37、筋肉の人達は
薄切りしたハト肉をフライパンで炒める。
塩しか調味料がないので味気ないだろう。
消化器系は雑菌が住み着くが健康であれば体内にまで侵入することはない。
都会のハトみたいにエサが生ごみ?のような物で不健康ならともかく野生のハトだ。
そういう雑菌は体内、つまりお肉のところまで侵入していないだろう。
健康だと信じてる。
林で香草の類を拾えればよかったが分かるものがなかったなぁ。
拾えていたら臭み消しも出来ただろう。
肉の匂いが臭くなければいいな。
内臓は多少時間がたつとすぐ臭くなるので食べれるけれど現実では苦手。
サメ肉とか深海にすむ魚は浸透圧の調整にアンモニアを使うのか時間が経っている肉はアンモニア臭がひどい。
ゲーム内ではインベントリがあるので無くても問題は少ないだろう。
ローズマリーとかカモミールとか実家で雑草化していてよく料理に使われていた。
あの匂いは割と好きだったなぁ。
ネギやショウガやサンショウは使い勝手いい。
あれば和食が作りやすいなぁ。
フライパンを傾けて油を溜めそこでハト肉を揚げた。
油が跳ねるので現実ではミトンを使ってやるけれど獣人の腕は毛に覆われているのだ。安全。
ハト肉のソテーとフライドチキン。付け合わせなし。
現実だったらニンジンとかタマネギとかジャガイモとか炒めるのに!
それらの料理を使い合図を覚えてもらうと割と時間が経ってしまった。
自分のご飯が遅れてしまった。
ギルドに挨拶を入れログアウト。
挨拶以外ギルドにいる実感がないなぁ……。
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お昼は何にしよう?
ハト肉を調理するだけで食べていないから鳥料理にしよう。
鍋は夜って気分だ。
ファストフードに行こう。
チキンは多いから食べたいものもあるだろう。
今日は天気がいいから公園で食べようかな。
お店に入りメニューを見るとバーガーの項目を見た。
下限は100円。
貧乏性が働き、量が多くて安いものを探してしまう。
おかしいな。この程度の金額くらい普通に払えるのにためらってしまう。
人のためには出すけれど私の分は安くしてしまう。
人に払う分はその人への気持ちだから予算を高めに出すだけか。
私にかける予算は低くて構わないということは。
あぁ、私は私が嫌いだから何食べても気にしないということか。
こういうところは直さないといけないかな?
チキンフィレオのセットを購入し近所の公園に向かう。
お年寄りの多い地区だからか公園は静かで落ち着いた雰囲気がある。
私のお気に入りスポットは藤棚の下にある2人用テーブルセット。
相手がいないのに占拠するな?
季節が良ければ紫色の藤がきれいなんだぞ。
そうじゃなくても葉の緑がきれいだったり、枝の間から見る空が好きなんだ。
どうせここに人が来ることなんて滅多にない。
私が周囲に気を払っている間人影1つ見たことない場所だ。
誰も使わないなら私がちょっと占拠してもいいじゃないか。
包装紙を1部剥ぎ剥き出しになった部位からチキンフィレオにかぶりつく。
やっぱりパンズと一緒に食べるとチキンの味が若干変わる。
口中の水分がパンズに吸われるからかな?
それともパンズと合わさった分味が複雑になったからかな?
後者の気がするなぁ。
フライドポテトをつまむ。
そういえば飲み会でからかわれたっけ。
食べ方が麻雀の牌をツモするようだって。
右手の親指と人差し指でポテトが手の平に向くように摘んでしまうので口に運ぶ時は手を返さないと食べれないだけ。
麻雀は小学生時代に祖父母の家でやってた。
1度だけ国士無双で上がったことがある。
人差し指と中指で摘まむと今度はタバコを吸うかのような形になる。
タバコは匂いがダメなので吸えない。
ジュースを飲む。
メロンクリームソーダ。
甘い物が好きすぎるせいだ。
バーガー1口、ポテト5本、ジュース1口のルーチンで食べていく。
ポテトは最後まで残っていた。
昼食が終わりゴミを集め近くのコンビニで捨てゲームをしに戻った。
このゴミって家庭ごみ扱いなのかな?
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食事にかけた時間は10分もない。
ゲームにログインしギルドに挨拶入れると「早っ!」という声などが飛び交った。
私は「ファストフードで済ませたので」などと返し会話が終了した。
会話を盛り上げるためには1言付け加えるのがいいそうだ。
1言で返事を終わらせると(早く話を終わらせたいのかな?)などと思われるらしい。
ぼーっとしている方が話しかけやすく、本を読んだりスマホや携帯を弄っていると(邪魔しちゃ悪いな、他の人にあたろう。)など思われるらしい。
作業をしているのは最悪で(忙しそうだ。)など思われ余程の用がなければ話しかけてもらえなくなるそうだ。
雑談の悪手が全部該当しているのは気のせいじゃない……。
私が現実でボッチになっている原因ってここら辺にあるんじゃないだろうか……。
LINEだと相手の様子が分からないのでコミュ障が多少治るのもここに原因がある気がする。
まぁ、今はしょうがない。
今ギルドで最も弱いのは私に違いない。
足手まといになってしまっている現状を脱却できないようでは一緒に行動することもできない。
とにかく鍛えるべし。
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午後は指示内容を増やしながら草原に向かった。
カニちゃんに壁について覚えてもらうため訓練場所はウサギ穴。
カニちゃんはレベルが上がるにつれ少しずつ大きくなっていた。
1レベルにつき1㎝より少し多い程度。15レベルになった現在40㎝程度。
まだまだ小さい。けっこう食べ応えがありそうなサイズだけど。
戦闘で壁をするには向かない大きさ。
食事と合図でレベル上げるしかまだ無理そうだ。
カニちゃんのDEFならウサギの攻撃はノーダメージで済ませられるはず。
正面で受け止める訓練だ。
背面に攻撃を受けてはいけない。
背中をつかまれれば手も足も出ないというのは何回かやってみせたので背中を抑えられることを避けるようになった。
集団相手の立ち回りを覚えてもらうための訓練。
カニちゃんの補佐にとりちゃんとうさぎんが携わる。
壁をしていると頭突きの反動で死んでいくウサギ。
攻撃役はいらない。
カニちゃんがきちんと壁になれれば戦闘は終わるので。
私は何をしているか?筋肉の人に頭下げて退いてもらってます。
「すみません、ウサギで戦闘訓練をしたいのですがどこかいい場所ありますか?」
「そうか、すまんな。退くよ」
「ありがとうございます」
「最後のサモナーか……」
「?」
「俺も元はサモナーだったんだ。モフモフがしたくてな」
「!」
「俺のギルドのメンバーはほとんど元サモナーだ」
「!そ、そうだったんですね!」
「頑張れよ。俺達にはムリだった、モフモフワールドを作り上げてくれ!」
「が、がんばります!」
その筋肉の人は背を向けて手を振り去っていた。