33、はらぺこヘビちゃん
ボスを個別チャットに誘い契約内容を改める。
「あ、ギャラね!」
「契約では月末占めでPVの3%分で課金アイテム換算です」
「覚えてるよー」
「まだ先月分はもらってません」
「あー、そだったね」
「視聴回数は全動画合計でえーと……」
「9月末時点で5万回だよー」
「1500円分ですね」
「何がほしいの?」
「武器か防具」
「1500円分だとステータス再分配が3個でいいかな。
合計で90万Yだね」
「クローとかはありませんか?
サモンモンスターに攻撃力がなくて倒せる敵が少ないんですよ」
「攻撃力かー。結構困ってるの?」
「カニが割れないくらい」
「重症だね……」
「初期フィールドで戦闘困難です」
「分かったよ!ギルドの総力を挙げて君にふさわしい装備を捧げよう!
資金90万Yあればいいのが作れるでしょう!」
「賞金形式で生産競争?」
「それだとギルド員同士の協調は出来ないからつまらないよ。
素材を資金で融通して各職合同生産だよ!」
「頼みます」
「強くなって技術力をこの世界に知らしめよう!」
正直こういう生臭い関係は好きじゃない。
でも動画の迷惑料として稼ぐ分だ。気にせず行こう。
それとなんだかギルド行事になった気がする。
「ギルドではこういう動画のギャラ渡してますか?」
「言う人はいないかなー」
「こういうつながりは割と大きいですよ。
自身の行動で何かもらえるという関係は多少の人間関係のごたごたを無視させてくれますから」
「ふむふむ」
「今回みたいにお題をだして資金を出せばそれで騒げます」
「確かにそれいいね!」
ボスが投げやりに対応している気がする。
私うざいだろうね。
話はこの辺りで止めておこう。
「デスペナが解消されるまで少し寝ます」
「うん、了解。お休み」
「おやすみなさい」
個別チャットを切った。
やはりうざがられているのかもしれない。
特に引き留めもない。
いえ、考えすぎです。
面倒な思考回路にイラつきます。
あぁ、女々しい。悪い意味で女らしい。
うさぎんのお腹をぷにぷにしながら体を屈めたらいぬくんが苦しいと身動きした。すまぬ。
ごめんね、といぬくんの頭を撫ぜ至福の時間を過ごす。
首回りにいるへびちゃんが冷たくて気持ちいい。
~~~~~~~~~
デスペナが解消されると私はベットから起き上がろうとした。
いぬくんにのしかかられていた左腕が痺れて動かない。
いぬくんの下から体を使って左腕を引き抜き右腕で起き上がる。
麻痺まで再現されているのか。性能高い。
左腕を引き抜かれたことでいぬくんが首だけ上げて私を見つめた。
私はいぬくんの頭を撫でると目をつぶり気持ちよさそうにした。
手を離しベッドから降り立つと私は大きく伸びをする。
骨が鳴りそう……ぱき。あ、鳴った。
いぬくんも大あくびをしぐっと身を起こす。
体を伸ばすと私を見上げ軽くわんっと吠えた。
散歩行こうって誘っているかのようだ。
へびちゃんは首に巻いている時点で体温が上がってしまい寝るような体調にならなかったようだ。
ようやく起きたの?とばかりに顔を頬にこすりつける。
私はその頭を撫でてあげた。
うさぎんはきょときょとしながら起き上がる。
耳を後ろに伏せて不安そうな顔で見上げた。
私はお腹を両手で支え持ち上げると片腕にうさぎんをのせた。
赤ちゃんをだっこするような方法でだ。
うさぎんは手足を上に向け無抵抗な状態になる。
顔を上げ下げしかわいい。
たぶん不安で周囲をうかがってるだけだろう……。
あ、私だとマジ泣き数秒前状態ですね。
ストレスになるのでこういうことは止めたほうがいいですね。
では、まぁ、とりあえず行こうか。
何をしに行きますか?
ヤゴを倒す?あれはまだ対応策がないのでムリです。
ヤゴがデカ過ぎてカニちゃんじゃあ食べられてしまいます。
それにヤゴってお尻から水を吹きだして高速移動できるんですよね。
はっきり言って水中で戦って勝てるのは防御の高い高レベル者くらいだろう。
ほかの人は飛んでくるアゴにガジガジされて、近づこうと思えば高速移動で逃げられる。
ヤゴは下アゴが長い。カエルやカメレオンの舌の様に。
ほかに対水中用サモンモンスターもいないので倒せないですね。
林の探索、斥候はヘビちゃんでピットセンサー期待。
林ではシカとか見かけなかったなぁ……。
いるのはヘビに怯える小動物だろうか?
となるとネズミ、ヤマネ、モモンガ、ウサギ?くらいだろうか?
里山ならキツネやタヌキ、シカ、サル、ハクビシン、イタチとかいるかな?
その辺りになるとヘビに怯えるどころか反対に捕食する場合もあるね。
タカやフクロウとかキツツキとかアカゲラとかオナガとか鳥類だって居たっておかしくない。
ファンタジー系統はまだ出てこないのかな?
情報ではゴブリンとか出てきているのだ。
もう少し先のフィールドで出始めるのだろうか?
先は長いなぁ。
今は戦闘目当て兼MAP作りかな。
モンスターの分布は書いてあってもさすがに木の分布や植物の分類は見当たらない。
こういうものはあれば助かる。
時間帯で復活するので制限もほとんどない。
生産する人にとってはいい情報かもしれない。
素材の特徴なども把握していけば利用するのが私だけだったとしても便利だ。
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林を探索中。
林の植物を種類ごとにマーカーをMAPにつけていく。
種類ごとに写真を1枚撮りMAPの端に貼り付けていく。
高木だけ、低木だけ、草だけ、キノコだけ。
MAPは以上4種類。
植生を調べることで動物の生息域を推測することが出来るだろう。
現実なら虫に集られたりで長時間の活動は難しい。
ノミやダニに首筋などを噛まれたり、蚊に食われたり、ヒルに吸い付かれたり。
あ、そこら辺はモンスター化してないだろうか?
ヤゴがあのサイズになっている現状そういう生物も巨大化してそうだ。
環形動物は解放血管系だ。
サイズは現実以上に巨大化するのは難しい。
体内がヘビと同じになればその限りではないね。
虫の類も内臓が哺乳類と同じ形状になればその限りでない。
DEFが考えている通りならいくら巨大化しても心臓の壁や血管壁がもたないということはない。
防御が高いモンスターほど巨大化できると言えるかもしれない。
象とかどんなサイズになるんだろうか?
恐竜なども出たらサイズがインフレしていきそうだ。
数十mサイズ?普通ですね。なんて世界が広がっているかもしれない。
恐ろしや。恐ろしや。あな恐ろしや。
ヘビちゃんや、斥候だけでいいんだよ。
まだ接敵すらできてないのに討伐報告が届くんだ。
どこに死体があるかもわからないからドロップ拾いしか選択できないよ……。
たぶん捕食しているんだろうけど。
丸のみになった小動物って体の骨がバキバキに折れることで死ぬか窒息で死ぬか。
骨折の方が基本早いだろうね。
体内に取り込まれた死骸ってドロップ選択したら体の中から消えるのかな?
消えてそうだなぁ……。
毛皮とかドロドロになってないよね?
そこまで消化が早いわけじゃないからたぶん毛皮がそんな状態になっているとは思えない。
でもビルマニシキヘビはワニを1週間で消化しちゃうらしいしなぁ……。
毛皮なんて1瞬で溶けちゃうかな?
ドロップは小さな牙が24本。
ヘビちゃんどんだけ食べれば気が済むの?