神楽部巫女寮
ちょっと短いですがお楽しみください
翌日から社通いを再会したサクヤは、次の研修が始まるまで、神事の手伝いをしたり、書物庫の片付けをする傍ら、そこで書物を読んだりしてすごした。
里の子どもたちは、幼い頃から手習いをしているので、ある程度読み書きが出来る。
(『御力ノ広域展開心得』か。難しそうだけど、何かの役に立つかな?)
手に取った本は、サクヤの理解が及ばなかったが、護符を用いることで、御力の効果を広い範囲に拡大できるということが書かれていることだけは分かった。
護符の作り方などは、完全にサクヤの手に余った。
ここで読んだ書物は多岐に及んだが、サクヤが特にハマったのが『兵法書』であった。分からないところは、藤十郎に教えて貰いながら読み解いていった。
この書物庫での時間が、後々生きてくることになる。
そうして過ごすうちに、次の研修期間になった。
「ようこそ、巫女寮へ。破魔寮では大変だったらしいわね、サクヤさん。」
そう言って静は笑顔でサクヤを迎えた。
しかし、その横には何故か、神楽寮の竜造もいる。ここは巫女寮なので、本来いるはずのない人だ。
「あのお、何で神楽寮の頭がここにおられるのでしょうか?」
「あら、サクヤさんもそう思います?私も不思議なのです。」
「何も不思議なことはない。君には神楽を舞ってもらおうと思っている。巫女寮は神楽部の一部門なのだから、巫女寮にいる間は、神楽の稽古に励めばよい。」
「竜造さん、巫女寮の仕事は、巫女舞だけではないのですけど。」
「細かいことを気にするな。どうせ神楽奉納のときは行動を共にするのだ。どちらも一緒に学べば良い。」
竜造の強引さに押し切られる形で、サクヤは巫女寮にいながら、神楽の稽古と、巫女寮の仕事を教わることになった。
巫女の仕事は多岐に渡る。
社の案内、護符の販売、神事の補助、巫女舞とその稽古、etc…。
雑用と呼ばれるものの多くは、巫女達が請け負っていた。
サクヤは、神事の補助は研修前にやっていたので、特に苦労なく憶えた。その他の仕事も卒なく熟し、神楽の稽古が始まった。
「やっぱり神なんですね。」
「なんだ、妖や鬼がやりたかったのか?」
「いえ、姫あたりかと思っていました。」
「それも良いかもしれんな。稽古に加えておこう。」
(あ、余計な事言ったかも。ていうか、それもよいかもって、神ありきだったの?)
腑に落ちないまま、流されるまま、神楽の稽古は始まった。
「ふむ、基本はほぼできている。細かい所作はまだまだだが、それを凌駕するだけの華があるな。」
「う〜ん、残念ですけど、巫女舞より神の方がサクヤさんには合ってるのでしょうね。舞い始めると、普段余り見せない凛とした空気が醸し出されるみたいですね。」
サクヤは、神と妖との戦いを表現した剣舞でも、凛々しく舞う。円を描きながらクルクル回り、時に切結ぶ戦いのシーンは、サクヤ自身好きな舞だった。
「これなら十分舞台に立てるな。早いとこ配属を決めて欲しいものだな。」
「弥九郎さんが黙ってないでしょうね。」
「なに、山兵に巫女が配属された例はないのだ。勝ったようなものだろう。」
「巫女が神楽寮に配属された例もありませんけど。」
「はは、巫女寮に配属させておけば良いのだ。実態として神楽を舞っていても、建前が整っているうちの方が有利だ。」
(目的の為には手段を選ばないとは、こういう事をいうのですね。まぁ、私としては悪くない話ですけど。)
静は呆れた顔をしていたが、内心ではほくそ笑んでいた。
「明日は宿場町の社で神楽を奉納する。準備を怠らぬように。」
皆わかりきった顔だったが、サクヤは他人事のように聞いていた。実際、行くとは思ってないので、他人事である。
「サクヤさんも、補助として一緒に行きますからね。」
寝耳に水のサクヤは目を丸くする。サクヤは御神域から出たことすらないのだ。
好奇心と一抹の不安を抱えて、サクヤは当日を迎えた。
今日も出来れば3話あげたいと思います
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