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御社でのお勉強

第8話です

「似合うじゃない。」


 巫女装束を纏ったサクヤに、コノハは懐かしくなり、感慨に耽る。

 サクヤは比較的背が高いため、違和感なく着こなしている。


「じゃあ、行ってきます。」


 小平太とは昨日喧嘩別れしたので、1人で社務所に向かう。

 社に向かう参道を歩いていると、里の者達(主に男)の視線を感じた。


 サクヤは黙っていれば美人だし、歳の割に発育もよく背も高いので、大人びて見える。巫女装束なので尚更であった。


「あら、サクヤちゃんじゃない。巫女になったのね。良く似合ってるわ。」


 顔見知りのおばさんには、尽く同じように声をかけられた。


 目線を注いでも、声をかけてこないのは男衆である。大人びて見えても今年で10歳になる新人巫女だ。鼻の下でも伸ばそうものなら変態扱いなので、下手に声もかけられない。ましてや邪な心でも現れれば死活問題となる。


 そんなサクヤの後ろを、心配顔でこっそりついてくる小平太の姿を見る里の者の目は、明らかに不憫な者を見る目だった。



 社務所に着いたサクヤは、講義を受ける部屋に案内された。7人で使うには広いと感じたが、いつもの用途は違うのかもと納得した。

 部屋には先客が2人いた。昨日の量りの儀で一緒だった、男女である。

 名前はわからないし、話もしていなかったので、おはようと挨拶だけして、空いてる席に座った。


 少しすると小平太も入ってきて、サクヤの隣の席に座ったが、サクヤはそっぽを向いたまま口を利かなかった。

 小平太は、一瞬打ちひしがれた顔になったが、小平太にも意地があったので、対抗してそっぽを向いた。


 2人が反目し合っている間に、全員が揃う。サクヤとは反対側の小平太の隣に座った竹蔵は、喧嘩の理由を知らないので戸惑っていた。


「なあ、何かあったのか?」

「別に。」


 そっけなく答える小平太に呆れた竹蔵は、関わり合いになるのを早々にやめた。



「全員集まったようだな。」


 部屋に入ってきた藤十郎は、講義の開始を告げる。

「これから1年、ともに学ぶ仲間だ。まずは自己紹介から始めよう。」


 藤十郎はそう言うと、手始めに自分の紹介から始めた。 


「昨日も名乗ったが、改めて今回の新人担当の藤十郎だ。以前は宮守山兵の槍頭を務めていたが、今は宮司の補佐をしている。」


 そう語った藤十郎だが、白髪交じりの長髪で、眉間に深いシワを刻み、それなりの年齢に見えるものの、均整の取れた体に緩みは感じず、背筋の伸びた隙のない佇まいであった。

 

「では、左手側の者から順に始めよう。」


 そう告げられ、一番入口に近い席にいた少女が立ち上がり前に出た。


「伊都と申します。木造の集落から参りました。よろしくお願いします。」


 小柄で可憐な少女が、消え入るような声で挨拶した。


 次いで竹蔵と小平太が挨拶し、サクヤの順番になった。


「門前通りのサクヤです。皆さんの迷惑にならないよう頑張ります。よろしくお願いします。」


 小平太と竹蔵以外は、興味津々の目でサクヤを見ている。


(やっぱり昨日悪目立ちしちゃったもんねぇ。)


 視線から逃れるように席に戻ったサクヤは、小さくなって俯いた。


「省吾です。供物の集落からきました。皆さんより一つ年上ですが、気安く声を掛けて下さい。」


 省吾は一つ上だけあって、一番背が高く、落ち着いた雰囲気があった。


「鉄太です。金鉱の集落から来ました。学ぶ以上は皆に負けないよう頑張ります。」


 負けん気の強そうな顔だが、丁寧な口調は慣れていないのか、何処か辿々しい。


「安澄です。木造の集落から来ました。舞手になれるよう頑張ります。よろしくね。」


 人懐っこい笑顔でハキハキ喋る安澄は、如何にも元気が売りといった少女だ。


「全員の紹介が終わったな。では、これから1年間宜しく頼む。」


 藤十郎はそう言うと、全員を見渡し講義を始めた。


「最初は、この社と里について話をしよう。」



「まずは、『赤犬の社』と呼ばれているこの社の本来の名は、『赤城戌神座大社』(アカギノイヌカミイマスオオヤシロ)と言う。」


 藤十郎は板に大書した漢字を掲げて見せながら続ける。


「主祭神であられるのは赤戌主アカイヌヌシ様で、先見の御力を持つ神であるとされている。」


(アカイヌヌシ!?夢であった神様と同じ名だ。)

サクヤは一気に興味が湧いた。


「この国には、八百万の神がおられると言われているが、神力を司る主要な神は、このアカイヌヌシ様の他、数柱が各地の神域を持つ社に祀られている。」


(そう言えば、アカイヌヌシ様も日輪の神がどうとか言っていたよね。)


「各地の社とは、定期的に使節をやりとりしているが、一部他の神を認めぬ者達のもいる。

 それぞれの神が別々の神力を持つと言われているが、里の者が持つ御力も、その影響を受けるので、詳細まで説明せぬが、里ごとの特徴がある。」


(ほうほう、だから私の御力はこの里には持つ者がいないはずの力なのね。じゃあ、私の父様は誰で、何処の里の人なんだろう?)


「御神力とは、御力、神力の総称で、混同されがちだが、厳密には意味が違う。神様が持つ力を神力、本来人が持てぬはずの力で、それを授かったのが御力と区別される。

 御力は神域に住み、神を祈り奉り、山の物を食すことで身体に取り入れ、神に選ばれ加護を授かることで身に付ける事ができる。

 御力には色んな種類があり、物を触らずに動かす力、常より強い筋力を発揮する力、身を守る力等がある。その中でも最も尊いとされるのが、その神が最も得意とされる神力を授かることだ。

 アカイヌヌシ様の場合だと、『先見の御力』となる。」


(うん?ちょっと待って。センケンの御力って、鼻が良くなる力じゃなかったっけ?それが最も尊いの?鼻が利くって言ってたもんねぇ。)

 

 サクヤは頓珍漢な事を考えながら話の続きを聞く。


「御力の発現は、個人差があるので、どのような力があるかは、追々分かっていくだろう。

 この一年は、御力を動かすことに慣れ、『破魔の矢』に御力を込めることが出来るように鍛錬してもらう。」

「藤十郎様、『破魔の矢』って何ですか?」


 鉄太が質問する。


「それも今から説明するが、実際見て試してみる方がよかろう。

 あと、『様』付けはやめてくれ。其方らと同じ山の民なのだ。これまでの新人は『先生』と呼んでいたので、『先生』と呼んでくれればよい。」

 藤十郎がそう言うと、子供らは合わせたように、

「はい、先生。」

と、元気よく応える。

「ずっと座って話を聞くのも飽きてきただろう。

 今から破魔の矢を見に行ってみよう。」


今日もあと何話か上げる予定です

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