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緊急頭会議

お楽しみください

 神楽部一行は御神域に入り、ようやく一息ついた。


「此処までくれば、もう大丈夫だろう。あとは妖やモノノケにだけ注意を怠らぬように。」


 弥九郎は山兵達に声をかける。



「弥助、ちょっとよいか?」


 竜造と静、弥助の3人は、列から少し離れて話し始める。




「ご苦労だったな。今の話は他言無用で頼む。明日は休みをやるから、ゆっくりしろ。」

「わかりました。ありがとうございます。」


 弥助は礼を言うと、列に戻った。


「頭を集めねばならんなぁ。」


 竜造はごちた。



「まさか、あんな騒ぎになるとはな。」

「神楽を奉納して、観客が感動で興奮し、暴動になりかけるなぞ、前代未聞だ。俺は酷く疲れた。」


 弥九郎は大きな溜息をつく。


「肝心の騒動を起こした張本人は、お土産くらい買いたかったと愚痴ってたがな。」

「俺は舞台の下にいたからよくわからなかったんだが、何であんなことになったんだ?」


「そもそもは、神役だった吾平が足を捻ったので、竜造さんがサクヤさんを代役に指名したのが事の発端です。」


 そこにいた全員が、竜造を睨んだため、竜造はたじろぐ。


「舞台に上がった時は、急に代役を立てたため幕間が伸びてしまい、観客が少し荒れていました。一緒に神を務めた弥助は、サクヤさんに対し汚い野次が飛んだので、元気づけるために声を掛けたそうです、観客を『浄化』してやれ、と。」

「『浄化』?」

「はい。弥助が言うには、サクヤさんは里から出たことがなかったので、汚い野次に慣れてないだろうと。つまり、邪な心や『穢れ』に触れたことがないだろうと思い、『浄化』、つまりは『禊』を行えという意味で発破をかけたつもりだったようです。あくまで比喩なので、本当に『禊』ができるとは思ってなかったようですが。」

「『禊』…。まぁ、巫女だから、形だけならやれなくはないだろが。だが、そのまま神楽を続けただけで、『禊祓』をしたわけでもないんだよな。」

「そうですね。サクヤさんは、『浄化』しろって言われたので、心を込めて舞っただけと言っていました。」 

「『心を込めて』か。『御力を籠めて』の間違いじゃないのか?」

「ふふ、その点については、私も問いただしました。『魅了の御力』を使ったのではないか、と。でも、本人はそのようなつもりはなかったようですし、そもそも『魅了の御力』自体を知りませんでした。嘘をついてる風でも、隠し事をしている風でもありませんでしたよ。もっとも、『魅了の御力』を使ったところで、広域展開の護符を使っても、あれだけの観客を魅了するのは無理だと思いますよ。」

「確かにな…。」

「サクヤさんの舞は、確かに見るものを惹きつける力があります。技術的にはまだ荒さはあるのですが。

 この言葉を人に使うのは神様に不敬であると承知していますが、敢えて使うなら『神々しい』とさえ思ってしまうくらいです。」

「そうだな。だからこそ私は、サクヤを神楽で舞わせたいと思ったのだ。よもやあそこまでの事態になるとは、完全に想定外だったがな。」

「サクヤが想定通りになることなんか、殆どないけどな。これでわかったろう。サクヤを神楽部に入れるのは危険だ。弓寮で引き受ける!」

「今はその話をするときではない。

 私は兼ねてより疑問だったのだが、サクヤの御力は本当に弓の御力なのか?とてもそれだけの枠に収まるようには思えぬのだが。」


 藤十郎の問いに、一堂は沈黙する。


「御力には2通りあると言われている。

 親より代々『受け継いだ御力』と、『神より授かる御力』だ。しかし、私はこれ迄『神より授かる御力』を持ったものに会ったことがない。話としては知っていても、実在さえ怪しいと思っている。

 サクヤの母親であるコノハ殿は御力を明かしていないが、恐らく煎薬に関わる御力だろうと思うので、弓の御力を持っているとは考えにくい。サクヤの父ではないかと言われている小六は、その様な御力を持っていないどころか、力量が少なく宮守にすらなれなかった。そう考えると、サクヤは『神から授かる御力』を持っていると考えた方が自然だ。」

「藤十郎さん。そうは言いますが、その説だとサクヤさんは、一体何個の御力を授かったのでしょう?弓?魅了?禊祓?母親から煎薬の御力も受け継いでいれば、今の段階で複数の御力を授かっているのは確定的では?サクヤさんはまだ10歳ですよ。」


 藤十郎は絶句する。


「そこまで慌てて結論付けることもあるまい。どうせ本当のことなどわからぬのだ。」

「宮司!」


「藤十郎の言うことも、静の言う事も一理あるとは思う。

 サクヤという者の動向が耳に入るようになった前後から、ヌシ様の動きが活発なのだ。それまでは一処から動かれることはそうなかったのだが。

 私は、サクヤの御力に、ヌシ様と何らかの関わりがあるのではないかと思っている。本人に聞いたところで話すとは思えんが。」

「ヌシ様が動かれている…。危険な予兆では、ないのですか?」

「そこは心配せずとも良いだろう。自ら赴いて妖魔を退治なさりもするのでな。今回の動向も、その程度のことかもしれぬし。」

 

 宮司の言葉に、頭達は黙って頷く。


「そんなよく分からぬことよりも、明日から確実に起こる問題を考えよ。

 それだけの騒動を起こしたのだ。サクヤ目当ての参拝者が殺到するかもしれぬ。準備はできているのか?」


 頭達は目を覚まされたかのように騒然とした。


「確かに。参道の警護を増やさないと、妖やモノノケの餌食になる者も出かねませんな。妖魔にでもなられたら大変だ。」

「神楽殿の席を増やさねばならぬか?」

「護符や御守、籤も多く用意せねばなりませんね。商いの好機を逃す手はありませんもの。」


「各々、万全を期すように。」

「はい!」


(サクヤとやらは毒にも薬にもなりうる。使い方を誤らぬようにせねばな。下手を打てばヌシ様の逆鱗に触れる事にもなりかねん。一度、会ってみねばならぬか…。)

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