備を購入できるかもしれない。
能力を上げよう。
より性能をよくするために。
私がログインできる時間は限られている。
サモナーは育成に時間がかかる職業。
金策に回す時間は限らないといけない。
じゃないとギルドの皆に追いつけない。
足手まといは居心地が悪い。
私は友達になりたい。
対等な関係でありたい。
早く強くなって顔向けできるようになりたい。
人と一緒に行動できる、人の間にいる存在、人間になりたい。
私は今のままでは人間失格なのだ。
調和から外れた異物でしかない。
ボッチはボッチのために動いている人がいなければ成り立たない。
家族だったり周囲がフォローしているから生きていられるのだ。
真の意味でボッチだったら仕事で雇ってもらうこともできないからお金も入手できない、衣食住もありはしない。
ボッチは周囲に負担をかけながら生きているのだ。
私はその現状を前に周囲に対してうまく顔向けできない。