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102、ボストンボ戦2

 ボストンボが飛び立ち霧の中へ消えていった。

 モスキート音のように甲高い音が聞こえればいいのだがそんな音は聞こえやしない。


 しょうがない。

 トンボは蚊とは違い羽ばたいているわけじゃない。

 蚊は羽を激しく動かしホバリングすることが出来るがそこに速度を求めていない。

 高速で羽を動かすことで空気中のある一点に留まることが可能になったものの、激しく羽ばたくことで空気が振動しあの不快な音を立ててしまうのだ。

 トンボは出来るだけ羽ばたかず滑空して飛んでいるのだ。

 上昇気流を利用したりして高く舞い上がったり、多少羽ばたくことで気流がなくても舞い上がったりするが基本的に高所から滑空し飛んでいく。

 蚊とは違い羽ばたいていないから空気を押し退けることもなく、音を立てることもない。


 霧という悪視界の中、ボストンボはどのように知覚をするのだろうか?


 コウモリなどであれば超音波でエコーを見て動く。

 ヘビであればピットセンサーで熱を感知し獲物を見つける。

 蚊やハエなどであれば二酸化炭素濃度から生物などを見つける。


 ちなみにだが何かしら腐敗する場合、多くの微生物は酸素を吸収し二酸化炭素を放出する。

 コバエなどはその二酸化炭素を感知しエサを探すのだ。

 視覚はあまり性能が良いものではないので食料の探索には向かない。


 基本的に視覚に大部分を頼っているのは鳥か猫、そして猿のような雑食動物、他は草食動物の多くだろうか?

 移動能力が高く食料を調達しやすいか、食料となるものが見つけやすいかが争点になるだろう。

 肉食動物のように他の生物を狙う場合や特徴的なものを食料としている場合、視覚に頼っていては食料を調達しにくいのだ。

 肉食動物などの視覚は近場を把握し障害物を避ける程度にしか使わない。

 食料としやすい生物は小さいため見つけにくいだけではなく擬態することが多く視覚を使って見つけることは他の感覚を使って見つけることよりも困難なことが多いためだ。

 物の輪郭さえ分かれば障害物を避けるには事足りるし、遠近を知るためには物の明度さえ分かれば事足りるので色覚もいらないのだ。


 不要な量の情報を入手するよりも、その情報を処理するのにかける容量を別の能力へと割いた方が生存率が高くなり、結局のところ進化の流れで不要と判断されたものは退化していく。


 トンボの多くは移動速度が速く行動範囲が広いため食料を見つけるために視覚を発達させている。


 とりあえずあのボストンボも視覚頼りだとしようか。

 霧による視界の悪さが私たちにとってデメリットになっても、ボストンボにとっては元々近視なので大したデメリットになりえない。

 しかし接近されなければ気づかれることもない。

 このフィールドがいつも通りの広さであればボストンボの移動速度を考えると1分もかからずに見回りきるのではないだろうか?


 ボストンボは音を立てることなく飛んでいること。

 音速を超える凄まじい速度であること。

 ジャンボ機のように非常に巨大であること。

 今回の戦闘は霧の中で行わなければならないこと。

 近接戦闘能力が高いという情報。


 予測している性能から想像していくとたぶんの戦闘方法は出来るもののこれが正しいとは限らない。


 もしかしたらこの霧をボストンボが発生させていて霧の中にいるものを全て知覚出来るなんてこともあるかもしれない。

 どれほど情報処理に容量を使われるかわからないが巨大化したことで容量が増えていたとしたら可能なのかもしれない。

 どういった進化の過程を経てそんな魔法を習得したのかが予測出来ないものの、ここはゲームの世界、多少のドラマさえ描けば能力の習得に対し文句をつける人はいなくなるだろう。


 強いて言えば次の街では魔法が盛んなのだ。

 例えばモルモットとしてここのトンボを使いとかなんとか理由をつけたり、魔法で霧を作り続けたらその霧を操る手段を習得しただとかでもいいかもしれない。

 もしかしたらサモナーがサモンモンスターに魔法を仕込んだところそれが野生モンスターと子孫を作りなんてこともあるかもしれない。


 まぁ、そんなところで一旦終了。

 重要なのは過程というよりもその能力がどういうものであるかだ。

 予測出来るものを情報整理で絞り込んで対応策をたてなければステータスが劣るサモナーは負けてしまう可能性が高い。


 とりあえず視覚で判断している場合なら、幻術スキルで障害物を作れば攻撃をされなくなる可能性が高いだろう。

 視界には障害物が目に入るばかりで攻撃対象の姿を見ることが出来ないのだから。

 もし動きを止めるようなら攻撃チャンスになる。


 万一、霧を操るボストンボの場合、実体を伴わない幻影は霧を押し分けることが出来ないために知覚することが出来ないだろう。

 つまり幻影は無意味。


 知覚方法の判別を兼ねて幻影を作りだしていこう。


「スペードさん、私、幻影を作りだしていきます。

 ボストンボが視覚に頼っている場合、攻撃ミスを誘発出来ると思うので、出来たら隙を見て攻撃をお願いしてもいいでしょうか?」

「OK!任せて!」

「もし知覚方法が視覚に頼っていない場合、動いている人目がけて攻撃を仕掛けてくるかもしれません、ご注意ください」

「OK!」


 スペードさんはチャットにコメントをしてくれた。

 発声してしまうとボストンボに気づかれる危険性があるからでしょう。

 スペードさん、やっぱりわかってる人だ。

 今回は速さより隠密性を重視しなくちゃいけない時だもの。


 私はまず足元の石に大岩の幻影を付与し、近くの小石を拾っては幻影を付与し遠くへと投げていく。

 小石は遠くでガツンガツンと衝突音を鳴り響かせた。


 近場に幻影が少ないと幻影の分布から居場所がばれてしまう。

 音の響き方が遠くに投げた時と近場へ投げた時で違うと居場所がばれてしまう。

 出来るだけ音の響きが同じになるように山なりに投げることで対応していく。

 ついでにもし空中で衝突音が聞こえたらそこにボストンボが居たとわかる。

 羽を石で撃ち抜けたらいいけれど流石にそこらの小石では攻撃力が足りないため防御力を破ることはムリだろう。


 音に対してどの程度反応するかは不明だが全く聞こえないということは考えにくい。

 音は空気の振動であり振動ということは触覚で感知し代用可能なのだから。

 触覚がなければ攻撃時手応えが分からないためなくすことは出来ないしありえない。


 ぬこにゃんとからすみが小石を口にくわえ運んできたので幻影を付与するとそのまま近場へと置いていった。

 音を立てることなく運んでいくのでこれはこれで助かる。


 しかし私まだ何も指示だしていないんだ。

 状況判断能力が高いのかな、幻影を付与した小石を辺りにばらまいているから手伝おうとしているのだろうか?

 もしかして遊んで?というサイン……いやいや犬じゃあるまいし。

 とにかく優秀な彼らに感謝を。


 スペードさんはこの幻影に紛れ込みながら音もなく移動していき霧の中へと消えていった。


 さて問題です。

 ボストンボはどこを攻撃しているでしょうか?


 わかりません。


 いや、わかるのか?ボストンボは音速を超える動きをするのだ。

 普段は速度を抑えているかもしれないが攻撃の段階で速度を落としていては獲物に逃げられるかもしれない。

 その辺りを考慮するとボストンボは攻撃時音速を超えるはず。

 つまりソニックブームが発生し居場所が判明するはずだ。


 また速度を落としたまま行動しているようであれば、その巨体が故に視認することは容易だと思う。

 といってもそこらの敵よりも大分速いはず。


 速くて、大きくて、硬いです。

 速いと好かれないらしいですよ?

 私なんか特に好きじゃないです。

 反撃がしにくいので。


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