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100、カニ?そんなのは比べ物にならない。

 さてさてこの狼さん、興奮しているワンコみたいな感じです。

 もう狼さんじゃなくてワンコさんでいいですね。


「正直言いまして、私弱いですよ?」

「サモナーだし、そんなのは承知しているから、いいの、いいの。

 あのテン子さんと組めるっていう事実の方が嬉しいからね」


 何やら過大評価をされている気分。

 いったい何が私の身にそのような評価を?


「ボストンボ狩りだけどどの程度把握してる?」


 中洲を跳ね飛びながら先へ先へと進んでいくワンコさんから声がとんできました。

 先ほどの無双で大分ポップするモンスターが少ないとはいえ、多少出てくるモンスターを軽く切り裂いています。もはや無人の野を駆けるが如く障害の1つもなく高速で移動しています。

 火力って大事ですね。

 あ、返事をしないと。


「高速で移動し、外装は硬く、薄い羽根は巨大化したことで、厚みが出来、鉄パイプ程度の硬さがあるので衝突注意。

 そして色によってその持つ特色は異なり、黒と黄色の体色で最硬のオニヤンマタイプや青でスピード重視のシオカラトンボタイプ、赤で魔法行使をするアキアカネタイプなど多様」


「そうそう。特色ルーレット。対戦するその時に初めてどのタイプなのかわかるから、対応装備を持っていくのも難しい。

 全く最悪の門番だよ」


 分かります。私の場合、きっと1番当たりたくない人と出会うんですね。


「あ、もしかしたら、こういう敵にはサモナーさんは強いのかな?」

「戦闘中にはメンバーの交代は出来ないのであまり条件は変わらないかと思います」

「そっか」


 あれ?そういえば戦闘中にはパーティーメンバーの交代は出来ないって仕組みはあるけれど、パーティー外であればサモンモンスターの交代は出来るのかな?

 いぬくんは今何しているのか分からないけど、たぶん戦闘などもこなしている時もあるだろうし、それでも私はサモンモンスターを入れ替えている。

 パーティーメンバーに加えなければ、サモンモンスター当人が戦闘中でもなければ入れ替えが出来るのかも?

 出来たら後出しジャンケンじゃないですか。


 いや元の性能から考えてみれば、相性が良くても五分五分なのか。

 まぁ、それでも相性優劣を必ず整えられるというのは大きなメリットだろう。

 後でどこかで試してみようかな。

 さすがにいきなりボス戦ではやりたくない。


 ……あれ?これ、もう1つメリットとして、サモナーさんがパーティーに加入しても、サモンモンスターが加入しないでいるっていうことが出来るんじゃないかな?

 そしたらサモンモンスターは乱入という形での戦闘補助になるだろう。

 サモンモンスターの単体としての能力はプレイヤーパーティーと比べたら圧倒的に劣っている。

 アチーブメント泥棒やドロップ泥棒を行うようなことはまずありえない。

 デメリットとしてはサモンモンスターがその戦闘ではアチーブメントを稼ぐことが出来ないため育たないことだろうか?

 いや、AIの行動の幅の成長やサモンモンスターのスキルの熟練度が上昇する?

 その戦闘がサモンモンスターにとってムダにはならないか。


 もしかしてサモナーって育てたモンスターを使ってパーティーを補助する職なのか?


 サモンモンスターを増やすのはサモナーとサモンモンスターだけでのパーティーしかダメだけれど、サモンモンスターを育てるのは外部委託も可能。

 パーティーでは外部から相性の良いサモンモンスターが攻撃を加え敵の隙を作りだす。ただしその戦闘ではサモンモンスターはアチーブメントやドロップを稼げない。


 育てば便利な職になるだろうけれど、育つまでが非常に時間がかかる職っていう感じかな。

 育つまではパーティープレイで需要なしだろうけれど。


 目の前を縦横無尽に跳ね回り、周囲の敵を殲滅していくワンコさん。

 私が直線で最短距離を移動しているのに、あっちで斬って、こっちで蹴って、あそこでスマホ操作してモンスター集めてなど寄り道の多いワンコさんには追いつけない。

 ワンコさんの方にモンスターが集中していくので、私の方はモンスターが欠片も来ません。


 やっぱりワンコさん呼びは失礼過ぎる気が……。

 アバター名のスペードさんの方にしましょう。

 トランプのスートでスペードって確か剣や戦争、兵士や貴族の象徴でしたっけ?

 似合っている気がします。


 因みにダイヤは宝石でお金や商人の象徴らしいでしたっけ。

 ハートが心臓で生命や王族の象徴?

 クローバーはシロツメクサとかそういう植物としてのクローバーで農業や生産、農民や庶民の象徴でしたっけ?

 何だか対応したメンバーがいそうですね。


 目の前を飛び交う黒い尻尾はつかめそうでつかめない。

 狼の人はみんな触り心地よさそうな尻尾を……げふん、なんでもありません。

 私の前を狼の人達はいつも駆けてゆく。

 力を、素早さを、そして率いていくリーダーシップを、私にはないものを持っている。


 彼らの生き方は眩しい。

 私は彼らのような人を引っ張る強い力に憧れる。

 例えそれが何であろうと、強い力は周囲に伝染し、周囲の人を巻き込んで人を人間たらしめる。


 私は小細工を弄する以外に出来ただろうか?

 私の近くに強い力の人は多い。

 けれど私は彼らの力に乗ることが出来ず、人間になれなかった。


 半端に自意識が強いのだろう。

 自意識を曲げ、付和雷同する。

 自意識を伸ばし、強い力として働く。

 私はそれのどちらも選択出来ていなかった。


 私は自分を曲げられるだろうか?

 いや、もうこれ以上曲げられる部分が思いつかない。


 じゃあ、どうする?

 自分を貫けばいいのだろうか?


 今、サモナーという職を貫いていると思う。

 ご新規さんにも知られているレベルだ。


 サモナーの先駆者となれば、サモナーの道標となり、彼らのように楽しめば、私は強い力となれるだろうか?

 もうある程度は環境は整っている。

 素養は十分あるはず。

 サモナーの新規さんも始めやすい環境は作れている。

 発信力も期待出来ると思う。


 私はサモナーの道標となり、人間となる。


「そろそろボスの所だよ」

「はい、よろしくお願いします」

「こちらこそ割り込んでごめんね」

「いえいえ、正直、勝率は低いだろう、出来るところまでいってみよう、そんな調子で考えていましたので」

「それって遠回りな自殺?」

「最後には勝てば勝ちなんです、経過は情報収集です」

「そっか、人に迷惑かけないサモナーさんだものね。

 死に覚えをしても文句は言われないね」

「あ、私、死んだ事は1度しかないですよ?

 そんなに死に覚えはしてません」

「なんと!」


 ヤゴに不意をうたれてパックンチョされた時以外私って地味に死んだ事ないんですよね。

 際どい敵も数いれど倒してはいるんです。

 ボス戦の地獄は忘れられません。


 軽口を叩きながら視界に入ったその円陣に私達は入って行った。

 隣では背中に包丁を差したスペードさんのビシッとした姿。


 あれはやっぱり中華包丁です。刃渡りやサイズなどなどは非常に巨大化していますが、その刃物のバランスが完全に中華包丁です。

 その形状は平たく幅広。

 厚さは太いところで拳1つ程あるでしょうか。

 柄は、現実のバランスを考えると短過ぎるものの、50㎝程度だとみとる。

 しかしその刃は非常に薄く、峰の方は肉厚で平たいが先の方にコブがある。

 重量のバランスを考えると遠心力で勢いよく振り回しても動き方が安定するのだろうか。

 刃はその鋭さを持って斬り、峰にあるコブを打撃点にし、そのサイズと重量を持って叩きつける事で鈍器と出来そうだ。


 私はそれを横目で確認しつつ、円陣を起動した。


 拝啓、1秒前の私は戦闘に向け気分を高めているところでしょうか。

 こちらでは敵は相も変わらず理不尽だと否が応でも思わされております。

 目の前にはいつだったか乗ったジャンボジェット機と同じかそれ以上のサイズだと思われるトンボがいます。

 色は白です。

 フィールドは霧が立ち込めていて、10m先は白くて見えません。

 助けて。




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