21、憂鬱
バカっぽそうなモンスターなら印象操作でトリにしたような方法で行動不能に陥れて倒せるだろう。
草原のイヌやネコにはかかりそうにないよね……。
トリはかかったしかかるだろうか?
攻撃されたらすぐに倒される自信がある!なんとなく!
四足獣は背中に向けて攻撃できない。
背中を抑えることが出来れば勝利を拾えるだろう。
けれど背中を抑えるのは現実でも嫌がる犬や猫相手では難しい。
ゲームの中でだってある意味同じだ。
むしろ相手が攻撃することを躊躇しない分余計に背中を抑えることは難しい。
敵が正面に来るように立ち回り背後に回らせない。
数があるから少しは背後をつけると思えば弱かったサモンモンスターでは歯が立たなかった。
これでは上手くいくわけない。
幻術スキルが効かなかった場合勝利の目がなく2の策がない時点で挑みたくない。
草原をやめて林に向かおう。
なにかいいモンスターがいるかもしれない。
いや、その前にゼリーとカニとトリは倒しておこう。
だいたい6レベルにまで上がるはずだ。
料理を作って食べさせれば10レベルまで上げられるかな……。
気が遠い。
考えて苦労する分にはいいか。
何も考えずに行動するのが一番退屈する。
退屈するためにゲームしているんじゃない。
退屈しないためにゲームしているんだ。
普段しないこと、出来ないことをしたいからゲームをするんだ。
ここで私がしたいのはいろいろ思考を広げ複合的に考えること。
パズルのように順序を考えることや本のようにフラグから先を想像することではない。
ただある仕組みに従って物事を自分で組み立てていくこと。
あと現実ではイメージばかり考えてしまい行動に自分で制限を大分かけているので、アバターの姿で普段とは違う自分を演じること。
自身のロールを変えれば見方から変えることが出来る。
思考も普段と違う組み方を出来るので面白いのだ。
だから私はRPGが止められないのだ
なんかうだうだ色々考えてたらやることが終わった。
1度考えれば同じことをする時は全て作業になってしまうなぁ……。
ついでに午後8時になっていた……。
意識になくても作業になっていても時間は経つものなのだ。
ギルドに戻ると人がいなかった。
チャットのログを見るとお昼に4人の新入り達はログアウトしていた。
昼休みにログインしていたのだろうか?
ボスは外で呼びかけでもしているのだろうか?
素材拾いでもしているのかもしれない。
ギルド情報を見るとボスは既に現状のカンストの30レベルに達しているレンジャーだった。
ボスにすることは多分素材拾いと生産くらいしかないだろう。あとは資金集め。
プレイヤーウォッチングでもしているのかもしれない。時折勧誘でもしてそうだ。
新入り達はファイター、プリースト、パフォーマー、メイジだった。全員ベースカンスト……。
アバター作成日は1週間前だった。
私?2週間前でした……。β開始から始めた初期勢ですよ……。
サモナーだからカンストしにくいんだよ……(震え声
逆差別がひどすぎる……。
カニとトリを料理してしつけをして食べさせてレベル上げ。
ピュアちゃん以外10レベルになった。
ピュアちゃん?8レベルです。戦闘は参加してないけれど料理は食べているので。
進化はいつになるのだろうか?
プレイヤーが2次職になるタイミング?
大分先になりそうだ。
この会社の傾向からしてしばらくはカンストレベルの引き上げはないだろう。
となると進化も随分先になる感じになるだろう。
忍者の時は50レベルで2次職だったなぁ。
5レベル間隔でカンストレベルの引き上げがありキャップ引き上げは1ヵ月かかる。
進化は4ヵ月くらい先になるのだろうか……。
定期メンテナンスは1週間に1度水曜日午前8時から正午までの4時間。
ここしばらくはバグ直しの報告が多い。
サモンモンスターにバグが誰が報告するんだろ……。
私が気づかなかったら誰も報告しない気がそこはかとなくするのは気のせいか?
あぁ、心が冷えてきちゃった。
ちょっとサモンモンスターをもふっておこう。
アニマルセラピーになるかな……。
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カニちゃんをしまいピュアちゃんを呼び出す。
カニちゃんっていじる場所が見当たらないから困るの。
戦闘では頼りになるんだけどね。
とりあえずギルドの部屋に入るとベットに座った。
なんでベットがあるのかわからないけど寝ころびやすいから使おうっと。
ピュアちゃんを抱えるとベットに寝ころぶ。
体温を吸い取られる感覚が気持ちよくて体全体で抱きしめた。
力を込めると沈み込む感覚に夢中になりながらベットを転げまわる。
ねずみんが頭に乗ってきた。地味に重い。
かまってほしいのかなと手を伸ばすと避けられた。ちょっとさびしい。
見つめてみると尻尾をくるくるゆらゆらさせて、何か期待しているようだ。
指を2本使い人をもしてねずみんに向かって進ませてみた。
ねずみんは指から腕に向かって駆け上がり肩に乗っかり耳を舐めてきた。
くすぐったくて笑ってしまいベットを転げるとねずみんが落ちてしまい抗議の鳴き声をあげてそれにも笑ってしまう。
とりちゃんは1人さびしそうにこちらを見ているので指を差し出すと乗っかってきた。
指を使って頭やのどをなでてあげると気持ちよさそうに鳴き声をあげた。
ほかの2匹がかまってと体当たりしてきたので抱き付いて転げてひとしきり遊び続けた。
最後は抱き付いたまま眠ってしまった。
心が想像以上に疲れていたのだろう。
ゲームの中で眠ること数時間、午前1時を回った頃ようやく目を覚ました。
「おはようございます」
「おはよー、眠り姫ちゃん」
目を開けた私の周りにはお昼見た新入りさん以外にも数人のプレイヤーを確認出来た。
寝ている姿を見せたか……。
別にいいのだけれど。
アバターとはいえ寝ている姿を見られるのは少し恥ずかしい。
子供なのはアバターだけ。
中にいるのは顔もわからぬおっさんだというのは周囲は理解しているだろう。
おっさんがスライムやネズミや鳥と眠る姿をアバター越しに想像していると考えるとどれだけ気持ち悪いんだか。
「見苦しい姿を失礼しました」
「いやいや休んでいるのはいいよ。
ゲームとはいえ眠れば休むことができるから無駄にはならないんだし」
周囲もその言葉に頷く様を見せてくれた。
ただ中の人を気遣う様は本物だろう。
でも自己嫌悪感は治まらない。
相手が不感に思うことをしてしまったと自身を苛み続ける。
考え過ぎだとか、もっと気楽にとか言われる類のことだ。
自身の性分とはいえもう少し落ち着かないだろうか……。
血圧が測定不能。
平常時になんとなく測定器に腕を通した結果だった。時期は高校生の頃。
2度3度測ると最高血圧80だったり200だったりした。
その時一緒にいたメンバーも測ったが測定器は120から140と正常な数値を示した。
私の気分はこの血圧のようなものなのか?
「みなさん、集まっていますが何かする予定でもおありですか?」
「ギルドにメンバー10人以上集まった記念かな?」
「俺初めて聞いたんだけど!」
「だって今決めたんだから!」
「で、何するんだ?」
「とりあえず生産分野でグループ分けかな。
調理、鍛冶、木工、パフォーマーで別れちゃってー」
「了解ー」
「あいあいさー」




