争奪戦の外野
少し短いですが、お楽しみください
社の各部の見学は、今日で一通り回ることになる。
残すは「社務部」。社務所にあるので、移動はほぼ無い。
「社務は、出納寮、人事寮等があるが、言うなれば社運営の肝であると言える。ただし、他の部である程度経験を積んだものが入る部署で、また、社務は専属が余りいない。例えば巫女寮と出納寮を兼務するとかだな。」
つまり、ここに直接配属される新人はいないに等しい。
「あと、神事寮の者はほぼ、こことの兼務になる。各集落の長や、取次もここから派遣されている。」
よって、見学しても難しいことばかりなので、新人が見てもチンプンカンプンであった。
それを察した藤十郎も、早々に引き上げることにした。
社務頭の藤五郎は、サクヤを一瞥すると不敵に笑い、書類に目を戻した。
(あれが噂のサクヤとかいう娘か。争奪戦はうちには関係ないが。さてさて、何処が勝ち取るのかな?)
社務所の新人部屋に戻った一行は、席に座って藤十郎の説明に耳を傾ける。
「今日で一通り見て回ったわけだが、明日からは一人づつ別れて、各部で一月づつの実地研修となる。全ての部を見たわけだが、全てのお役目を見たわけではない。見学できなかった寮も回るのでそのつもりでいるように。
また、全て回り終わったら、希望するお役目を聞くが、希望通りになるとは限らぬ。全ての寮が新人を必要としているわけでもないしな。一応、第3希望まで聞くので考えておくように。」
(さてさて、サクヤの争奪戦は何処が制するかな。私なら面倒事を引き受けるようなものなので、遠慮したいがな。)
午後からは回る順番を決めたり、基礎教育の理解度確認、社殿の掃除、祭礼の練習をしたりして過ごした。
「では、明日から順番を決めた各寮へ、直接赴くように。良い修練期間となることを祈る。」
「なぁ、サクヤ。希望するお役目はあっか?」
各々帰宅する道すがら、竹蔵がサクヤに尋ねる。小平太とサクヤは喧嘩中なので、まともに口を利かない。
「う〜ん、特にないんだよねぇ。楽と巫女舞は無理そうだしね。山兵に誘われてるけど、巫女がなれるものでもないし、なりたい訳でもないし。私に向いてるお役目って何なんだろね?」
((いや、弓だろ。))
2人はそう思ったが、神を舞った姿を思い出し、それも悪くないと思った。
ただし、どちらも巫女がなるものでもないので、何と言っていいやら返答に困った。
「ただいまぁ。」
「おかえりなさい。今日は何もやらかさなかった?」
ここ最近は、毎日同じ質問だった。
「そんなに毎日問題起こさないよ。私だって学んでるんだから。」
誰からも指摘されないだけで、問題を起こしている事にすら気付いてない恐れもあるので、コノハは全く信用していなかった。
「で、やりたいお役目はあったの?」
「さっき、竹蔵にも同じ事を聞かれたけど、神楽の楽は伊都ちゃんが選ばれるだろうから、他のお役目となると特にないの。私に向いてるお役目が何かわからないし。」
(いや、弓でしょ。)
「私と同じだけど、造作部に薬を作ったり、町に販売しに行く寮もあるわ。ただ、貴方の作る薬は気を付けないと、とんでもないものを作るからねぇ。
そう考えると行かない方がいいのかも…。また問題を起こしかねないわ。」
結局、何が向いているか誰も教えてくれなかったが、なるようにしかならないと開き直り、サクヤは眠りについた。
一方、藤五郎は悩んでいた。
(金が厳しいな…。)
「頭、今月も少々赤字のようです。」
「だろうな。年々参拝者も減っている。奉納神楽の依頼も減り、鉱物の産出状況も芳しくない。何か良い、収入源がないものかな。」
「先程のサクヤと言う巫女。神楽寮で巫女ながら神を舞い、他の者達を惹きつけたとか。」
「ほう、巫女が神楽をか。新しい呼び物になるやもしれんな。」
「あと、黒曜石の鏃に御力を籠める事ができるできたそうです。」
「なに!それ程の力量が…。宮司以外出来ぬことゆえ、鬼狩りに売ることもできなかったが。そうか、それは良い。赤字の解消に役立つかもしれぬ。」
藤五郎は微かな希望を見たが、その希望が大変な事態を呼ぶことを、この段階では知る由もなかった。
取り敢えず、書き留めている第一部が完成しました。
第2部にも手を付け始めてます。
明日以降も順次上げていきますので、
評価、感想の程、宜しくお願いします。




