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103/110

103、ボストンボ戦3

 もう100個は投げた気がする。

 投げ始めてから10分近く経過しているんじゃないかな?


 幻影のCTの消化を待つ間耳をすませてソニックブームの発生を感知しようとしているのだけれど音がしない。

 手で待機中のぬこにゃんやからすみをあやしたりもしている。


 ぬこにゃんは少しのどをさらすようにして、なでても構わないんだぜ?とばかり構えていた。

 なでてあげると目を細めて気持ちよさそうである。


 からすみは首の後ろをなでてあげるとちょっとビビりがちなのか身体を時折縮こませていた。

 ただなでないと不安げな顔で上目遣いをしてくるので、なでるのを止めることはなかった。


 石を配置するローテーションは、私が遠距離へ、ぬこにゃんが近場へ、私がぬこにゃんとは反対側の近場へ、からすみが中距離へと運び、それからまた私が遠距離へという感じだ。

 このローテーションを2回程繰り返したら近場の幻影へと移動し幻影の配置を再開する。

 始めの方はローテーションを1回する毎に移動していたのだけど近場に幻影も増えてきたこともあり移動ペースを落としていた。


 本当に不気味な程反応がない。

 もしかしたらどこかで反応しているのかもしれない。

 でもそれを私が感知出来る範囲で起こっていない。

 パーティのHPバーを見る限りでは誰かを攻撃しているわけでもなさそうだ。

 霧を使って探知している可能性は低いのかな。


 マップを確認するとスペードさんは大分離れたところで動き回っているようだ。


 パーティメンバーの位置を確認することだけはスマホからでも出来るけれど、ここにボストンボの所在地は表れない。

 マークから山や川の位置はわかるけれど等高線があるわけでもない。

 今回に至ってはだだっ広い石の川原というフィールドなのでそんなマークすらない。

 それこそパーティメンバーが離れた場合の現在地確認くらいしかこのマップには用途がない。

 罫線はひかれているから大まかな距離は把握可能なので、Wikiにあげられたマップとの併用で通常フィールドでは役に立つけれど、ボス戦などの臨時フィールドではあまり役に立つ機会がない。


 いるかどうかはわからないが、カメレオンみたいな敵がいた時マップでモンスターが表示されたら拍子抜けになるだろうなぁ。

 普通のモンスターでも奇襲されないだろうし、圧倒的ヌルゲーモードになるかな?

 そもそもこのゲームでは敵を見つけることがすごく難しい。

 襲われてから戦闘するなんていう方法が一般的だといえるほど敵を見つけにくい。

 私のようなタフさに欠けるステータスビルドはねずみんやいぬくんといった索敵担当がいないとまともに戦闘を始めることすら難しい。


 ……この点サモナーは優れているのか。


 普通、プレイヤーは気配の探り方とか隠し方とか歩き方とかわからないものね。

 その点、サモンモンスターはここの運営が作り上げているので完璧に対応出来る。


 先制攻撃をするなんてことが出来る能力を持つプレイヤーはそれこそ稀だろう。

 そんなプレイヤーいるとしたらどこの狩人さんですか?

 銃とか使えない時代の狩人さんじゃなければそこまで近寄る能力など必要ないし鍛えられていないと思う。

 鉄砲伝来した戦国時代より前の凄腕狩人さんじゃなければ先制攻撃なんて出来そうにない。


 物思いに耽りつつ幻影を付与した石を投げていると、割と近いところでがつんと鈍い音がした。

 私は反射的にその場にしゃがみ込んだところ、背中に何かがかする感触と急に足がふわっとなった。


 そして気づくと私は空の住人になっていた。


 現状に対する疑問で混乱する中、辺りを見渡すと、一瞬で遠ざかる地面、霧の向こう微かに見える地面は、あまりの高速のためか、灰色一色にしか見えない。

 頭を軽く動かしてみると硬い物が当たっている。

 背後を確認出来ないので正確にはわからないが非常に硬質なもの。


 ……これって私、ボストンボに吊り下げられてるんじゃない?

 あららー。


 そういえばトンボって、脚で獲物を抱え込み、それからアゴでかじりつくように食べるんだったっけ。

 つまりこのままだと私は喰われると。

 前回はヤゴに。今回はトンボに。


 ……死亡フラグはトンボとともに?

 やですよ?そんなの。

 今回は悪運強くまだ生きています。


 状況からしてたぶん後ろ足の爪が襟口から引っかかり吊り下げられているのかな。

 装備が新しいおかげで、軍服みたいな厚手で頑丈な材質だからかな?、爪で服が破れることもなく吊り下げられているみたい。

 爪の引っかかり方が、私としてはよくて、アゴが届かない場所だったのかもしれない。

 音がした時点でしゃがみ込もうとしたおかげで、首などをつかまれることなく、やり過ごせたということか。


「すみません、今トンボの足の爪に引っかかっています。

 いい機会なのでここからトンボを落とすこと狙っていきます。

 マップから私の位置を確認すればボストンボの位置を確認出来ると思うので上手く落とせたらよろしくお願いします」


「テンコさん余裕があるね!」


 チャット欄に書き込むと音速で返信が来た。

 あと別に余裕があるわけじゃない。

 風圧で髪の毛とか横になびいて大変ですよ?

 身体が強い風で流されて、それを爪が装備に引っかかることで支えられているんですよね。

 力を込める必要もなく体勢は風圧で固定されているので余裕があるといえばあるんですが。


 現実の私だったら腕力が足りないので出来ないけれど、ここの私なら首の後ろ辺りにあるだろう爪をつかんで懸垂し爪を外してからのが出来るはず。


 私は後ろに手を伸ばして爪をつかもうとしました。


 ……さて。ここで思い出してみましょうか。

 このトンボのサイズはどのくらいでしょうか?


 あ、このトンボ、私にかぶりつくには巨大過ぎますね。

 私のサイズだとアゴとアゴのの隙間に入り込んで噛めません。

 ……つまり噛まずに飲まれるんですね。生きたまま。

 のどのところでミンチにされるんでしょうか……。

 たぶん途中でHPがなくなりデスルーラするんでしょう……。

 むしろそこまで来たらトラウマものだからしてください。


 あー、それとトンボが大き過ぎたからこそのこの状況か。


 幻影で巨大な石をぽいぽい投げていたら、その発生源を見つけて襲撃にかかるのは道理?

 幻影に隠れているから目測を誤り、中心付近をつかみあげようとしたら、私のしゃがみ込んだこともあり、装備に爪を引っ掛けるだけになってしまったと。


 まぁ、そっちはさておき、このトンボは大き過ぎる。

 トンボが大き過ぎるならその足もまた大き過ぎるのです。

 先の細い部分だというのに直径は1m近い。

 腕が回るような太さではない。


 そしてこのトンボは飛行中なのです。


 先ほど吊り下げられているといったけれど、風に煽られて地面と身体が平行になっているんですよねー。

 地面の景色がよく見えます。


 さて問題です。

 ここで万が一トンボの爪を装備から外せたとして、私はその後どうなるでしょうか?


 答え、風圧で吹き飛ばされ地面に叩きつけられて死にます。


 質問、トンボの足にしがみつくことで回避出来ないの?

 答え、足が太すぎて腕が回りません。十分な力でしがみつくことは困難です。


 じゃあ、どうしようか?


 外がダメなら中から行けばいいじゃない。

 この太さなら私が中に入れるよね?

 外骨格の虫なら中にあるのは筋肉と体液とかで硬いのは外側だし。


 私は手元にクローを出すとトンボの足に突き刺した。


 そういえば爪先って神経が集中している場所ですね。








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