18、鳥を料理しよう
解体を始めた時からずっと後ろから見ていたのには割と簡単に気付いた。
ギルドに入る時テレポートのような感じで入るため風は起こらないが移動したりすれば空気が動く。
ギルド内で空気が動くときは人が動くときだけ。
自身の動きで空気が揺れる場合多少の抵抗を感じるが風のようには感じない。
他人が動いたときは自身の動きと違う向きで空気が揺れるので風のように感じる。
そこから動きを読めるほど私は敏感肌ではないが。
とりあえず自分以外の人がいることくらいはすぐにつかめる。
風通りがないところ限定だが。
目の前で頭をはたかれ床で笑っているこのボスさんどうしましょ?
彼女は話を聞くと撮影の後で許可をとるつもりだったらしい。
カメラマンとしての義務だそうだ。
自然体でない被写体は絵がきたなくなるので自然と撮影後に許可をとるようになるという。
なお動画はギルドの宣伝のために使うらしい。
ログアウトしたら現実で編集をかけて魅力的にするつもりらしい。
大企業型ギルドの場合人数こそ力だという。
今の現状2人なんていうのはちょっとないな、らしい。
目指せ1000人というけれどそんなに人が来るのだろうか?
なお既にギルドのホームページが作ってありギルドメンバー入り口と紹介ページがあるという。
しばらくしたら取引口もつくり受注や商品の展示など置く予定だそうだ。
なんというかもはやゲームだけの存在ではないギルドじゃないだろうか?
いや、もう気が早すぎないか?
「出来ることは早いにこしたことはない。
有名になればそれだけおいしいんだもの!
君となら世界が狙える!」
なおボスは広告収入が目当てだそうです。
実利目的でした。
PVを稼がないことにはお金になりにくいので宣伝力をあげるために目立つ人がほしくてちょうどよかったとのこと。
WEBサイトで広告収入について調べるとPV数の4%~50%程利益を見込める模様。
50%も利益を出す人は出す広告も選んでいるみたいだ。
ゲーム関連サイトではどの程度の人が広告に手を出すかはわからない。
まぁ、関連サイトまで見るようなゲームやる人自体ある程度お金を使いたい人であることが多いと思う。
なのでPV数の3%をギャラとして請求しゲーム内で品物で月毎に払ってもらうことを飲んでもらった。
換金率は課金アイテムをゲームマネー換算で決めたもの。
ゲームマネーでいくらの品物をもらう形だ。
実際の収益がどれほどのなのか把握できないがPVを確認するくらいならできる。なのでこの方法だ。
広告収益の利率が上がれば上がるほどボスは得するのでしっかり広告を選ぶかもしれない。
この計算方法を伝えて交渉したのでボスは諸手を挙げて取引成立した。
なお被写体となったのでそれを理由に動画の削除を検討するといった処置。
ボスが払わないという選択はなかった。
なお草原で盗撮された私の解体動画はボスは撮っていない。
その動画のPVは新作ゲームとしてはとても高いそうです。
「実際君の行動は面白かったもん」
「しょうがないですねぇ。
事前に撮る可能性がある人には言っておいてくださいね。
急にカメラを回されていることは普通の人には嫌なことが多いですから」
「あー。うん」
生返事。説教臭かったからねー。
やっぱり雑談能力が低いから話を聞いてもらえないのだろう。
注意を引きつける話を織り交ぜて心地よい空間を作る能力がほしい。
そしたら少しは交友関係が広がるだろう。
誰かに頼り頼られる関係ってすんごくうらやましいよね。
そもそも頼りたいことが滅多にないのが私クオリティ……。
自分1人で出来ないことなんてそもそもしたいとか思いつかないのだよね。
関わろうとしてうざがられるのが関の山。
「そのトリはどうするの?」
「料理します」
「ふむふむ……。食べてもいい?」
「1品ずつなら。
後はサモンモンスターにあげてみようかと思ってます。
もしかしたら経験値になるかもですし」
「え、サモンモンスターってご飯でレベル上がるの!」
「はい、たぶん。
それとプレイヤーも生産スキルがなければカンストは厳しいと思いますよ?」
「あー、うん、確かにアチーブメントの仕組みからしてベースレベル上げるの生産しないとムリだよね」
「サモンモンスターの場合わかりませんがたぶん生産をすることが出来ないと思います。
そうなると経験値を上げるのにご飯をあげるのが条件になるかもしれません。
公式にご飯をあげようと書いてあるのに今まで要求されていないところからしても疑わしいですね」
「そっか」
話も一段落したところで料理を開始した。
まず背骨から鳥皮を剥ぎ取りフライパンで焼く。
弱火で鳥皮を炒めると油が出るのでボールに回収していく。
火が強いとフライパンに皮が張り付き焦げるので注意。
今回使っているトリはスズメみたいな感じの小さなトリのため2分割程度にしかしない。
油が抜けるまでの時間は鶏だと1時間程かかるけれど小さなトリのため10分もしないうちにカリカリになった。
軽く塩をふりまず1品。鳥皮のカリカリ揚げ塩味。
ガラスープはショウガなどの臭み消しがないと人に出せるものは作れないので今回は作らない。
人に出す気がないなら実験気分で作るのですがね。
内臓は塩振って串にさし直火にかける。
トリもつの焼き鳥だ。
これも味付けは塩味。
この火ってどこからでてるんだろう?
宙から突然火がでているよね?
ガスの火じゃないといいな。
ガスは炭化水素なので燃焼すると二酸化炭素と水になる。
だからウナギや焼き鳥など直火にかけるものはべしょべしょになる。
あと都市ガスの場合はガス漏れに気づくために腐った玉ねぎのような匂いをつけているのでその匂いもつく。
よってガスで直火焼きをすると臭くて不味くなる。
炭火焼は燃料が炭、つまり炭素だけなので燃焼して発生するのは二酸化炭素だけ。
だから直火焼きをすると火が通り水分も飛びパリパリした触感になる。
そして燃料となる炭がいいものであると食材に木の匂いが付き風味豊かになる。
調理スキルの火が只の熱源として用意されている場合炭火焼と同じで水が発生しないため食材がべしょべしょにならないという特典がつくのだ。
ちなみにだが薪は燃料とした場合二酸化炭素と水が発生する。
薪を燃やさないように加熱し水分を飛ばしたものが炭であり、薪には水分が含まれているのだ。
さてなんかまたカメラを後ろで回しているボスがいる。
またギャラをとってやろう。
トリの油を使いトリの手羽先、手羽元、胸肉をまとめて揚げる。
油の中でトリから出た水分が蒸発し爆ぜる音が徐々に大きくなり小さくなる瞬間引上げキッチンペーパーの上に置く。
軽く塩を振り終了。
トリの羽の揚げ物の完成。
ささみから筋をとり湯がくだけ。
ささみの中央に白い線のような筋があるので包丁で取り除く。
十分に火が通るまで湯がいて終了。
前述した通りスズメサイズなのでささみはかなり小さい。
「これで料理は終了です」
「おぉ~!」
「味付けは塩だけです。1口だけなら楽しめると思いますよ。
それ以降は少し物足りなさを感じるかと」
本当に塩しか調味料がないのが問題だ。
早急に作らないといけないな。
大豆のような豆を見つければ醤油もどき、味噌もどきが作れる。
米のような穀物を見つければ穀物酢、みりんもどきが作れる。
小麦のような穀物があれば小麦粉もどきが作れるだろう。
早いところこの類の植物見つけないといけないなぁ。
出汁をとるための食材も探さないと……。
海で戦えるようにならないと昆布とかイワシとか採れないよね。
山の素材もそうだよね。
やっぱり強くならなければ!
強くないと満足できる料理ができない!
頑張ろう。




