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浄弓の巫女サクヤ  作者: 一角獣
第1部 覚醒〜巫女への道〜
22/32

討伐休暇

おはようございます

短いですが、お楽しみください

 無事妖鹿の討伐を終えたサクヤ達は、社に帰還する。


「お疲れ様。明日から3日ほど休暇になるから、ゆっくりしてくるといい。」

「えっ?!休暇って、まだ研修1日目が終わったところですよ。いきなり3日も休暇だなんて。」

「討伐が成功したら、『討伐休暇』って言って、3日間の休暇が貰えるんだ。いきなり参加した全員が休む訳にはいかないから、原則として功績が大きかった者から順番に休むんだよ。だから、今回1番功績の大きかったサクヤから休むのさ。サクヤが休んでくれないと、皆が休めないぞ。」

「そういうことでしたら…。では、お疲れ様でした。」



「お、おう、サクヤ。久し振りだな。今日は妖魔を退治したってな。もうサクヤのやることに、一々驚かなくなったきたぞ。」


 山兵棟から社務所へ戻る途中、小平太とでくわした。

 小平太はどこかぎこちない態度だったが、最近色んなことがあり過ぎて、喧嘩をしていたことをスッカリ忘れていたサクヤは、ごく自然に返事を返す。

 

「うん、まだ完全には妖魔にはなってなかったんだけどね。でも、討伐休暇って言って、3日も休みになっちゃって。明日から何しようか悩んでるの。」

「そ、そうか。まあ、コノハさんの手伝いでもしてゆっくりすればいいんじゃないか?」

「う〜ん、前回もそれで飽きちゃったんだよね。もっと有意義に過ごさないと。」


(よかった、自然に話せた…。しかし、『妖』って言葉には気を付けてないとな。またぶり返しちゃ不味いし。)



「ただいまぁ。明日から3日も休みになっちゃった。」

「あら、何かやらかして謹慎でもくらったの?」

「失礼なこと言わないでよ。全然逆で、妖鹿の討伐に参加したら、討伐休暇ってのをもらったの。」

「妖鹿の討伐?!何で研修中の貴方がそんなことに参加するのよ!また無茶なことさせられてるんじゃないでしょうね?」

「いや、頭が別の討伐で出陣していて、残った者の中では私が1番の戦力だから仕方なくって感じで。特に危ないことはなかったから大丈夫よ。」

「そうなの?そういうことなら仕方ないけど…。ただ、休みだからってあんまりウロチョロしちゃダメよ。『赤犬山の妖狐』が出たって、騒ぎになっちゃうから。」

「ちょっと、本当にそんな二つ名が定着してるの?私は退治する側で、退治される側じゃないわ!」

「まぁ、妖じみたことばかりしてるから、仕方ないんじゃない?言い得て妙だと思うけど。」

「ぐっ…。」


 サクヤは、何か言い返そうとして、あの時演じた妖狐のモデルがコノハだったことが喉まで出かかったが、グッと堪えた。


(危ない、危ない。口は災いの元よね。)




「何、討伐休暇ぁ?」


 出張から帰還した弥九郎は、いの一番にサクヤの姿を探したが、勘助から討伐の報告を受けると共に、サクヤが討伐休暇に入ったことを知らされた。


「くっそー!サクヤが来れば何かしら事件が起きると思ってたのに、もう起きてしまった後だったか!そして、討伐休暇とは…。」



「母様ぁ、母様は御力が回復する薬や素材を知らない?」

「なによ、唐突に。

 う〜ん、御力が回復するねぇ。御力はこの山の幸を食べることで増えたり回復したりするって言われてるけど、貴方は御飯を食べて一晩寝れば回復してるじゃない。それじゃ駄目なの?」

「一晩じゃなくて、すぐに回復できないかなぁと思って。心当たりがあるの?」

「山の幸は、山頂に近い場所であればあるほど効果が高いとは言われているわ。

 でも、山頂付近はアカイヌヌシ様がおわす処だから、無闇に立ち入らない方がいいって言われているわ。どんな神罰を受けるかわからないもの。」

「そうかぁ。じゃあ難しいね。」


「私が許可するので、行ってみてはどうだ?」

「ぐ、宮司様!」


 コノハは驚愕する。


「挨拶が後になってすまぬな。面白そうな話が聞こえてきたので、つい口を挟んでしまった。」


(この方が宮司様、初めて見たかも。)


「このような狭苦しいところへ、どのような御用でしょうか?呼び付けて頂ければ此方から伺ったものを。」

「ははは、この里の家は社で手配しているものだ。狭苦しいのは此方の力不足だな。

それに、礼を言うのに呼び付けるのもどうかと思ってな。」

「れ、礼ですか?」

「うむ。サクヤの活躍は聞いておる。神楽で里を盛り上げ、昨日は妖退治でも主力として戦ったとか。何れも新人巫女としては破格の活躍だ。宮司として、礼ぐらい言わねばならぬだろう。」

「いえ、活躍どころか御迷惑をお掛けしているのではないかと案じております。」

「迷惑なら此方の方がかけておろう。先日は御力を使わせ過ぎて倒れさせたとか。その際の詫びも言わねばならぬな。」


 宮司とコノハの不毛なやりとりが一段落すると、話が本題に帰ってきた。


「で、山頂近くに行きたいとのことだが、何か目的があるのかな?」

「はい。御力を早く回復させるための素材を探しています。母様に聞いたら、山頂近くの山の幸なら効果が高いとの話でした。」

「ほう、御力の回復か…、なるほど。確かに山頂付近の素材なら効果は高いかもしれぬな。

 私も直接見たことはないのだが、ヌシ様のおわす辺りで咲く、『月読夜草の花』が御力を増やしたり、回復させたりする効能があると聞いておる。『月読夜草の花』は、満月の夜の前後3日間だけ咲く花で、根から摘むのではなく、花弁だけを持ち帰れば、次の満月でまた花を咲かすと、書物には書かれておった。

 ちょうどよいことに、明日からその3日間だ。行ってみてはどうかな?勿論、護衛も付けよう。」

「宜しいのでしょうか?行ってみとうはございますが…。」

「勿論だ。ただ、私も見てみたいゆえ、持ち帰った花弁の一枚はこちらで頂いても良いかな?」

「はい、喜んで差し上げます。」

「そうか、助かる。では、護衛に藤十郎を付けよう。あれも元山兵の頭だ。いくらか役に立とう。それでよろしいかな?コノハ殿。」

「もったいないことです。ただ、私も行ってみとうござきます。お許し願えますか?」

「なんと、コノハ殿が?」

「私も薬師の端くれ。貴重な薬の素材と聞けば、自らの手で採ってみたいですもの。それに、この様な機会でもなければ、畏れ多くてヌシ様の近くになど行けませぬから。」

「ははは、肝の据わった母娘だ。

 判った。藤十郎に伝えておこう。出立は明日の朝。社務所で集合としよう。」


 話が決まると、宮司は機嫌良く帰っていった。




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