煎薬と栽培
第1部もあと少しです
お楽しみください
3人は岩陰で夜露を凌ぎ夜を明かした。
サクヤが目を覚ました時には山犬は姿を消していた。
簡易な朝餉を摂ると、下山を開始する。
コノハは、野草をつみながら、薬効をサクヤに説明している。その間、藤十郎は周囲に気を配る。休憩を挟みながら、夕餉時前には社に帰ってくることができた。
「3日間の休暇だったけど、充実した休みになったわ。」
「これを休暇と言える、貴方の若さが羨ましいわよ。」
コノハは疲れ果てていたし、藤十郎も流石に疲れたようであった。
「無事に帰れてよかった。サクヤは明日から研修再開だから、早く帰って休みなさい。」
「はい。藤十郎先生、護衛ありがとうございました。」
「無事帰ったようだな。」
別れの挨拶をしていたところに、宮司が現れた。
「宮司様。只今帰りました。お約束しておりました、『月読夜草の花』の花弁でございます。」
サクヤが差し出すと、宮司は笑顔で受け取った。
「いやいや、これはまた礼をせねばならぬな。疲れたであろうから、休暇を延長してもよいが?」
「いえ、しっかり楽しみましたので、明日からまた頑張れます。」
「そうか。若いうちは多くを吸収できる。この経験も何かの糧になろう。では、明日からも頼むぞ。」
「はい。ありがとう存じます。」
「はぁ、疲れた…。もう何もする気にならないわ。」
「摘んできた薬草の片付けや、夕餉の準備もあるし、休んでる場合じゃないよ。」
起き上がらないコノハをおいて、サクヤは株ごと持ち帰ったく薬草を、裏の畑に植えなおした。
家に入ると薬草の整理をして、夕餉の準備である。
精力的に動き回るサクヤを、横になったままコノハは見つめる。
「ええい、化け物か、うちの娘は!」
コノハはボヤきながら立ち上がると、着替えて夕餉の準備をサクヤから取り上げる。
「今から準備しても時間がかかるから、これで食べたい物を買っておいで。」
コノハはサクヤに銭を渡す。この里は配給のような制度だが、参拝者向けの露店で食べ物も売っている。給与は交換札の他、希望すれば銭も貰えたので、一部を銭にして、今回のように欲しい物を購入することもあった。
「蕎麦を2杯ください。」
「あいよ。珍しいねぇ、サクヤちゃんが買いに来るなんて。」
サクヤは蕎麦を受け取ると、のびないように急いで帰る。
「たまにはこういうのもいいでしょ。」
コノハは満足気に蕎麦を啜った。
湯浴みを終え、2人は家に帰ると、持ち帰った薬草を前に考えを巡らす。
「同じ分量でも、貴方と私で作り分けてみたいわね。貴方が『心を込める』と、効果が全く変わりそうだからね。」
「でも、明日から弓寮だから、煎薬する時間があるかなぁ。最優先は御力回復の薬なんだけどな。休暇、延長してもらえばよかったかもね。」
「ふふ。そうね。でも、まずは適切な分量から考えないといけないから、貴方の出番はもう少し先よ。」
「えぇ〜、それもやってみたかったなぁ。」
「サクヤにはまだ早いわね。明日もあるから早く寝なさい。」
翌朝、サクヤは弓寮へ行き、コノハは薬草を前に思案する。
(『月読夜草の花』かぁ。単純にこれだけでどの程度の回復力があるかよねぇ。それを確認するには、まず御力を使わなきゃならないけど、私の御力を使うのは色々問題があるのよねぇ。そういう意味では、無闇矢鱈に御力を使えるサクヤって便利ね。)
コノハは、月読夜草の花弁を細かく切ると、薬研で煎じた後に分量を変えて紙に包む。
少し自分でも試してみたくなり、御力を使った薬を作った。
(これは、厳重に保存しとかないと。)
概ね半分くらいに御力が減ったので、1番分量の少ない花弁を、白湯に入れて飲み干した。
(凄い。たったこれだけで完全に回復したわ。これなら全部同じ分量でいいかも。)
これ以上、御力を使った薬を作るのも保管に困るので、実験は1回で終わった。
「ただいま。」
居間に荷物を置いサクヤは、すぐに裏の畑に走る。昨日移植した薬草と、種を撒いた月読夜草に水をやる。
(良し、萎れてないね。)
移植した薬草を見て安堵しているサクヤに、コノハが声をかける。
「それは何の野草?見たことない葉の形ね。」
「こ、これはね、あの山犬が鼻先で指して教えてくれたから、よくわからないけど持って帰ってみたの。増えたら試してみようと思って。」
「はぁ、あの山犬は貴方に良く懐いてたみたいだけど、そんなことまであったのね。ただ、何か分からないものなら、いきなり自分や人で試しては駄目よ。」
「どうやって確かめるの?」
「まずは、ネズミやウサギで試す。それから大型の家畜に試して、毒性がなさそうなら自分の肌に塗ったり、少し舐めてみたりするの。でも、自分で試すのは、子供の貴方は止めておきなさい。私はある程度、毒にも耐性があるから、私が試すわ。」
「えっ…。大丈夫なの?」
(母様の筋力が増強しちゃうわ。ちょっと怖いかも。)
「そんな事より、月読夜草の花弁で試したい事があるから、サクヤは御力を倒れる寸前くらいまで使い切って欲しいの。できる?」
「鏃の材料になる物をいくらか貰ってるから、それに込めればできると思う。」
こうしてマッドサイエンティストな2人の夜は更けていった。
毎度のことながら、短くてすみません
第2部からは、1話がもう少し長くなります
評価、感想のほど、宜しくお願いします




